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今月のキーワード

暗黒エネルギー / 冷たい暗黒物質 / アトラクターベイシン

●暗黒エネルギー[dark energy]
宇宙のエネルギー密度のおよそ7割を占める未知のエネルギー体。暗黒物質のような局在する粒子とは違い,空間全体にわたってほぼ一様に存在していると考えられ,現在の宇宙膨張を加速させる要因になっている。暗黒エネルギーの候補として,アインシュタインが導入した宇宙定数(真空のエネルギー)が考えられるが,宇宙膨張を記述する一般相対性理論そのものが宇宙論的な大スケールで修正されることで暗黒エネルギーを説明できる可能性も残されており,その正体・性質については今後の詳細な観測から解き明かす必要がある。(p.38「バリオン音響振動は宇宙のものさし」)

●冷たい暗黒物質[cold dark matter]
宇宙のエネルギー密度の約3割を占める未知の物質。その起源は未発見の素粒子と考えられているが,質量をもった冷たい粒子という以外,あまりよくわかっていない。だが,冷たい暗黒物質のおかげで,星や銀河の種であるバリオンは再結合後,急速に重力収縮し,観測でみられる銀河分布の大規模構造を形成したと考えられ,その存在は観測的にもゆるぎないものとなっている。(p.38「バリオン音響振動は宇宙のものさし」)

●アトラクターベイシン[attractor basin]
力学系とよばれる時間発展微分方程式系における解のふるまいは,位相空間内の解軌道として表現される。とくに散逸力学系において,解は,時間無限大の極限で初期条件に依存した有限領域(アトラクター)に吸収されていく。各アトラクターに吸収される初期条件の集合を,アトラクターベイシンとよぶ。アトラクターベイシンとアトラクターの関係は,いわば,四方を分水嶺に囲まれた地域(ベイシン=盆地)と,盆地に降ったすべての雨を吸い込む湖(アトラクター)との関係にたとえることもできる。ただし盆地のイメージからかけ離れた複雑なかたちのアトラクターも存在する。(p.58「粉体仕様の熱力学理論」)

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