霊長類学の百科事典

霊長類学の百科事典

著者名 日本霊長類学会
発行元 丸善出版
発行年月日 2023年07月
判型 A5 210×148
ページ数 752ページ
ISBN 978-4-621-30804-2
Cコード 3545
NDCコード 489
ジャンル 生物・生命科学 >  動物学・植物学

内容紹介

日本霊長類学会が総力をあげて編集した、霊長類を総合理解するために編まれた事典。霊長類学の歴史をたどった上で、霊長類の分類・系統・進化、形態、遺伝、脳や生理・医科学、心理・認知、行動、社会と生態などの側面から霊長類研究にアプローチし、ひいては野生霊長類の保全や飼育霊長類の福祉の向上にも活かせる話題豊富な内容。また、ヒトも霊長類の一種であるため、ヒトのもつ形質の起源とその進化の研究にも活用でき、人類学的関心の追求にも役立つ中項目事典。

目次

1章 霊長類学の歴史
霊長類学の歴史:研究史を扱う意義と本章の構成
霊長類学と自然人類学
霊長類学と生態人類学
ニホンザルと日本人:ニホンザルの民俗学
ニホンザル研究小史
アフリカ類人猿の調査史
アジア霊長類の野外研究史
中南米霊長類の野外研究史
マダガスカル霊長類の野外研究史
アフリカ霊長類の野外研究史
霊長類化石調査の研究史
京都大学霊長類研究所
日本モンキーセンター
医薬基盤・健康・栄養研究所霊長類医科学研究センター
ナショナルバイオリソースプロジェクト「ニホンザル」
霊長類の渡来と飼育の歴史
動物園における霊長類研究の歴史
日本霊長類学会
アメリカ霊長類学史
ヨーロッパにおける霊長類研究史
霊長類の脳研究の歴史

2章 霊長類の分類・系統・進化
霊長類の分類・系統・進化
霊長類の分類
霊長類の特徴
曲鼻猿とメガネザル
広鼻猿類
コロブス類(オナガザル科)
グエノン類(オナガザル科)
ヒヒ類(オナガザル科)
マカク属(オナガザル科)
ニホンザル(オナガザル科)
小型類人猿
大型類人猿
霊長類の起源
霊長類の進化した時代
曲鼻猿の起源と進化
真猿類の起源と進化
広鼻猿の起源と進化
狭鼻猿の起源と進化
コロブス類の起源と進化
グエノン類・ヒヒ類の起源と進化
マカクの起源と進化
ニホンザルの起源と進化
アフリカの類人猿の起源と進化
アジアの類人猿の起源と進化
最終共通祖先
人類の起源と進化
地球化学的手法
霊長類化石発掘調査の方法

3章 霊長類の形態
霊長類の形態・運動の概要
霊長類の頭蓋
霊長類の脳
霊長類の顔
霊長類の眼
霊長類の鼻
霊長類の耳
霊長類の口
霊長類の歯
霊長類の喉
霊長類の脊柱・胸郭
霊長類の腰・臀部
霊長類の肩
霊長類の前肢
霊長類の後肢
霊長類の手
霊長類の足
霊長類の消化器
霊長類の生殖器
霊長類の皮膚
霊長類の毛
霊長類の尾
霊長類の心臓
霊長類の性的二型
霊長類の成長・老化
霊長類の二足歩行
霊長類の四足歩行
霊長類の腕渡り
霊長類の跳躍
幾何学的形態測定学

4章 霊長類の遺伝
霊長類学における遺伝学分野の貢献
血縁推定
分類様式の性差と群れ・地域個体群の血縁構造
種内の遺伝的多型
集団動態・集団史研究
種間系統関係研究史・理論
種間系統関係推定上の注意点
反復配列:ゲノムの大部分を占める繰り返し配列
全ゲノム解析で明らかになること
遺伝子レベルでの適応進化の検出と機能進化の検証
染色体・クロマチン構造の多様性
性染色体の進化
ヘテロクロマチン・セントロメア構造
色覚オプシン遺伝子の霊長類に特徴的な多様性
嗅覚受容体と鋤鼻受容体
苦味受容体
甘味受容体
旨味受容体
消化酵素
アルコール代謝
ビタミンC合成酵素・尿酸酸化酵素
倹約遺伝子
体色関係
シアル酸関連遺伝子
免疫系の遺伝子
血液型(ABOとRh)
性格関連遺伝子
皮膚構造:ヒトと他の霊長類での形質比較
発声に関わる遺伝子
生殖器系に関わる遺伝子
霊長類のiPS細胞
エピゲノム制御による表現型多様性
遺伝子発現・トランスクリプトーム解析

5章 霊長類の脳, 生理と医科学
霊長類の脳, 生理と医科学の概要
非ヒト霊長類脳研究の方法論
大脳化, 新皮質拡大
脳コネクトーム
色覚の神経機構
奥行き知覚
運動視
眼球運動
質感認知
視覚的注意
頭頂葉と手の操作運動
道具使用の神経基盤
ミラーニューロン
社会脳
前頭前野
皮質脊髄路
脳研究のモデル動物としてのマーモセット
アルツハイマー病変:老人斑と神経原線維変化
パーキンソン病モデル
霊長類の免疫学
HTLV-1/HIV-1感染症の霊長類モデル
デングウイルス/C型肝炎ウイルスの新世界ザルモデル
マラリア疾患モデル
月経(初潮, 閉経)
各種ホルモン
霊長類の発生工学技術
マーモセットの生殖補助技術
遺伝子組換え霊長類の現状
子宮内膜症
糖尿病

6章 霊長類の心理・認知
霊長類の心理・認知研究の概要
色の知覚と認識
聴覚による知覚
注意の心理プロセス:アテンションの機構
物理的な因果関係の理解
物の操作の認知発達基盤
物体の永続性:物体は見えなくとも存在する
知覚的補完
数量認知
系列学習
ワーキングメモリー:行動の目標や計画を記憶する
概念形成
類人猿の言語研究
指示性:記号を橋渡しにして外部の世界にふれる
メタ認知:自身の回答に対する確信度を判断する能力
心的時間旅行と過去・現在・未来の認識
セルフコントロール:我慢のストラテジー
脅威の認知と反応
霊長類における芸術:描画と音楽
顔の知覚
母と子の愛着形成とその理論
自己を認識する心
他者の視点の理解
霊長類に心の理論はあるか?
社会的学習:他者の行動から何を学ぶのか?
三項関係の理解の系統発生
教育行動の萌芽と進化
あざむき行動にみる社会的認知
向社会行動の認知基盤
霊長類における知性の進化の諸相

7章 霊長類の行動
霊長類の行動とその研究史
野生下での道具使用
文化と行動多様性
利他性, 互恵性
親和的行動
攻撃, 敵対的行動
優劣関係, 順位
オスの性行動と繁殖戦略
メスの性行動と繁殖戦略
社会−性行動
協力行動とオス間の連合形成
集団間の交渉
子殺し
遊び
夜間行動
体温調節行動
出産と子育て
母親以外の個体とアカンボウとの関わり
オスによるケア, 協同育児
成長, 発達に伴う行動の変化
老化と行動
死体への反応
自己治療行動:予防と治療
障害個体の行動および他個体とのやりとり
表情, 身ぶり
音声コミュニケーション
嗅覚コミュニケーション
対捕食者行動
狩猟と肉食
食物分配

8章 霊長類の社会と生態
霊長類の社会と生態の概要と研究史
食性
食物選択
採食速度
歯形態と食性
消化器官と食性
消化器官微生物
活動パターン
時間的ニッチと休眠
遊動パターンと食性
捕食
泊まり場選択
繁殖パラメータ
生活史戦略
衛生行動・回避行動
霊長類の種間関係
非霊長類動物との競合関係, 共生関係
植物との関係
社会組織, 配偶システム, 社会的分散
マカク属の専制型と寛容型
社会生態学モデル
離合集散
重層社会

9章 霊長類の保全
霊長類の保全をめぐる課題:論点および研究史
ブッシュミート問題
ペットの取引:愛玩目的での霊長類の捕獲および取引の現状
資源開発
災害・気候変動
野生霊長類の健康管理
地域紛争と霊長類の保全
霊長類の餌付け
野生霊長類の都市化
人口減少社会における共存
種間交雑, 外来種問題
自然保護区の設定と管理
個体数管理:ニホンザルの個体数管理の考え方
ニホンザルによる農作物被害と被害管理
コミュニティ・コンサーベーション
キャパシティ・ビルディング
エコツーリズム
保全をめぐる法整備
域外保全
野生復帰:再導入
国際自然保護NGO, NPO
日本における霊長類の保全をめぐる動向
アジアにおける霊長類の保全をめぐる動向
アフリカにおける霊長類の保全をめぐる動向
新大陸における霊長類の保全をめぐる動向

10章 霊長類の福祉
霊長類の動物福祉学の歴史と概念
実験動物としての霊長類
野生動物・動物園動物としての霊長類
実験動物施設における飼育環境と環境エンリッチメント
動物園での飼育環境と環境エンリッチメント
霊長類の栄養と採食エンリッチメント
訓練(トレーニング)
複数頭飼育:主にチンパンジーについて
人工哺育・人工保育
動物福祉の行動学的評価
表情を指標とした動物福祉の評価
ストレスの生理学的指標
健康管理, 獣医学的管理
痛み
麻酔
霊長類の心疾患
チンパンジーの歯科疾患
急性鼓脹症
マーモセットの疾患
人獣共通感染症
Bウイルス
SRV:Simian retrovirus
霊長類の寄生虫
霊長類の腫瘍
障害をもった個体の福祉
サンクチュアリ
今後の展開:自動化・機械化・AIを用いた飼育技術

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