プライバシー権保障と個人情報保護の異同

プライバシー権保障と個人情報保護の異同

イギリス、アイルランド、日本の比較法的検討
著者名 加藤 隆之
発行元 東洋大学出版会
発行年月日 2022年11月
判型 A5 210×148
ページ数 492ページ
ISBN 978-4-908590-10-8
Cコード 3032
ジャンル 社会科学 >  社会科学一般

内容紹介

 本書は、プライバシー権と個人情報(データ)保護を受ける権利との関係、異同を明らかにしようとするものである。

本書では、イギリス、アイルランド、日本のプライバシー権、個人情報、個人データ保護に関する法制度を概観し、民事責任に関する判例を中心として、プライバシー権と個人情報保護との関係をあぶりだそうとしている。

目次

序  問題の所在
──プライバシー権と個人情報の保護を受ける権利との関係
1 議論の隆盛
2 議論の穿孔
第1章 イギリスにおける法的責任
1 プライバシー権の保障と個人データ保護制度の概要
(1)プライバシー権保障の概要
(2)個人データ保護制度の概要
2 公権力によるプライバシー権保護の欠如
(1)電話傍受及び防犯カメラ映像提供
(2)公権力による身体的接触のないプライバシー権侵害
(3)立法的解決の妥当性
3 私的な情報の誤用に基づく損害賠償請求と信任違反
(1)立法及びコモン・ローの欠缺
(2)Campbell 貴族院判決
(3)Campbell 判決の妥当性
(4)Campbell 判決後のコモン・ローの動向
4 個人情報の誤用と損害賠償請求
(1)私的な情報の誤用から個人情報の誤用へ
(2)Google Inc v Judith Vidal-Hall 控訴院判決
(3)見落としか、当然の流れか
5 責任拡大の抑制
(1)Wm Morrison Supermarkets plc v Various Claimants 判決
(2)Lloyd v Google LLC 判決
(3)コロラリーか、それとも
6 コモン・ローの桎梏と真髄
(1)プライバシー権の保障と判例法主義・議会主権
(2)プライバシー権の包括的保障?
(3)信任違反のヤドカリ的利用の拡大?
(4)責任拡大の歯止め
第2章 アイルランドにおける法的責任
1 プライバシー権の保障と個人データ保護制度の概要
(1)プライバシー権保障の概要
(2)個人データ保護制度の概要
(3)イギリス法との関係
2 憲法上のプライバシー権侵害に基づく損害賠償請求
(1)憲法によるプライバシー権の保障――McGee 判決
(2) 公権力による憲法上のプライバシー権侵害に対する
損害賠償請求――Gray 判決
(3) 私人による憲法上のプライバシー権侵害に対する
損害賠償請求I――Herrity 判決
(4) 私人による憲法上のプライバシー権侵害に対する
損害賠償請求II――Hickey & Anor 判決
(5) 私人による憲法上のプライバシー権侵害に対する
損害賠償請求III――Sullivan 判決
3 憲法上の救済と既存のコモン・ロー上の救済との関係
(1)憲法上の救済に関するアイルランド司法の特異性
(2)Hanrahan 判決とその後のコモン・ローの流れ
(3)Hanrahan 命題の妥当性
4 幻影としてのアイルランド制度
(1)判例法主義の弛緩?
(2)網羅的制度の実態
第3章 日本における法的責任
1 プライバシー権の保障と個人データ保護制度の概要
(1)プライバシー権保障の概要
(2)個人情報保護制度の概要
(3)民事責任の法的構成
2 公権力によるプライバシー権侵害
(1)憲法13 条による包括的保障の意義
(2)国家賠償法によるプライバシー権保障
3 私人によるプライバシー権侵害
(1)「宴のあと」判決とその後の最高裁判決
(2)「宴のあと」基準の成立要件の妥当性
(3)「宴のあと」基準の違法性阻却自由の妥当性
(4)「宴のあと」基準の通用性
4 プライバシー権保障から個人情報保護へ
(1)プライバシー権で保護される個人情報の範囲
(2)個人情報の誤用と不法行為法上の違法性
5 融通無碍な日本の損害賠償制度
(1)柔軟な日本の制度
(2)柔軟性ゆえの個人情報保護の膨張
第4章  個人情報の誤用に起因する損害の発生と
賠償額の算定
1 問題の核心
(1)プライバシー権侵害と損害の発生
(2)個人情報の誤用と損害の発生
2 EU における個人データ保護法違反と損害賠償請求
(1)GDPR における民事責任の概要
(2)GDPR 違反と損害賠償の範囲
3  イギリス及びアイルランドにおける個人データ保護法違反
と損害賠償請求
(1)Johnson v Medical Defence Union 控訴院判決
(2)Collins v FBD Insurance Plc 控訴院判決
(3)Google Inc v Judith Vidal-Hall 控訴院判決
(4) データ保護法違反に基づく損害賠償と不法行為に基づく損害賠償
4 日本における個人情報の誤用と損害賠償請求
(1)従来の裁判例の流れ
(2)新しい裁判例の流れ
(3)ベネッセ事件における精神的損害の否定
5 考察
(1)個人情報の誤用と精神的損害
(2)日本の特異性
(3)均衡を失した過大な責任
(4)従来型プライバシー権侵害訴訟との比較
第5章 プライバシー権の原理的考察
1 イギリスにおけるプライバシー権の源流
(1)住居の不可侵と通信の秘密
(2)ウォーレン・ブランダイス論文の評価
2 プライバシー権の現代的潮流
(1)自己情報コントロール権説の出現
(2)自己情報コントロール権説の妥当性
(3)公法私法区分論の妥当性
3 プライバシー権と個人情報保護の関係
(1)個人データ及び個人情報の定義
(2)プライバシー権として保護される個人情報の範囲
(3)個人情報保護は基本的人権か?人間の尊厳か?
4 プライバシー権・個人情報保護を受ける権利の享有主体
(1)法人のプライバシー権
(2)子どものプライバシー権
(3)死者のプライバシー権
(4)同意にまつわる問題
5 結語──伝統的プライバシー権の再評価
(1)プライバシー権から個人データ保護へ
(2)忘れられた伝統的プライバシー権

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