変分原理と物理学

変分原理と物理学

著者名 鈴木 増雄
発行元 丸善出版
発行年月日 2015年12月
判型 A5 210×148
ページ数 218ページ
ISBN 978-4-621-30009-1
Cコード 3042
NDCコード 426
ジャンル 物理学 >  物理数学

内容紹介

本書は、物理科学月刊誌「パリティ」の同名連載講座を単行本化したもの。自然法則のとらえ方について考えてみると、それにはさまざまな形式があるが、それらを大きく分けると、微分方程式のような局所的な表現形式と、積分で表されるような大局的な定式化となる。テーマである変分原理は後者の視点に立つものであり、自然法則の直観的な捉え方を与える「もっとも美しい形式」といえよう。本書は、「最小時間の原理」といった素朴な問題からはじまり、力学、電磁気学、場の理論など、さまざまな対象・分野に現れ、最先端の物理学にもつながっている。著者の研究成果にも交えながらわかりやすく解説している。物理を学ぶ全ての人に必要な内容の一冊。

目次

第1章 自然法則のとらえ方と変分原理:大局的視点
 1.1 変分法とは
 1.2 制約条件つきの変分問題とラグランジュの未定係数法
 1.3 簡単な例――等周問題
 1.4 大局的視点と局所的視点
 1.5 物理と価値観――可逆と不可逆
第2章 光・波動の変分原理と変分学の逆問題
 2.1 幾何光学の変分原理
 2.2 波動と変分原理
 2.3 変分額の逆問題
 2.4 物理法則が多変数2階偏微分方程式で表される場合のオイラーの方程式とその応用
 2.5 拡散方程式の代数的解法と変分原理からみた解の特徴
 2.6 ドリフトをともなう拡散現象への拡張とリー代数的解法
 2.7 アインシュタインの逆転の発想
第3章 力学法則と変分原理
 3.1 力学の変分原理にはなぜラグランジアンか?
 3.2 変分原理による力学の法則の定式化の利点
 3.3 一般座標とラグランジュの運動方程式
 3.4 ハミルトン‐ヤコビの理論
 3.5 理論の普遍的な構造と法則の類似性
 3.6 エネルギーの保存則とオイラーの方程式の中間積分
 3.7 粒子の軌道に関する変分原理と光学のフェルマーの定理
 3.8 重力中での粒子の軌道
 3.9 屈折率n=n(y)の媒質中での光の経路
 3.10 特殊相対論的力学と変分原理
第4章 場(電磁場)の理論と変分原理
 4.1 マクスウェルの電磁場理論
 4.2 マクスウェル方程式とゲージ変換
 4.3 マクスウェル方程式のローレンツ不変性
 4.4 場の理論と変分原理
 4.5 電磁場理論の変分原理
第5章 量子解析と経路積分(経路和)
 5.1 量子解析
 5.2 テイラー展開(高次量子微分dnf(A)/dAn)
 5.3 量子解析の有益な公式とBCH公式への応用
 5.4 指数積分解とST変換(経路和の方法)
 5.5 ファインマンの経路積分と量子化
 5.6 経路積分と古典‐量子対応
第6章 ファインマンの経路積分
 6.1 ファインマンの経路積分からシュレーディンガー方程式を求める
 6.2 シュレーディンガー方程式から経路積分表式を求める
 6.3 ファインマンの経路積分の真髄
 6.4 自由粒子の経路積分
 6.5 調和振動子の経路積分とフーリエ級数による評価
 6.6 確率振幅とハミルトニアンの固有関数,固有値との関係
 6.7 強制調和振動子の確率振幅
 6.8 経路積分のさまざまな応用
第7章 熱力学の変分原理と相反法則
 7.1 熱利用の歴史
 7.2 熱エネルギーと熱力学のの第1法則
 7.3 熱力学の第2法則(エントロピー増大則)
 7.4 熱力学の相反法則
 7.5 相平衡とクラペイロン‐クラウジウスの式(2相共存線)
 7.6 相転移の変分理論(ランダウの2次相転移の減少論)
 7.7 非対称な自由エネルギーを用いた相転移の変分理論
 7.8 熱力学の広がり
第8章 統計力学と変分原理
 8.1 統計力学は熱力学をミクロに解釈することから始まる
 8.2 カノニカル分布(正準分布)
 8.3 ミクロカノニカル分布,等重率の原理,およびボルツマンの原理
 8.4 ボルツマンの古典分布
 8.5 ヘルツホルムの自由エネルギーのミクロな表式
 8.6 カノニカル分布の密度行列による表現とエントロピーの公式
 8.7 よく使われる統計力学の変分公式とその応用
 8.8 変分原理による平均場理論の定式化
 8.9 統計力学の特徴
第9章 非平衡統計力学と変分原理
 9.1 不可逆性とエントロピー生成
 9.2 線形非平衡現象におけるエントロピー生成のミクロな理論
 9.3 非線形非平衡現象における積分形のエントロピー生成最小の原理
 9.4 個別変分原理とその応用に向けて
 9.5 散逸ダイナミクスの変分原理
 9.6 緩和現象における不可逆性・エントロピー生成
 9.7 おわりに
補遺1 熱の変化量とエントロピー生成
補遺2 多変数の変分法におけるオイラーの方程式(2.27)の導出
補遺3 リー代数(リー群)と指数積公式(2.46)
補遺4 曲率半径と曲率
補遺5 指数演算子eA+Bのテイラー展開に関する従来の導出法
補遺6 べき演算子Amの量子微分dAm/dAの導出
補遺7 BCH公式と式(5.32)の導出
補遺8 高次の量子微分の導出
補遺9 交換子[f(A),g(B)]の公式(5.24)の応用例
補遺10 トロッター公式の収束性(有界な演算子の場合)
補遺11 指数演算子eA+xBのテイラー展開に関する従来の導出法
補遺12 スピングラスの臨界現象(非線形磁化率x2の発散)
補遺13 ランジュバン方程式(9.1)の解と式(9.7)の導出
補遺14 いままでの非平衡エントロピーの定義とエントロピー生成理論の問題点  

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