内容紹介
本書は、電子状態の解説が中心となる従来の超伝導の専門書とは一線を画して、相転移や揺らぎをキーワードとした超伝導の記述を行う。HTSCで見出された磁場下の現象がHTSCに固有のものではないことを明確にするために、物質に関する具体的な記述はむしろ避けて、従来からの超伝導の教科書とのつながりで読者に読まれることを意識して、超伝導理論の基礎を中心に解説。
目次
第1章 序論
1.1 はじめに
1.2 同種粒子
第2章 ボース粒子系の超流動
2.1 ボース‐アインシュタイン凝縮
2.2 ボース超流動
2.3 位相揺らぎ
2.4 量子渦
2.5 2次元超流動――コステリッツ‐サウレス転移
2.6 超流動揺らぎ
2.7 超流動転移への乱れの効果
第3章 超伝導のBCS理論
3.1 準備――フェルミ理想気体
3.2 電子格子相互作用
3.3 クーパー不安定性
3.4 フェルミ液体論と有効相互作用
3.5 BCS理論I――ボゴリューボフ変換
3.6 BCS理論II――基底状態と1粒子励起
3.7 グリーン関数を用いた平均場近似
3.8 電磁応答
3.9 コヒーレンス長
3.10 ギンツブルク–ランダウ(GL)自由エネルギー
第4章 磁場下の超伝導――渦糸格子
4.1 はじめに――超伝導体のタイプ
4.2 ロンドンモデルと磁束侵入磁場
4.3 高磁場近似での渦格子解
4.4 渦格子の電磁応答――渦糸フロー
4.5 渦糸フローホール効果
第5章 ゼロ磁場下の超伝導揺らぎの効果
5.1 マイスナー相における位相揺らぎ
5.2 2次元超伝導薄膜
5.3 磁場揺らぎによる1次転移
5.4 GL作用の微視的手法による導出
5.5 正常相における超伝導揺らぎ
5.6 揺らぎ伝導度の微視的手法による導出
5.7 臨界揺らぎに関するコメント
5.8 量子臨界揺らぎ
第6章 渦状態での超伝導揺らぎの効果
6.1 格子相での熱的揺らぎ
6.2 渦格子の弾性と位相コヒーレンスの破壊
6.3 渦格子融解
6.4 磁場下の超伝導揺らぎ
6.5 乱れによる渦格子秩序の破壊
付録
1 第2量子化
2 ボース流体の密度揺らぎ分散関係の導出
3 ボース系分配関数の経路積分表示
4 ガウス分布の場合の相関関数の導出
5 ロンドン極限への双対変換
6 ボース多体系へのパルケ近似による熱的臨界挙動の導出
7 低温展開による相転移の記述――非線形シグマモデル
8 平均場近似におけるTDGL方程式系
9 渦格子に関する数学的補遺