内容紹介
日々の生活の中でわたしたちは、歩き、詩作し、住まい、音を奏で、食べ、死者とも交流する。他者に焦がれ、あるいは背を向けながら、歓びも痛みも、愛おしさも怒りも日々に埋め込んでゆく。そのような毎日は変奏されながら、日々の襞の折り目を豊かにたおやかに重ねてゆく。本書は、そのような襞のなかに、美学・建築・文学・食を通して分け入り、日常を見つめ直している。
目次
序――日常のディアスポラ
第一部 美学
日常の美学――世界の創出 齋藤百合子
キャンプ・ライフのモダニズム――ミネ・オークボ『市民13660号』 アン・マクナイト
共に「住まうこと」――西内健善と日常の美的想像力 ミリアム・サス
足の跡、手の跡、息の跡――リチャード・ロングの彫刻における消散 山口惠里子
第二部 建築・家政
建築のファイナリティと適応 半田るみ子
『ポイントンの蒐集品』に表象された美の民主化をめぐる攻防 三宅敦子
ヴィクトリア朝イギリスのドローイングルームとスピリチュアリズム――ミドルクラス女性の交霊会 長谷部寿女士
<ハウス>のパラダイムシフト――空襲と原爆の時代のドラマ 竹谷悦子
ノスタルジア――ジョン・チーヴァー「泳ぐ人」における家庭と不在の詩学 宮本陽一郎
第三部 文学
共有する日常――女工エレン・ジョンストンの詩と読者 中田元子
日常のサウンドスケープ――ベケットのラジオ劇『すべて倒れんとする者』 対馬美千子
ピアノのお稽古とその影響力――作家になったアメリカの少女たち 馬籠清子
日常の表現の渇望と国民共生意識の醸成――アルジェリアの日本式マンガ創作 青柳悦子
第四部 食
「倫理的な食」の陥穽を越えて 五十嵐泰正
NETFLIX 北朝鮮漂流記『愛の不時着』における「ニュートロ」な男性像――料理する人民軍と共に イ・ヒャンジン
ヒースクリフの飢え――『嵐が丘』の日本語訳にみる食 ジュディス・パスコー
あとがき
執筆者・訳者紹介
▼ 関連記事
- 【取引出版社】2023年4月新刊一覧2023.03.27