内容紹介
組織における危機管理の目標は組織の業務継続にある。本書では、組織の危機管理能力向上のために必要不可欠な業務継続マネジメント・プロセスの基本的な考え方、リスクの評価・戦略計画・一元的な危機対応・教育・訓練の実施方法について平易に解説し、これらを継続的に行っていく大切さを力説する。危機管理能力が他の先進国に比べ低いといわれるわが国にとって、誰もが知っておくべき知識といえる。
目次
第1講 危機とはなにか
1 文化によって異なる「危機」のとらえ方
2 危機の定義
3 なぜ危機は発生するのか
4 危機と判断するべき基準
5 危機判断の基準
第2講 危機管理のための体制つくり
1 ステークホルダーの明確化
2 なぜステークホルダーを考慮する必要があるのか
3 ステークホルダーを集めることが合理的な解決につながる
4 ステークホルダーの範囲は広い
5 リスクマネジメントアプローチの採用
6 ステークホルダーの参画によるリスクマネジメント
第3講 危機管理の方法―業務継続マネジメント
1 危機管理とは何か
2 危機管理の目標
3 危機管理の目標としての事業継続
4 危機管理の二つの目標
5 なぜ組織の「社会的責任」と「社会的信頼」なのか
6 危機管理において守るべきこと
第4講 リスク同定・評価の手法
1 リスクとは何か
2 リスク同定・評価手法の基本的な考え方
3 リスク同定・評価手法の具体的手続き
4 リスク同定・評価手続きの運用事例
5 今後の展望
第5講 リスク評価の定量評価
1 リスク評価の必要性
2 定量的評価とは何か
3 不確定性の数量化
4 シミュレーションによる事象の把握
第6講 危機管理のための戦略計画
1 戦略計画とは何か
2 巨大災害を想定した防災戦略
3 企業の防災戦略(BCP)
第7講 戦略計画の策定の方法
1 計画策定の前提条件と計画策定のプロセス
2 戦略計画の考え方と計画プロセス
3 危機管理のための戦略計画の策定プロセス
4 参画型ワークショップによる計画づくり
第8講 業績評価と進捗管理
1 業績測定とは何か
2 危機管理計画のための業績指標の設定
3 進捗管理・評価の手法
第9講 一元的な危機対応システム
1 危機対応とは何か
2 評価軸の設定
3 活動目標の明確化
4 現実の把握
5 インデント・マネジメント・システム
6 一元的な危機対応システム
第10講 ICSによる危機対応組織の運営
1 危機対応の事実上の世界標準となっているICS
2 ICSの五つの機能
3 危機対応ドクトリンとしてのICS
4 ICSを危機対応ドクトリンとした場合の日本の危機対応の特徴
5 本社会に適した危機管理基盤のあり方:三つの提言
第11講 ICS導入のためのツール
1 ICSの具現化
2 危機対応のための情報システム
3 危機対応センター(EOC)
第12講 教育訓練の基本的な考え方
1 危機担当者の三つの任務
2 「見直し」の徹底:アフターアクションリポートの作成
3 体系的な研修・訓練の必要性
4 研修・訓練の基本モデル
5 効果的な研修方法とは
第13講 教育訓練の方法
1 危機対応業務と日常業務
2 インストラクショナルデザインとは
3 インストラクショナルデザインの基本プロセス
4 インストラクショナルデザインが実現する目標
5 知的技能とは
6 危機対応現場におけるインストラクショナルデザインの適用
7 危機対応現場における教授法
8 二〇〇七年石川県能登半島地震災害の危機対応への適用事例