気候危機

気候危機

激甚化する川・劣化する川
著者名 土屋 十圀
発行元 丸善プラネット
発行年月日 2023年12月
判型 A5 210×148
ページ数 296ページ
ISBN 978-4-86345-550-4
Cコード 3040
NDCコード 519
ジャンル 環境科学・生活科学 >  環境科学

内容紹介

本書は第1編「気候危機―激甚化する川」、第2編「劣化する川の再生をめざして」の二編で構成されている。これまでの河川環境に関わる研究・調査事例を紹介しながら、近年、首都圏の水がめである大河川とその流域でなにが起きているのか。洪水と水利用の歴史や水質を含む生態系の変貌を知り、水環境と川の劣化を終わらせ、環境共生の未来を考えたい。今後の水循環、河川の生態系の再生をどのように進めていけばよいのか読者の皆さんの一助になれば幸いである。

目次

はじめに
第I編 気候危機―激甚化する川
第1章 2015年9月台風18号と線状降水帯―関東・東北豪雨・鬼怒川水害
1-1  河川管理の重要性を知らされた鬼怒川水害
1-2  戦前の昭和10年に建設の鎌庭捷水路の功罪
1-3  鬼怒川水害における捷水路通水前後の掃流力
1-4  ミシシッピー河の捷水路工事の教訓
第2章 2016年8月台風10号東北豪雨水害―岩手県小本川・久慈川
2-1  太平洋を迷走した温暖化台風10号―ライオンロック
2-2  台風と津波の2重災害の小本川流域
2-3  水防法改正の契機となった高齢者の命の住まい
2-4  流木がなければ越水氾濫を免れた久慈川水害の検証
第3章 2017年8月30日東京・埼玉を流れる柳瀬川の記録的短時間豪雨による水難事故
3-1 記録的短時間大雨は局地豪雨―軽視できない都市河川
3-2 豪雨時の無処理放流対策が急がれる下水道システムと河川管理
3-3 流域治水がためされる河川と下水のコラボレーション
第4章 2018年7月西日本豪雨水害―高梁川水系小田川
4-1  わかっていた小田川の治水上の課題と管理
4-2  水害のリスク要因の大きかった天井川
4-3  内水排水対策が避けられない盆地河川
第5章 2019年10月台風19号東日本豪雨・千曲川水害
5-1  スーパー・タイフーン19号カテゴリー5による被害
5-2  長野市穂保の桜づつみ堤防(側帯)の決壊はなぜ発生したのか
5-3  今後の河川維持管理の課題―広大な高水敷の堆積土砂と高密度の果樹木
5-4  交互砂州の自励現象が続く中流域河道の宿命と対策 
5-5 河川重要水防区域の警戒度評価と千曲川上流域の実態被害 ―山間地域の中小河川の水害から見える流域治水の今後
第6章 総論:激甚化する豪雨災害に対応する今後の流域治水に向けて
6.1 まえがき
6.2  近年の洪水外力の特徴
6.3 豪雨被害の経年変化の特徴と課題
6.4 総合治水から流域治水への課題
6.5 水害リスク低減のための社会的合意形成
第II篇 劣化する川の再生をめざして
第1章 利根川上流の河川生態系の変貌
1-1 アユ放流量の増加と漁獲高の減少
1-2 利根川の川づくりと水利用のジレンマ
1-3 水中の光環境と濁度が藻類の増殖速度に与える影響
1-4 もう一つの利根川-トンネルの河―水力発電と導水路
1-5 ノンポイントソース汚染とスキー場
1-6 赤城山麓大間々扇状地の地下水汚染
第2章 釣り師が好む川の流れと瀬・淵構造
2-1 複雑で多様な川の流れとその形態
2-2 早瀬のフラッシュ効果と藻類生産量
2-3 東京都平井川の多自然型川づくりの実践
第3章 多摩川水系の長期生物調査から見えた河川生態系の攪乱と再生
3.1 河川改修が続いた川と在るが儘の川の底生動物の動態記録
3.2 流量変動が底生動物群に及ぼす確率論的特性と中規模攪乱説の検証
第4章 総論:河川生態系の再生にむけて
4.1 河川生態系における攪乱の要因 
4.2 生物の多様度と中規模攪乱説の適用
4-3 河川生態系の回復にむけて
あとがき

定価:3,300円
(本体3,000円+税10%)
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