マレー数理生物学 応用編

マレー数理生物学 応用編

パターン形成の数理とバイオメディカルへの応用
原書名 Mathematical Biology II: Spatial Models and Biomedical Applications
著者名 三村 昌泰 総監修
発行元 丸善出版
発行年月日 2016年12月
判型 B5 257×182
ページ数 658ページ
ISBN 978-4-621-30062-6
Cコード 3045
NDCコード 460
ジャンル 生物・生命科学 >  生物一般

内容紹介

世界で数理生物学のスタンダードなテキストとして使われる邦訳版の第2弾。数理生物学の基本的モデルである個体群生物学や生理学だけにとどまらず、数理生物学全般を解説する。第1弾『マレー数理生物学入門』では、おもに「数学」に重点を置き解説されていたが、本書ではさらに幅広い分野・現象に対して応用し、とくに発生学、進化学、医学といった生物学の重要な問題について取り上げる。問題がより具体的になったことで、原著者の独創的な研究がさらに際立っているのが特徴で、また古典的な数理モデルから最新のトピックスまでをわかりやすく丁寧に解説しており、生物学や医学を志す学生にとって有用な一冊である。

目次

第1章 複数種の波動とその実用
 1.1 直観によるアプローチ
 1.2 捕食者―被食者系における追跡逃避波
 1.3 イギリスのハイイロリスに関する空間的拡散の競争モデル
 1.4 遺伝子組換え生物の広がり
 1.5 BZ反応のフロント進行波
 1.6 興奮性媒体における波
 1.7 振動の動力学を有する反応拡散系における進行波列
 1.8 螺旋波
 1.9 λ-ω反応拡散系の螺旋波解
第2章 反応拡散系による空間パターン形成
 2.1 生物学におけるパターンの役割
 2.2 反応拡散メカニズム(チューリングメカニズム)
 2.3 拡散誘導不安定性が生じる一般的な条件:線形安定性解析,空間パターンの発展
 2.4 反応拡散メカニズムによるパターン形成の初期段階の詳細な解析
 2.5 分散関係,チューリング領域,スケール,領域の形状がパターン形成に及ぼす効果
 2.6 モード選択と分散関係
 2.7 1種モデルによるパターン形成:トウヒノシントメハマキのモデルにおける空間的非一様性
 2.8 対流を伴う単一個体群相互作用拡散系による空間パターン:生態制御戦略
 2.9 反応拡散系において空間パターンが形成されない条件
第3章 動物の体表パターンをはじめとする反応拡散メカニズムの応用例
 3.1 哺乳類の体表パターン――「ヒョウの斑点はどうしてできたか」
 3.2 奇形学:体表パターン異常の例
 3.3 チョウの翅にみられるパターン形成
 3.4 アセタブラリア属における輪生パターンのモデリング
第4章 大きさの変化する領域でのパターン形成:アリゲイターとヘビ
 4.1 ワニの縞パターン形成:実験
 4.2 モデリングのコンセプト:縞模様形成の時期の決定
 4.3 アリゲイターの縞とシャドウストライプ
 4.4 アリゲイターの歯牙原基の空間パターン形成:背景と関連事項
 4.5 歯牙誘導の生物学
 4.6 歯牙原基形成のモデリング:背景
 4.7 ワニの歯牙パターン形成のモデルメカニズム
 4.8 結果および実験データとの比較
 4.9 数値予測による実験
 4.10 アリゲイターの歯牙の空間パターン形成の結語
 4.11 ヘビの色素パターン形成
 4.12 細胞走化性モデルメカニズム
 4.13 ヘビの単純または複雑なパターン要素
 4.14 細胞走化性系によるパターン形成の伝播
第5章 バクテリアのパターン形成と走化性
 5.1 背景と実験結果
 5.2 大腸菌の半固体培地実験におけるモデルメカニズム
 5.3 液体培地モデル:パターン形成の直観的解析
 5.4 解析結果と数値解の解釈
 5.5 ネズミチフス菌の半固体培地実験におけるモデルメカニズム
 5.6 基本的な半固体培地モデルの線形解析
 5.7 非線形解析に関する簡潔な概要とその結果
 5.8 シミュレーションの結果,パラメータ空間,基本的なパターン
 5.9 実験に沿った初期条件に対する数値解析の結果
 5.10 半固体培地モデルメカニズムによるスウォームリングパターン
 5.11 枯草菌における分岐パターン
第6章 パターン・形態を生み出す力学的理論
 6.1 導入と問題意識,生物学的背景
 6.2 間葉細胞の形態形成に対する力学モデル
 6.3 線形解析,分散関係,パターン形成の可能性
 6.4 簡単な力学的モデル:複雑な分散関係をもつ空間パターンの形成
 6.5 羽原基の周期的パターン
 6.6 肢発生における軟骨凝縮と形態形成則
 6.7 指紋のパターン形成
 6.8 表皮細胞のメカノケミカルモデル
 6.9 微絨毛の形成
 6.10 複雑なパターン形成と組織間相互作用モデル
第7章 進化,形態発生の規則,発生拘束と奇形
 7.1 進化と形態発生
 7.2 脊椎動物の肢の軟骨形成における進化と形態形成の規則
 7.3 奇形
 7.4 発生拘束,形態形成則と進化の行く末
第8章 血管網形成の力学論
 8.1 生物学的背景と動機
 8.2 脈管形成における細胞―基質間相互作用
 8.3 パラメータの値
 8.4 モデル方程式の解析
 8.5 網状パターン:数値シミュレーションと結論
第9章 表皮の創傷治癒
 9.1 創傷治癒の小史
 9.2 生物学的背景:表皮の創
 9.3 表皮の創傷治癒モデル
 9.4 モデルの無次元形,線形安定性,パラメータ値
 9.5 表皮の創傷治癒モデルの数値解
 9.4 表皮モデルの進行波解
 9.7 表皮創傷治癒モデルの臨床的示唆
 9.8 胎児の表皮の修復メカニズム
 9.9 胎児の創におけるアクチンの整列:力学的モデル
 9.10 2次元における,アクチン線維の応力による整列の力学的モデル
第10章 真皮の創傷治癒
 10.1 背景と動機―― 一般論と生物学
 10.2 創傷治癒の仕組みと最初のモデル
 10.3 その後の発展の概説
 10.4 線維芽細胞駆動性創傷治癒モデル:残留歪みと組織再構築
 10.5 モデル方程式の解と,実験との比較
 10.6 Cook(1995)の創傷治癒モデル
 10.7 基質の生成と分解
 10.8 向きづけられた環境中における細胞運動
 10.9 組織構造をもつ真皮創傷治癒のモデル
 10.10 病的瘢痕の構造についての1次元モデル
 10.11 創傷治癒についての未解決問題
 10.12 結語:創傷治癒について
第11章 脳腫瘍の増殖と制御
 11.1 医学的背景
 11.2 神経膠腫の増殖と浸潤の基本的な数理モデル
 11.3 In vitroでの腫瘍の拡散:パラメータ推定
 11.4 ラットの脳における腫瘍の浸潤
 11.5 ヒトの脳における腫瘍の浸潤
 11.6 治療のシナリオのモデリング:総評
 11.7 均一な組織における腫瘍切除のモデリング
 11.8 切除後の腫瘍の再発に対する解析的解法
 11.9 脳組織が不均一である場合の外科的切除のモデリング
 11.10 化学療法が腫瘍増殖に及ぼす影響のモデリング
 11.11 腫瘍の多クローン性と細胞の変異のモデリング
第12章 パターン形成の神経モデル
 12.1 シンプルな活性化―抑制モデルによる,神経発火の空間パターン形成
 12.2 視覚野における縞形成のメカニズム
 12.3 幻視パターンを生み出す脳機構のモデル
 12.4 殻のパターンに関する神経活動モデル
 12.5 シャーマニズムと岩絵
第13章 地理的拡散と防疫
 13.1 流行の空間的拡散の単純モデル
 13.2 1347〜1350年のヨーロッパにおける黒死病の蔓延
 13.3 狂犬病の略歴
 13.4 狂犬病のキツネへの蔓延I:背景と単純モデル
 13.5 狂犬病のキツネへの蔓延II:3種(SIR)モデル
 13.6 未流行地帯への伝播に基づく制御戦略
 13.7 狂犬病バリアの幅についての解析的な近似
 13.8 2次元流行波とキツネの空間依存的な個体密度の影響
 13.9 狂犬病の空間的拡散におけるキツネの免疫の効果
第14章 オオカミの縄張り,オオカミとシカの相互作用と生存
 14.1 序論,オオカミの生態学
 14.2 オオカミの群れの縄張り形成のモデル:単一の群れの行動圏モデル
 14.3 複数の群れのオオカミの縄張りモデル
 14.4 オオカミとシカの捕食者―被食者モデル
 14.5 オオカミの縄張り形成とシカの生存に関するまとめ
 14.6 コヨーテの行動圏パターン
 14.7 チペワ族とスー族の部族間抗争(1750〜1850年頃)
付録A 有界領域におけるラプラシアン作用素に関する一般的結果

出版社からのメッセージ

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