内容紹介

量子流体力学とは、量子凝縮した系の流体力学を意味している。量子流体力学は近年大きな注目を集めており、物性物理学、流体力学、量子力学、統計力学、非線形・非平衡物理学などを横断する魅力ある学問分野となっている。本書では、超流動ヘリウム４、超流動ヘリウム３、原子気体ボース・アインシュタイン凝縮体の系をおもに扱い、歴史的背景を交えながら、筆者らのここ十数年の研究を題材として基礎から体系的にまとめている。関連諸分野の研究者、大学院生にとって有用な一冊。

目次

第１章　量子流体力学への誘い
　１．１　巨視的量子現象
　１．２　超流動と量子渦
　１．３　量子乱流
　１．４　さまざまな量子流体
第２章　量子流体力学の基礎
　２．１　量子統計力学の基礎
　２．２　素励起描像
　２．３　Ｂｏｓｅ凝縮と巨視的波動関数
　２．４　秩序変数の運動方程式と量子渦
　２．５　素励起とLandauの臨界速度
　２．６　超流動4Ｈｅ
　２．７　超流動3Ｈｅ
　２．８　冷却原子気体ＢＥＣ
　２．９　原子気体多成分ＢＥＣ
第３章　超流動ヘリウムの量子渦
　３．１　超流動4Ｈｅの量子渦
　３．２　量子渦系のダイナミクス
　３．３　超流動3Ｈｅの量子渦
第４章　原子気体Bose–Einstein凝縮体の量子渦
　４．１　原子気体ＢＥＣの渦
　４．２　回転ＢＥＣにおける渦格子
　４．３　２成分ＢＥＣにける量子渦
　４．４　スピノールＢＥＣにおける量子渦
　４．５　ホモトピーを用いた量子渦の分類
　４．６　非可換量子渦の衝突ダイナミクス
第５章　量子流体力学的不安定性
　５．１　流れの不安定製
　５．２　２相超流体界面をもつ流れの不安定性
　５．３　完全対向流の不安定性
　５．４　物体を過ぎる流れの不安定
第６章　量子乱流
　６．１　古典乱流の諸性質
　６．２　量子乱流研究の意義
　６．３　量子乱流の諸性質
　６．４　量子乱流のエネルギースペクトル
　６．５　減衰量子乱流
　６．６　熱対向流下の量子乱流
　６．７　振動物体がつくる量子乱流
　６．８　原子気体ＢＥＣの乱流
第７章　量子流体系と他の物理系とのつながり
　７．１　超流体におけるKibble-Zurek機構
　７．２　超流体と曲がった時空との類似性
　７．３　中性子星と超流体
　７．４　液晶と量子流体との類似性
付録Ａ　群論の基礎
　Ａ．１　群の定義と基本的な性質
　Ａ．２　具体的な群の例
付録Ｂ　ホモトピーと位相欠陥
　Ｂ．１　秩序変数空間
　Ｂ．２　基本群による分類

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