内容紹介
圏論はしばしば数学における共通の構成やパターンを浮き彫りにするために用いられてきたが、数学に分け入っていくほどに圏論での重要な概念である普遍性に出会うことになる。 本書では普遍性の考え方に焦点を当てるため、圏論の最も基本的な内容のほかはあえて割愛。圏と関手の基本的な語彙を確立した後、随伴関手、表現可能関手、極限という三つの異なる普遍性の現れを学び、最後にこれらの関係を解明する。本書では新しい概念を説明するたびに十分すぎるほどの例を与えてある。 これらの例をすべて理解できる必要はないが、重要なことは、例を通じてすでに知っている数学と新しい概念を関連づけること。 演習問題についてはすべて解くことを強く推奨する。 基礎レベルの圏論においては問題文が理解できることは解答を知っていることとほとんど等価であるが、特に日本語への翻訳にあたり解答を付した。普遍性の理解を通じて圏論の要点を速習できる一冊。
目次
序論
第1章 圏・関手・自然変換
1.1 圏
1.2 関手
1.3 自然変換
第2章 随伴
2.1 定義と例
2.2 単位と余単位からみた随伴
2.3 始対象からみた随伴
第3章 休憩:集合論について
3.1 集合にまつわる諸構成
3.2 小さな圏と大きな圏
3.3 歴史についての注意
第4章 表現可能関手
4.1 定義と例
4.2 米田の補題
4.3 米田の補題の帰結
第5章 極限
5.1 極限:定義と例
5.2 余極限:定義と例
5.3 関手と極限の相互作用
第6章 随伴・表現可能関手・極限
6.1 随伴と表現可能関手からみた極限
6.2 前層の極限,余極限
6.3 随伴関手と極限の相互作用
付録A 一般随伴関手定理の証明