内容紹介
量子力学を使い続けていると、学び始めたころ不思議と感じたことにいつしか慣れてしまう。初等的な疑問は決して解決したわけではないが、つじつまが合っているからと気にしなくなる。
本書は「物わかりの悪い人」を読者対象として、この基礎的な疑問に改めて向き合い、その理解を図る。純然たる哲学でも単なる計算技術でもなく、両側面を合わせもつ体系としての量子力学を身につけ、細部まで熟知して使いこなせるようになることを目指す。
初等的な数学（主に微積分）と物理（主にニュートン力学）だけを前提とし、数学的道具は、必要になった段階で、それまでに培った知識などを総動員して手作りしつつ話を進める。
講義を受けているかのように、疑問点や思考過程を追いながら、量子力学を発見的に再構成できる。
歴史的経緯ではなく、量子力学を学ぶ人が疑問に思うことを解明しながら進み、かゆいところに手が届く解説で深い理解を促す。
目次
第16章 ハミルトニアン固有値問題：一般論（Ｅ1）
16．１ 問題設定
16．２ 二階方程式の局所的性質
16．３ E［H1］空間
16．４ 束縛状態
16．５ パリティ
16．６ 散乱素材波
16．７ スペクトル構造（Ｅ1）まとめ
16．８ 道草数学：行列と群
16．９ 転送行列とS行列
16．10 転送行列の応用：多連ポテンシャルと周期ポテンシャル
16．11 フロケ―ブロッホ定理
16．12 ハミルトニアン固有函数の直交性
16．13 ハミルトニアン固有函数の完全性
16．14 零点に関する諸定理
第17章 確率公準：決定版
17．１ Ｅ2における基底系と広義基底系
17．２ 運動量確率公準
17．３ 位置確率公準
17．４ エネルギーについての確率公準と保存則
17．５ 自己随伴演算子についての確率公準
17．６ 確率について（再）
17．７ 固有値方程式の位置づけ
17．８ エネルギーと時間の不確定性関係
17．９ 状態についての確率
17．10 “負の運動エネルギー”再考
17．11 位運基底系
17．12 調和振動子に関連した（広義）基底系
17．13 ウィグナー函数
17．14 伏見函数
第18章 エネルギー測定
18．１ 自由波束に関するエネルギー測定
18．２ 束縛状態に関するエネルギー測定
18．３ 始状態の準備
第19章 準古典的状況：ＷＫＢ近似
19．１ ＷＫＢ波と妥当性条件
19．２ ＷＫＢ波導出の別法
19．３ 高エネルギーＷＫＢ散乱素材波
19．４ ＷＫＢ接続公式
19．５ 緩坂全反射（転回点一個）
19．６ 窪束縛状態（転回点二個）
19．７ 丘トンネル（転回点二個）
19．８ Ｅ1版クーロントンネル
19．９ 熱核反応：ガモフエネルギー
19．10 Ｅ1版被遮蔽クーロントンネル（転回点二個）
19．11 全反射と共鳴（転回点三個）
19．12 二連穏久保束縛状態（転回点四個）
19．13 二連緩丘共鳴（転回点四個）
19．14 多連緩丘
19．15 作用の低エネルギー近似形
19．16 適性ＷＫＢ法（その１）：単純井戸基底状態
19．17 適性ＷＫＢ法（その２）：対称二連井戸基底二重項
19．18 準安定状態の“寿命”
第20章 実効一次元状態
20．１ 変数分離型シュレーディンガー方程式
20．２ 壁・鏡・膜
20．３ Ｈｅ液面上空電子と水平鏡上空中性子
20．４ マッハ―ツェーンダー干渉計
20．５ 一様外力下のマッハ―ツェーンダー干渉計
20．６ 一様外力下のマッハ―ツェーンダー干渉計：詳細解析
第21章 位置デカルト座標に関する変数分離型状況
21．１ 位置デカルト座標に関する変数分離
21．２ 自由粒子
21．３ 鼓
21．４ 調和振動子
21．５ 幾何学的対称性と縮退
21．６ 直二三鼓
21．７ 帯・層・導波管・輪中
21．８ 次元低減
21．９ 回転と鏡映：Ｅ2
21．10 回転と鏡映と反転：Ｅ3
21．11 二階対称テンソルの対角化
21．12 回転演算子
21．13 幾何学的対称性と固有函数
21．14 正鼓縮退の詳細
21．15 三叉路
21．16 輪中（再）
21．17 ＣＯＷ効果と静電ＡＢ効果：輪中版
第22章 エネルギー確率公準とスペクトル構造（Ｅ3）
22．１ ハミルトニアン基底系
22．２ エネルギー確率公準
22．３ 用語
22．４ スペクトル構造図
22．５ 箱規格策におけるスペクトル
22．６ 箱規格策にける“位置運動量不確定性関係”
22．７ 状態密度
