作家の訳した世界の文学

作家の訳した世界の文学(電子書籍)

著者名 井上 健
発行元 丸善出版
発行年月日 2019年12月

内容紹介

芥川龍之介が訳したゴーチエの「クラリモンド」吉行淳之介が訳したミラーの「愛と笑いの夜」、池澤夏樹が訳したヴォネガットの「母なる夜」....、日本の作家たちは、どこに魅せられ翻訳したのか? 我が国の近代小説の幕開けは、西欧文学の翻訳から始まったといっても過言ではない。多くの作家たちが、西欧の価値観や様々な技法に接し、挑発されて、独自の新しい文学の世界を切り拓いていった。さらに戦後から現代にかけては、より多様で、そしてより多彩な翻訳文化が開花し、数々の作家が、創作や翻訳に独自性を主張した作品を発表している。本書は、近代から現代にわたる日本の作家たちが、自ら翻訳した様々な作品を取り上げ、その変遷と背景を探り、「翻訳」小説の本質に迫ってゆく。

目次

序「差異」と「同一化」の間で---村上春樹とレイモンド・カーヴァー
I 戦前に訳された世界文学
語りの戦略 トマス・ハーディー「グリーブ家のバアバラの話」 谷崎潤一郎 訳
二重の意味を読む エドガー・アラン・ポオ『アモンティリャアドの酒樽』 佐藤春夫 訳
換骨奪胎の才 テオフィル・ゴーチエ『クラリモンド』 芥川龍之介 訳
手段としての翻訳 アンドレ・ジイド『アンドレ・ワルテルの手記』 三好達治 訳
比喩とエスプリを訳す ジャン・コクトー『大胯びらき』 堀 辰雄 訳
漢籍読と翻訳 オルダス・ハックスリー『クラックストン家の人々』 中島 敦 訳
エリーザベトの物語 テーオドール・シュトルム『林檎みのる頃』 立原道造 訳
ファンタジーを訳すには ジュール・シュペルヴィエル『沖の小娘』 堀口大學 訳
II 戦後に訳された世界文学
夢魔とユーモアを訳す フランツ・カフカ『田舎医者』 長谷川四郎 訳
アンチ・ヒーローの系譜 バーナード・マラマッド『レンブラントの帽子』 小島信夫 訳
都市幻想の叙法 ジェラール・ド・ネルヴァル『十月の夜』 中村真一郎 訳
短篇翻訳作法 ヘンリー・ミラー『愛と笑いの夜』 吉行淳之介 訳
イノセントな語り ウィリアム・サロイヤン『我が名はアラム』 三浦朱門 訳
人称代名詞の彼方に トルーマン・カポーティ『カメレオンのための音楽』 野坂昭如 訳
「声」の再生 ガートルード・スタイン『三人の女』 富岡多惠子 訳
音楽の予感 ローベルト・ムージル『和 合』 古井由吉 訳
風通しのよい文体 カート・ヴォネガット『母なる夜』 池澤夏樹 訳
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