抽象代数学史概講

抽象代数学史概講(電子書籍)

代数方程式から近代代数学へ
原書名 A History of Abstract Algebra: From Algebraic Equations to Modern Algebra
著者名 三宅 克哉
発行元 丸善出版
発行年月日 2023年01月
NDCコード 411
ジャンル 数学・統計学 >  数学読み物 >  数学史
数学・統計学 >  代数学

内容紹介

本書は講義録であって19世紀における代数学の「完全なる歴史」を書き上げようとするものではない.構造的な代数学が旧態の代数学から最終的に巣立つに至るまでに誕生した多様なアイデアが見せる葛藤を追い,学生たちが数学史に習熟することを意図した.

古典的な代数学から現代代数学に至る多様な旅路に見られる何人もの数学者たちがそれぞれに問題をどう定式化して取り組んでいったかを解きほぐし,いわば数学における大いなる出世物語,すなわちGaloisの理論や代数的数論等が立ち上げられ,展開された紆余曲折の経過を眺める.

数学史の研究が追求するところは,時に応じ取り上げられた研究課題が種々のアイデアにより多彩に展開される景観を一望する位置に立って,数学の諸相を満喫することにある.

読者は本書を通して数学的諸結果のありようを確実に把握し,それらが数学の発展にどのような影響をもたらしたかを学び取られたい.

目次

訳者まえがき
まえがき
第1章 単純2次形式
1.1 前置き/1.2 平方数の和/1.3 Pell方程式/1.4 演習問題
第2章 Fermatの最終定理
2.1 前置き/2.2 Fermatによるn=4の場合の定理の証明/2.3 Eulerとx^3+y^3=z^3/2.4 演習問題
第3章 2次形式に関するLagrangeの理論
3.1 前置き/3.2 2次形式についての一般論の始まり/3.3 平方剰余の相互法則/3.4 演習問題/3.5 棚卸し
第4章 Gaussの『数論研究』
4.1 前置き/4.2 『数論研究』とその重要性/4.3 合同関係のもとでの算術/4.4 次数2の合同関係に対するGauss/4.5 2次形式に関するGaussの理論/4.6 演習問題
第5章 円周等分論
5.1 前置き/5.2 素数p=7の場合/5.3 素数p=19の場合/5.4 演習問題
第6章 平方剰余の相互法則のGaussによる二つの証明
6.1 前置き/6.2 形式の合成と平方剰余の相互法則/6.3 Gaussの第六証明についてのSmithの論評/6.4 演習問題
第7章 2次形式についてのDirichletの『数論講義』
7.1 前置き/7.2 平方剰余の相互法則のGaussによる第三証明/7.3 2次形式に関するDirichletの理論/7.4 棚卸し
第8章 5次方程式は可解ではないのか?
8.1 前置き/8.2 低次の方程式の解法/8.3 1770年におけるLagrange/8.4 演習問題/8.5 冪乗根による方程式の解法についての復習
第9章 5次方程式の非可解性
9.1 前置き/9.2 Ruffniの寄与/9.3 Abelの仕事/9.4 二つの古典的な問題におけるWantzel/9.5 3次の既約な場合においてのWantzel/9.6 演習問題
第10章 Galoisの理論
10.1 前置き/10.2 Galoisの第一Memoir/10.3 Galoisのシュヴァリエへの手紙から/10.4 演習問題/10.5 正規部分群のCayley表/10.6 Galois:当時,そしてその後
第11章 Galois以後
11.1 前置き/11.2 Galoisの仕事の出版/11.3 Serretの『高等代数学講義』/11.4 ドイツにおけるGaloisの理論:KroneckerとDedekind
第12章 復習と最初の課題
第13章 Jordanの『概論』
13.1 前置き/13.2 初期の群論:導入部/13.3 『概論』/13.4 JordanのGalois理論/13.5 3次と4次の方程式
第14章 Hermite, JordanおよびKleinのGalois理論
14.1 前置き/14.2 5次方程式をどのように解くか/14.3 Jordanが採った選択肢/14.4 Klein/14.5 1870年代におけるKlein/14.6 Kleinの正二十面体/14.7 演習問題
第15章 「ガロア理論」とは何か?
15.1 前置き/15.2 Kleinの影響/15.3 最終的な注意事項
第16章 代数的数論:円分論
16.1 前置き/16.2 Kummerの円分整数/16.3 パリにおけるFermatの最終定理
第17章 Dedekindのイデアルに関する最初の理論
17.1 前置き/17.2 可除性と素であること/17.3 環,イデアル,および,代数的整数/17.4 1871年におけるDedekindの理論
第18章 Dedekindの熟成後のイデアル理論
18.1 前置き/18.2 乗法理論/18.3 Dedekindと「現代数学」/18.4 演習問題
第19章 2次形式とイデアル
19.1 前置き/19.2 Dedekindの第11補遺(1871-1894)/19.3 同値なイデアルの一例
第20章 Kroneckerの代数的数論
20.1 前置き/20.2 Kroneckerの数学観/20.3 Kroneckerの講義/20.4 Gyula (Julius) Konig
第21章 復習と第二の課題
第22章 19世紀末における代数学
22.1 前置き/22.2 Heinrich Weberと彼の『代数学教程』/22.3 Galois理論/22.4 数論
第23章 抽象的な体の概念
23.1 前置き/23.2 Moore, Dickson, そしてガロア体/23.3 Dedekindの1894年の第11補遺/23.4 KurschakとHadamard/23.5 Steinitz
第24章 イデアル論と代数曲線
24.1 前置き/24.2 Brill-Noether定理/24.3 Brill-Noether定理の一般化についての不首尾/24.4 準素イデアルに関するLaskerの理論/24.5 Macaulayの例/24.6 素イデアルと準素イデアル
第25章 不変式論と多項式環
25.1 前置き/25.2 Hilbert/25.3 不変式と共変式/25.4 Hilbertの不変式論についての論文(1890)から/25.5 Hilbertの基底定理と零点定理
第26章 Hilbertの『数論報文』
26.1 前置き/26.2 『数論報文』のあらまし/26.3 イデアル類と2次数体/26.4 『数論報文』の影響を垣間見る
第27章 現代代数学の勃興:群論
27.1 前置き/27.2 群論が代数学の独立した一分野として出現する/27.3 Dicksonによる有限単純群の分類
第28章 Emmy Noether
28.1 前置き/28.2 環領域におけるイデアル論/28.3 構造的な思考法
第29章 Weberからvan der Waerdenへ
29.1 前置き/29.2 van der Waerden:『現代代数学』の原点
第30章 復習と最後の課題
付録A 18世紀における多項方程式
A.1 前置き/A.2 Gauss以前における代数学の基本定理
付録B Gaussと形式の合成
B.1 合成理論/B.2 Gaussの流儀による形式の合成/B.3 形式の合成についてのDirichlet/B.4 Kummerによる観察
付録C 平方剰余の相互法則のGaussによる第四と第六証明
C.1 Gaussの第四証明/C.2 Gaussの第六証明/C.3 注釈
付録D Jordanの『概論』から
D.1 『概論』の序文/D.2 無理数についての一般論/D.3 5次方程式は冪乗根では解けない/D.4 Nettoの論評
付録E Kleinのエルランゲン・プログラム,群と幾何学
E.1 前書き/E.2 Felix Klein/E.3 幾何学的な群:正二十面体群/E.4 正二十面体方程式
付録F Dedekindの第11補遺から
付録G 対称群S_4およびS_5の部分群
G.1 S_4の部分群/G.2 S_5の部分群
付録H 曲線と射影空間
H.1 交わりと重複度
付録I 終結式
I.1 Nettoの定理/I.2 終結式
付録J さらなる読み物
J.1 ガロア理論の歴史に関する他の考察/J.2 代数的数論の歴史に関するその他の書物
参考文献
人名索引
事項索引

関連商品