内容紹介
本書では、ノートルダム大聖堂、エッフェル塔、オペラ座、ヴェルサイユ宮殿など、よく知られている16個のモニュマンを、その地理的環境と歴史的背景を踏まえて、画像の助けも借りて紹介しつつ、それが具現しているフランス文化のあり方を明らかにすることを目指す。それにまつわるエピソードや社会背景などを解説することにより、フランス文化へと導くという方法をとって、フランスの空気を描き出す。
目次
第1章 ノートルダム・ド・パリ――聖母信仰と中世幻想
シテ島と大聖堂/神殿から教会へ――そして聖人から聖母信仰へ/聖母信仰とゴシック建築/民衆の集う場/泥棒詩人の聖母への祈り/大聖堂に登る巨人ガルガンチュア/貴族たちの冠婚葬祭の場/《ナポレオン一世の聖別》/ユゴー『ノートル・ダム・ド・パリ』/大聖堂の傷跡と復興の訴え/中世ゴシック風建築の再創造
第2章 パリの橋――右岸と左岸を結ぶ風景
水運都市パリの繁栄/橋の上での市民の暮らし/右岸と左岸の「越境」/死を誘うセーヌの橋/橋から眺める都市風景/流れる時、うつろう記憶
第3章 ルーヴル美術館――人類のヘテロトピア
美術館というヘテロトピア/中世の要塞からルネサンスの王宮へ/サロンとアカデミー・フランセーズ/フランス革命と美術館の誕生/美術館という独立した生物/国家の宝物庫として/人類の美術館にむかって
第4章 カルチエ・ラタン――左岸が生み出す知の空間
カルチエ・ラタンからソルボンヌへ/カフェという知の空間/サルトルと実存主義/神話化するカフェ・ド・ロール/知の空間のダイナミズム
第5章 ヴェルサイユ宮殿――権力の劇場
宮殿の沿革1――ルイ十三世〜ルイ十四世/建築、造園、室内装飾/宮殿の沿革2――ルイ十五世〜ルイ十六世/宮廷スペクタクル/権力の劇場/アイコンとしてのマリー・アントワネット/新たな試み
第6章 バスティーユ――革命の爆ぜる地
バスティーユ襲撃/規範からの解放/啓蒙思想と自然/革命期に生まれた文化/共和国の象徴
第7章 凱旋門――皇帝の栄光とともに
皇帝の誕生/ナポレオンによるパリ改造/凱旋門/パリの歴史軸/ナポレオン神話
第8章 オペラ座――絢爛の祝祭空間
黎明期のオペラ座と権力の結びつき/グランド・オペラとパリ・オペラ座の黄金期/「唯一無二」の様式、パレ・ガルニエの完成/バレエ・リュスの絢爛/新たな時代の見方を探るパリ・オペラ座
第9章 サン・ラザール駅――〈鉄道の時代〉の文化
〈鉄道の時代〉のはじまり/駅の詩情(ポエジー)/パリから港へ/郊外へ/浜辺の欲望/〈鉄道の時代〉後のサン・ラザール駅
第10章 シャンゼリゼ通り――モード、シック、エレガンス
コンコルド広場から凱旋門までの景観創造/ベル・エポックのシャンゼリゼ公園/オートクチュールからデパートへ/パリの馬車文化/グラン・モンドとドゥミ・モンド/眠らない歓楽のシャンゼリゼ
第11章 オルセー美術館――近代を描く新たなまなざし
駅舎から美術館へ/光と色彩がたわむれる印象派の一大コレクション/首都のパノラマを切り取るまなざし
第12章 モンマルトル――歓楽街に息づいた芸術家たち
サクレ・クール寺院とモンマルトルの歴史/シャ・ノワールからムーラン・ルージュへ/ロートレックとポスター芸術/ヴァラドンとユトリロ/洗濯船とピカソ/観光地モンマルトル
第13章 エッフェル塔――「無用の鉄塔」からパリの象徴へ
未曾有の鉄塔/鉄の時代/万国博覧会/塔をめぐる論争/「無用」から「有用」へ
第14章 メトロ――地下に広がるモニュマン
メトロの歴史/メトロのデザイン/『地下鉄のザジ』とストライキ/モニュマンとしてのメトロ/映画のなかのメトロ/メトロ構内の人々/パリの交通
第15章 モスク――異文化へのまなざし
他者の発見/オリエンタリズムと「文明化」の使命/アルジェリアの植民地化/二つの大戦とマグレブ系移民/現代フランスとイスラム
第16章 ケ・ブランリー美術館/博物館――モダン・アートと「異文化」展示のゆくえ
非西洋圏文化の展示施設/吾輩は美術館/博物館である、名前はまだない?/美しき器物たち/《アヴィニョンの娘たち》との出会い/〈文化〉は誰のもの?
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