ナノ構造吸着科学

ナノ構造吸着科学

著者名 金子 克美
発行元 丸善出版
発行年月日 2023年12月
判型 A5 210×148
ページ数 292ページ
ISBN 978-4-621-30884-4
Cコード 3043
NDCコード 571
ジャンル 化学・化学工学 >  物理化学 >  分子・構造化学

内容紹介

本書によって,吸着科学の基礎,つまり,主として気体の固体表面への吸着にかかわる科学の基礎,および吸着材の表面構造との関係から分子が固体表面に吸着される過程を理解することができます.

吸着科学は,従来,熱力学的な記述が重視されてきましたが,それとは異なり,本省では,ナノスケールからみた構造科学的な取り扱いを重視した記述としています.さらに,最近の進歩も取り入れています.

産業の基盤を支えている吸着科学.実際に吸着技術は,空気からの酸素・窒素・アルゴンの製造,高純度の水素製造,異性体の分離,再生可能エネルギーの促進などに用いられています.

本書には,経験からのノウハウを交えた英知がたくさんつまっています.これを礎とし,さらなる吸着科学の発展,または吸着プロセスへの応用へと広がることを願っています.

目次

はじめに

1章 ナノ細孔物質と細孔
 1.1 細孔と表面
  1.1.1 固体粒子のサイズを小さくする
  1.1.2 固体中に孔をたくさん開ける
  1.1.3 ナノ細孔体
  1.1.4 表面欠陥
  1.1.5 細孔と表面欠陥の違い
 1.2 ナノ細孔体のいろいろ
  1.2.1 結晶性の細孔体
    ゼオライト / モンモリロナイト / 有機ゼオライト
  1.2.2 非結晶性の細孔体
    活性炭と多孔質ガラス / 規則構造性メソ細孔シリカ
 1.3 細孔の種類とポロシティ
  1.3.1 細孔径による分類
  1.3.2 ナノ細孔
  1.3.3 閉孔と開孔
  1.3.4 潜在孔
  1.3.5 細孔体の密度とポロシティ
  1.3.6 閉孔ポロシティの決定

2章 気体吸着の分子論
 2.1 蒸気と超臨界気体を区別する
  2.1.1 相転移
  2.1.2 超臨界流体と超臨界気体
 2.2 分子と分子との相互作用とは
  2.2.1 分子内の電子の偏りに起因する静電的な相互作用の実体
    静電的なポテンシャル / 局所電荷 / 双極子モーメントと四極子モーメント
  2.2.2 量子論的に平均化した電子の偏りに基づく相互作用:分散相互作用
    瞬時的双極子
  2.2.3 分子内の固体化した電子の偏りにより生じる静電的相互作用
    Coulomb相互作用 / 双極子間相互作用
 2.3 多極子が関与する相互作用と気体吸着との関係
 2.4 水素結合
 2.5 分子間相互作用を表す関数
  2.5.1 Lennard-Jonesポテンシャル関数
  2.5.2 Lorentz-Berthelot則
  2.5.3 水分子間の相互作用ポテンシャル関数
 2.6 分子と表面との相互作用
  2.6.1 Lennard-Jonesポテンシャルを用いた固体-分子間相互作用
  2.6.2 吸着されている分子の固体表面に対する振動運動
  2.6.3 分子の安定位置の決定
  2.6.4 分子の永久双極子モーメントは表面の吸着構造に影響を与える:鏡像効果
  2.6.5 分子-表面間相互作用に対する分子の電子状態の効果
  2.6.6 表面の原子的構造の効果:サイト間のエネルギー障壁
  2.6.7 表面の原子的構造を反映する吸着層の構造
    被覆率1付近での単分子層内の分子配向構造変化 / 整合層とヘリングボーン構造 / 四極子モーメントが決め手の吸着分子の二量体構造
 2.7 分子とナノ細孔との相互作用
  2.7.1 分子とスリット型細孔との相互作用
    スリット型細孔における相互作用 / スリット型細孔内の窒素を二原子分子としてみたほうがよい場合
  2.7.2 円筒型(シリンダー型)細孔での相互作用
  2.7.3 バンドルを形成している円筒チューブにおける相互作用
  2.7.4 電気伝導性ナノ細孔における顕著な鏡像効果:超イオン状態
 2.8 分子と固体との相互作用のタイプ
  2.8.1 吸着(物理吸着と化学吸着)・吸収・吸蔵の違い
  2.8.2 吸着(物理吸着と化学吸着)・吸収・吸蔵の定義
    物理吸着 / 化学吸着 / 吸収 / 吸蔵

3章 吸着の物理化学
 3.1 吸着と物理化学
 3.2 界面での力学平衡
 3.3 液体の蒸気圧
 3.4 曲率で蒸気圧は変化する
 3.5 表面への液体のぬれの効果
 3.6 表面層の自由エネルギー
 3.7 分離圧
 3.8 吸着熱とエンタルピー
  3.8.1 吸着熱の測定とその問題
  3.8.2 等温可逆過程での吸着熱

4章 吸着を測る
 4.1 吸着の実験
 4.2 吸着量をどう測るか
  4.2.1 試料表面の前処理
  4.2.2 重量変化から吸着量を測る
  4.2.3 気体があると固体試料には浮力が働く
  4.2.4 気相の圧力変化から吸着を測る
  4.2.5 実際の定容法では分子間相互作用と熱分子圧効果も考慮する
  4.2.6 脱着等温線の測定
  4.2.7 超臨界気体の吸着等温線を測るには
  4.2.8 表面過剰量と絶対吸着量との区別が高圧吸着では必要
  4.2.9 高感度に吸着等温線を測定するには:低表面積の測定
 4.3 吸着等温線のいろいろ
  4.3.1 IUPACの蒸気吸着等温線の6タイプ
    IUPAC I型 / IUPAC II型とIII型 / IUPAC IV型とV型
  4.3.2 IUPACの標準型と異なるよくみられる蒸気吸着等温線
  4.3.3 超臨界気体吸着等温線のタイプ
 4.4 その場吸着状態解析法のすすめ

5章 平らな表面での物理吸着の分子論
 5.1 分子の運動と吸着状態
 5.2 Langmuirの吸着モデル
 5.3 BETの多分子層吸着モデル
  5.3.1 BETの多分子層吸着等温式とBET表面積
  5.3.2 IUPACの吸着等温線のタイプとBET吸着等温式
  5.3.3 BET吸着等温式を補完するには
 5.4 眼で見る多分子層吸着
 5.5 フラクタルな表面での多分子層吸着
 5.6 極低温での強調されたヘリウムの二分子層吸着

6章 細孔への毛管凝縮
 6.1 メソ細孔における毛管凝縮機構
 6.2 メソ細孔の幾何学構造とヒステリシスループ
 6.3 ガービッチ則
 6.4 抗張力効果とヒステリシスループの閉鎖点
 6.5 走査ヒステリシス曲線と細孔ドメイン

7章 準メソ細孔での表面関与型毛管凝縮
 7.1 相転移の基本
  7.1.1 van der Waalsの状態方程式
  7.1.2 気液相転移
  7.1.3 準安定状態と不安定状態
 7.2 準メソ細孔での毛管凝縮の理論的な見方
  7.2.1 SaamとColeの理論
  7.2.2 密度汎関数理論
 7.3 準メソ細孔内の相挙動
  7.3.1 細孔壁近傍でのメニスカス曲率の増大理論
  7.3.2 準メソ細孔内の凝縮液の特異性
 7.4 メソ細孔への毛管凝縮機構をどう考えるか
  7.4.1 独立な円筒型メソ細孔
  7.4.2 パイプで連結した球状メソ細孔

8章 ミクロ細孔への吸着
 8.1 ミクロポアフィリングの構造論
  8.1.1 典型的なミクロポアフィリング
  8.1.2 ミクロポアフィリングと拡散障害
  8.1.3 拡散障害の軽減に有効な超高真空技術
  8.1.4 一時的な加温による拡散障害の軽減化
 8.1.5 細孔壁の曲率の符号の効果
 8.2 ミクロポアフィリングのDubinin-Radushukevich式による取扱い
  8.2.1 Dubinin-Radushukevich式
  8.2.2 Dubinin-Stoeckli式
 8.3 ミクロポアフィリングに伴う窒素吸着層の相転移:低相対圧ヒステリシス
 8.4 水蒸気吸着
  8.4.1 カーボンへの水蒸気吸着におけるミクロ細孔の役割
  8.4.2 吸着ヒステリシスの測定時間依存性
  8.4.3 クラスター関与ミクロポアフィリング機構
    クラスター形成の重要性 / クラスター成長から見る吸着機構
 8.5 量子分子のミクロポアフィリング:量子分子ふるい効果
  8.5.1 量子ポテンシャルと古典ポテンシャルの違い
  8.5.2 円筒型ミクロ細孔における量子分子ふるい効果
  8.5.3 混合同位体気体の分離
 8.6 細孔構造変化を伴うミクロポアフィリング:ゲート吸着とブリージング吸着
  8.6.1 ミクロ細孔体と気体分子との相互作用の様式
  8.6.2 ゲート吸着
  8.6.3 ブリージング吸着
  8.6.4 ゲート吸着とブリージング吸着の熱力学的見方
 8.7 超臨界気体のミクロポアフィリング
  8.7.1 擬蒸気化によるミクロポアフィリングの誘起
  8.7.2 超臨界気体のミクロポアフィリングの超臨界DR解析
  8.7.3 ミクロ細孔内での超臨界気体の異常な吸着状態
 8.8 細孔内超高圧効果
  8.8.1 メタンの分子内回転運動の凍結
  8.8.2 細孔内超高圧効果とは
  8.8.3 超高圧相の一次元硫黄鎖の生成
 8.9 ミクロ細孔への水蒸気吸着についての本質的な問題提起

9章 実効的な細孔構造の評価
 9.1 分子プローブの選択
  9.1.1 窒素とアルゴンおよび分子プローブのMIN-2分子サイズ
  9.1.2 極低温ヘリウムとネオン吸着法
  9.1.3 室温近傍での二酸化炭素吸着
  9.1.4 多プローブ気体吸着法
  9.1.5 前吸着法による細孔深さ方向解析
 9.2 表面積と細孔容積の評価
  9.2.1 高分解能αs-プロットを用いるSPE法:スリット型細孔
    高分解能αs-プロット / 分子シミュレーションによる高分解能αs-プロットと細孔径分布との関係 / SPE表面積とBET表面積の比較
  9.2.2 高分解能αs-プロットを用いるSPE法:円筒型細孔
 9.3 細孔径分布
  9.3.1 Horvath-Kawazoe(HK)法とSaito-Foley(SF)法
  9.3.2 密度汎関数理論法とグランドカノニカルモンテカルロ法
    密度汎関数理論法の概要 / 吸着等温線から細孔径分布を求める方法 / 細孔径分布算出の実際
 9.4 その他の細孔構造評価法

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