内容紹介
ノーベル経済学賞のポール・クルーグマンによる定評のある国際経済学入門テキストの最新版。この分野の教科書として最も信頼され、米国はもとより世界中の大学やビジネススクールで採用されている。上巻で「貿易」を、下巻で「金融」をあつかい、2つの領域の関係を必要に応じて明らかにしている。また、本書を特徴づけるアプローチとして、理論に焦点を絞った章と、その理論を過去と現在の主な政策問題の検討に応用した章が続く構成。国際経済学のきわめて重要な最近の動向を取り上げながら、従来の国際経済学のテーマの中心となる理論や、歴史を踏まえた不朽の知識を学ぶことができる。第8版では、内容を最新のものにアップデートするとともに、いくつかの章を大幅に見直し、読者からの意見や国際経済学の理論と実践面における重要な進展を反映。
目次
第III部 為替レートと開放経済のマクロ経済学
第12章 国民所得勘定および国際収支
国民所得勘定
国民生産と国民所得
資本減耗と国際移転
国内総生産
開放経済における国民所得勘定
消費
投資
政府支出
開放経済における国民所得恒等式
架空の開放経済
経常収支と対外債務
財畜と経常収支
民間貯畜と政府貯畜
国際収支勘定
[ケーススタディ]財政赤字縮小は必ずしも経常黒字増加につながらない
対になる取引の例
国際収支の基本的な恒等式
経常収支をもう一度
資本収支
投資収支
統計上の不突合
公的外貨準備取引
[ケーススタディ]世界最大の借金国の資産と負債
要約
第13章 為替レートと外国為替市場:為替レートの決定要因となるアセット・マーケット・アプローチ
為替レートと国際取引
国内価格と国外価格
為替レートと相対価格
外国為替市場
市場参加者
[コラム]2つのドルの物語
市場の特性
直物レートと先物レート
外国為替スワップ
通貨先物取引とオプション取引
[コラム]アジアのノンデリバラブル(受け渡しを行わない)・フォワード取引
外貨建て資産に対する需要
資産と資産収益率
リスクと流動性
利子率
為替レートと資産収益率
簡便計算法
外国為替市場における収益率,リスク,流動性
外国為替市場における均衡
均衡の基本的条件となる利子率平価
為替レート均衡
利子率,期待,および均衡
利子率の変化が現在の為替レートに与える影響
期待の変化が現在の為替レートに与える影響
要約
補遺:先物為替レートとカバー付き利子率平価
第14章 貨幣,利子率,為替レート
貨幣の定義:ちょっと復習
交換手段としての貨幣
計算単位としての貨幣
価値保存手段としての貨幣
貨幣とは何か?
マネーサプライはどのように決まるか
貨幣に対する個人の需要
期待収益率
リスク
流動性
総貨幣需要
均衡利子率:貨幣供給(マネーサプライ)と貨幣需給の相互作用
金融市場における均衡状態
利子率とマネーサプライ
生産量と利子率
マネーサプライと為替レートの短期的分析
貨幣,利子率および為替レートの関係
アメリカのマネーサプライとドル/ユーロ為替レート
ヨーロッパのマネーサプライとドル/ユーロ為替レート
貨幣,価格水準,為替レートの長期的分析
貨幣と貨幣価格
マネーサプライの変化がもたらす長期的影響
マネーサプライと価格水準についての実証的な裏づけ
長期的に見た貨幣と為替レートの関係
インフレーションと為替レートの動向
短期的な価格硬直性と長期的な価格伸縮性
マネーサプライの恒常的変化と為替レート
[コラム]ボリビアにおけるマネーサプライの増加とハイパーインフレーション
為替レートの急激な上昇―オーバーシューティング
[ケーススタディ]激しいインフレーションは通貨価値の上昇をもたらすか?
インフレ目標設定の意味するもの
要約
第15章 長期的な価格水準と為替レート
一物一価の法則
購買力平価説(PPP)
購買力平価説(PPP)と一物一価の法則の関係
絶対的購買力平価説と相対的購買力平価説
購買力平価説(PPP)に基づく長期為替レート・モデル
マネタリー・アプローチの基本
インフレの進行,利子率平価,および購買力平価説(PPP)
フィッシャー効果
購買力平価説(PPP)と一物一価の実証例
購買力平価説(PPP)の問題点
貿易摩擦と非貿易財
自由競争からの逸脱
消費パターンおよび物価指数の相違
[コラム]一物一価の法則に関する味わい深い証拠
短期および長期の購買力平価説(PPP)
[ケーススタディ]貧しい国ではなぜ価格水準が低いか?
購買力平価の拡大:長期為替レートの一般モデル
実質為替レート
[コラム]価格硬直性と一物一価の法則:スカンジナビアの免税店の場合
需要,供給と長期実質為替レート
長期均衡における名目為替レートと実質為替レート
国際的な利子率の差と実質為替レート
実質利子率平価
要約
補遺:価格が伸縮的なマネタリー・アプローチとフィッシャー効果,利子率および為替レート
第16章 短期的な生産と為替レート
開放経済における総需要の決定要因
消費需要の決定要因
経常収支の決定要因
実質為替レートび変動が経常収支に与える影響
可処分所得の変化が経常収支に与える影響
総需要の方程式
実質為替レートと総需要
実質所得と総需要
短期的な生産はどのように決まるか
短期的な生産物市場の均衡:DD曲線
生産,為替レートおよび生産物市場の均衡
DD曲線を導く
DD曲線をシフトさせるさまざまな要因
短期的な資産市場の均衡:AA曲線
生産,為替レートおよび資産市場の均衡
AA曲線を導く
AA曲線をシフトさせる要因
開放経済の短期均衡:DD曲線とAA曲線を組み合わせる
金融政策および財政政策の一時的変更
金融政策
財政政策
完全雇用を維持するための政策
インフレ・バイアスおよびその他の政策策定の問題点
金融政策,財政政策の恒常的な変更
マネーサプライの恒常的な増加
マネーサプライの恒常的な増加に対する調整
恒常的な財政拡大
マクロ経済政策と経常収支
緩やかな貿易量の調整と経常収支の動き
Jカーブ効果
為替レートの浸透度とインフレーション
[コラム]為替レートと経常収支
要約
補遺1:異時点間貿易と消費需要
補遺2:マーシャル=ラーナー条件と貿易弾力性の実証的推定
第17章 固定為替相場制と外国為替介入
どうして固定為替相場制を学ぶ必要があるのか?
中央銀行の介入とマネーサプライ
中央銀行のバランスシートとマネーサプライ
外国為替介入とマネーサプライ
不胎化
国際収支とマネーサプライ
中央銀行はどのように為替レートを固定するのか
固定為替相場制での外国為替市場の均衡
固定為替相場制下での金融市場の均衡
図による分析
固定為替相場制での安定化政策
金融政策
財政政策
為替レートの変更
財政政策と為替レートの変更に対する調整
国際収支危機と資本の逃避
管理フロート制と不胎化介入
資産の完全な代替性と不胎化介入の無効性
[コラム]1998〜1999年のブラジルの国際収支危機
資産代替性が不完全な場合の外国為替
不完全な資産代替性の場合の不胎化介入の効果
不胎化介入が有効な例
国際通貨制度における準備通貨
準備通貨本位制の仕組み
準備通貨国の非対称的な立場
金本位制
金本位制の仕組み
金本位制下での対称性のある金融調整
金本位制の長所と短所
金銀複本位制
金為替本位制
[ケーススタディ]外貨準備に対する需要
要約
補遺1:資産の代替性が不完全な場合の外国為替市場の均衡
需要
供給
均衡
補遺2:国際収支危機が起こる時期
第IV部 国際マクロ経済政策
第18章 国際通貨制度,1870〜1973年
開放経済におけるマクロ経済政策の目標
国内均衡:完全雇用と物価水準の安定
対外均衡:経常収支の最適水準
金本位制下の国際マクロ経済政策,1870〜1914年
金本位制の起源
金本位制下の対外均衡
物価・正貨流出入機構
金本位制の「ゲームのルール」:神話と現実
[コラム]ヒューム対重商主義者
金本位制下の国内均衡
[ケーススタディ]為替相場制度の政治経済学:1890年代のアメリカにおける本位貨幣制度を巡る対立
戦間期,1918〜1939年
つかの間の金本位制への復帰
国際経済の分裂
[ケーススタディ]国際金本位制と大恐慌
ブレトン・ウッズ体制と国際通貨基金
IMFの目標と仕組み
交換可能性と民間の資金移動
投機的な資本移動と危機
ブレイン・ウッズ体制下の政策の選択肢を分析する
国内均衡の維持
対外均衡の維持
支出変更政策と支出転換政策
アメリカの対外均衡問題
[ケーススタディ]ブレトン・ウッズ体制の崩壊
世界的なインフレーションと変動相場制への移行
要約
第19章 変動相場制の下でのマクロ経済政策と協調
変動為替相場制に対する擁護論
金融政策の自律性
対称性
自動安定化装置としての為替レート
変動相場制に対する反対論
規律
不安定化的投機と金融市場の混乱
国際貿易と国際投資に対する悪影響
非協調的経済政策
自律性拡大という錯覚
[ケーススタディ]2つのオイルショックにはさまれた時期の為替レートの動き,1973〜1980年
第一次オイルショックとその影響,1973〜1975年
弱いドル,1976〜1979年
第二次オイルショック,1979〜1980年
変動相場制でのマクロ経済の相互依存性
[ケーススタディ]ディスインフレーション,危機,およびグローバル・インバランス,1980〜2008年
ディスインフレーションと1981〜1983年の景気後退
財政政策,経常収支,および保護主義の再燃
世界不況の再来,回復,危機,および赤字
2000年代のグローバル・インバランスと実質金利
1973年以降の経験から何がわかったか?
金融政策の自律性
対称性
自動安定化装置としての為替レート
規律
不安定化的投機
国際貿易と国際投資
政策協調
多くの国にとって,固定為替相場制は選択肢たりうるのか?
改革の方向性
要約
補遺1:国際政策協調の失敗
第20章 最適通貨圏とヨーロッパの経験
ヨーロッパ単一通貨の歴史
ヨーロッパを通貨協力へ向わせた理由
1979〜1998年の欧州通貨制度
ドイツの金融政策の優位性とEMSの信頼性理論
EU「1992」構想
欧州経済通貨同盟
ユーロ通貨圏におけるユーロと経済政策
マーストリヒト条約の収斂基準と安定成長協定(SGP)
欧州中央銀行制度(ESCB)
改訂された為替相場メカニズム
最適通貨論の理論
固定為替レート通貨圏のメリットと経済統合:GG曲線
経済統合と固定為替レート通貨圏の費用:LL曲線
通貨圏加入の意思決定:GG曲線とLL曲線
[コラム]ゴードン・ブラウンと経済の5つの試金石
最適通貨圏とは
[ケーススタディ]ヨーロッパは最適通貨圏か
ヨーロッパ域内の貿易
ヨーロッパの労働移動性はどのくらいか
検討が必要なその他の事項
まとめ
EMUの将来
[コラム]非対称的なショックへの対応:2000年代のカナダ
要約
第21章 国際資本市場:機能性と政策課題
国際資本市場と貿易の利益
3種類の貿易の利益
リスク回避
国際的な資産取引を行う動機としての分散投資
国際資産の品揃え:債務 対 株式
国際銀行業務と国際資本市場
国際資本市場の構造
国際資本市場の成長
オフショア金融とオフショア為替取引
ユーロカレンシー取引の拡大
規制の非対称性の重要性
国際銀行業務の規制
銀行破綻の問題
国際銀行業務規制の難しさ
規制の国際協調
[ケーススタディ]世界が終りかけたとき:市場が動揺した2つの事件
国際資本市場の機能性
国際分散投資はどこまで進んだか
異時点間貿易はどこまで進んだか
オンショア市場とオフショア市場における金利差
外国為替市場の効率性
要約
第22章 発展途上国:成長,危機,および改革
世界経済における所得,富,および成長
富裕国と貧困国の格差
世界の所得格差は時間とともに縮まったか?
発展途上国の構造的な特徴
発展途上国の借り入れと債務
発展途上国への資金流入の経済学
デフォルトの問題
資金流入のさまざまな形態
「原罪」の問題
1980年代の債務危機
改革,資本流入,および危機の再燃
東アジア:成功と危機
東アジア経済の奇跡
[コラム]なぜ発展途上国はそんなにも高水準の外貨準備を蓄積したのか?
[コラム]東アジア諸国の成功の秘訣は?
[コラム]モラルハザードの簡単な代数
アジアの弱点
アジアの金融危機
ロシアへの波及
[ケーススタディ]カレンシー・ボード制は固定為替レートの信頼性を高めるか?
発展途上国の危機の教訓
世界の金融「アーキテクチャー」を改革する
資本の移動性と為替相場制度のトリレンマ
「予防」策
危機を乗り切る
混乱した未来
[ケーススタディ]過小評価されている中国の通貨
国際資本移動と所得の国際分配を理解する:地理的環境は運命か
要約
付録 数学に関する補足説明
第21章の数学に関する補足説明:リスク回避と国際分散投資