内容紹介
放射線の人体への健康影響は、実験室での研究だけでは解明できない。人体に関する知見をより正確に得るためには、被曝事例の分析が必須。 本書では、内科の医師として原爆被爆者やチェルノブイリ原発事故の調査に長年携わってきた著者が、直接見聞きした情報と科学的知見をもとに、「放射線の健康影響とはどのようなものか」、「原子力災害による健康影響にどう対応すべきか」を具体的に解説する。 放射線の健康影響を科学的に理解し、さらにその先を見通す指針となる一冊。
目次
第1部 災害事例からみる放射線の健康影響
1 放射線を浴びると人はどうなるか
1.1 自然放射線の場合
1.2 放射線と放射能――ベクレルとシーベルト
1.3 原子力災害の場合
1.4 医療被曝
2 原爆放射線――外部被曝の影響
2.1 原爆の急性影響
2.2 原爆の晩発影響
2.3 原爆被爆者調査と国際的合意
3 チェルノブイリ原発事故――内部被曝と精神的影響
3.1 事故の概要
3.2 チェルノブイリ原発事故の調査開始時代
3.3 科学的に正しい調査結果を求めて
3.4 国際機関および被曝国合同の調査結果のまとめ
3.5 初期の報道と調査結果の比較
3.6 科学的な不確実性について
4 東海村JCO臨界事故――周辺住民の心のケア
4.1 事故の概要
4.2 被曝の影響
5 スリーマイル島原発事故
5.1 事故の概要
5.2 避難措置
5.3 周辺住民および作業従事者の被曝
6 ビキニ核実験
6.1 マーシャル諸島の住民
6.2 福竜丸の船員
7 世界の核実験による放射性降下物
7.1 UNSCEARによる報告
7.2 動物の甲状腺内ヨウ素
第2部 原子力災害の健康影響にどう対応するか
8 被曝者の防護、救済、援護
8.1 災害の発生時
8.2 事故収束直後から長期対策を考える状況
8.3 長期計画
9 核テロ
9.1 原子爆弾
9.2 原発への攻撃
9.3 高線量の線源によるテロ
9.4 汚い爆弾
9.5 放射性物質の広範な散布
9.6 放射性物質を使った個人の殺人
9.7 放射線によって誘発される健康影響の要約
10 サイエンスとポリシー
10.1 国際的科学的合意(サイエンス)――科学的な事実
10.2 科学の限界と社会――科学者の責任
10.3 放射線の健康影響に対応する考え方(ポリシー)
10.4 放射線のポリシーとサイエンスの架け橋――1999年,一つの国際会議
10 サイエンスとポリシー
補遺――福島原発事故について