SDGsと化学

SDGsと化学

元素循環からのアプローチ
著者名 春山 哲也 編著
高辻 義行
村上 直也
前田 憲成
村上 恵美子
発行元 丸善出版
発行年月日 2022年12月
判型 A5 210×148
ページ数 224ページ
ISBN 978-4-621-30775-5
Cコード 3058
NDCコード 570
ジャンル 化学・化学工学 >  化学一般・基礎化学 >  環境・グリーンケミストリー
化学・化学工学 >  工業化学

内容紹介

 元素循環化学は、SDGs の達成に寄与するものとして近年関心が増している。

 本書では、元素循環の概念に基づいた研究や技術である、

  「大気・水」

  「人間の活動で排出される二酸化炭素」

  「太陽光エネルギーを用いる光触媒」

  「微生物の資化の利用」

を取り上げ、SDGsへ向けた化学からのアプローチを解説。化学が持続可能な社会のために何ができるのか、

その研究によりどのような未来を創ることが可能となるのか展望する。

 また、新しい技術研究を支える社会基盤、SDGs達成にむけての行政の在り方を、

国の「SDGs未来都市・自治体SDGsモデル事業」に選定されている環境産業都市・北九州市の例を取り上げ解説する。

環境技術に興味を抱く学生や環境問題・SDGsに取組む企業・自治体に、本書は課題解決へのヒントとなる一冊である。

目次

1章 化学とSDGs
  1.1 化学と社会
  1.2 グリーンケミストリーとサスティナブルケミストリー
  1.3 持続可能な開発目標:SDGs
  1.4 エネルギー・環境イノベーション戦略(NESTI 2050)
  1.5 化学で達成を目指すSDGs
  1.6 元素の循環
  1.7 本書の概要

2章 大気と水 ―資源化・循環
  2.1 地球の大気と水
  2.2 窒素と水の資源化:NとHの元素循環
  2.3 大気成分の78 %を占める窒素によるアンモニア製造と元素循環
  2.4 一世紀前から現在まで工業的なアンモニア合成を担っているハーバー-ボッシュ法
  2.5 低エネルギー型アンモニア合成反応:研究開発の広がり
     2.5.1 ハーバー-ボッシュ法と新触媒開発
     2.5.2 電解合成反応
     2.5.3 相界面反応
     2.5.4 低エネルギー型アンモニア合成反応の研究開発最前線  
  2.6 酸素と水の資源化:O とH の元素循環
     2.6.1 酸素ラジカルは残留しない  
     2.6.2 Radical Vapor Reactor(RVR)  
     2.6.3 電子スピン共鳴分光法による活性種の定量  
     2.6.4 Radical Vapor Reactor(RVR)でできること  
     2.6.5 酸素ラジカル・活性酸素の研究開発最前線  
  2.7 大気と水の資源化によるN とO とH の元素循環
          コラム-1 雷と豆と豊作  
          コラム-2 燃料としてのアンモニア  
          コラム-3 溶けにくい気体と溶ける気体  
          コラム-4 オーロラの色はエネルギーの色  
          コラム-5 プラズマのエネルギーとプラズマの発光スペクトル  

3章 二酸化炭素と地球温暖化 ─排出制限・貯蔵・変換
  3.1 人類の活動と気候変動
  3.2 温室効果ガスと地球温暖化
     3.2.1 メタン  
     3.2.2 一酸化二窒素  
     3.2.3 フロンガス  
     3.2.4 二酸化炭素  
  3.3 二酸化炭素の排出量削減技術
     3.3.1 二酸化炭素の回収・貯蔵  
     3.3.2 人工光合成  
  3.4 カーボンニュートラルとカーボンリサイクル
  3.5 二酸化炭素を資源化する循環可能化学の最先端研究
     3.5.1 二酸化炭素の電気化学的還元  
     3.5.2 電極の表面形状および結晶面による二酸化炭素電解還元特性への影響
     3.5.3 複数金属種により構成された電極による二酸化炭素電解還元
     3.5.4 計算化学による結合エネルギー計算  
  3.6 二酸化炭素を資源化する循環可能化学の役割
          コラム-6 温室効果ガスと地球温暖化係数 
          コラム-7 ファラデー効率  

4章 光触媒 ─環境浄化・人工光合成
  4.1 エネルギーとしての太陽光の利用
     4.1.1 光の利用  
     4.1.2 光とは何か  
     4.1.3 光子のエネルギーと個数
     4.1.4 最も身近な光:太陽光  
  4.2 光エネルギーと化学反応:身の回りの光化学反応
     4.2.1 光化学反応  
     4.2.2 身の回りの光化学反応  
  4.3 光触媒のしくみ:光と半導体を用いた触媒反応
     4.3.1 光触媒について  
     4.3.2 半導体  
     4.3.3 半導体上における光触媒反応の進行過程  
     4.3.4 光触媒が進行するための条件  
     4.3.5 光触媒の効率,量子効率  
  4.4 光触媒による環境浄化:光で快適な環境をつくる
     4.4.1 環境浄化の光触媒  
     4.4.2 二酸化チタン   
     4.4.3 環境浄化用可視光応答型光触媒  
  4.5 光触媒による資源循環:太陽光と大気と水から燃料をつくりだす
     4.5.1 水分解用光触媒  
     4.5.2 光触媒による二酸化炭素還元反応  
     4.5.3 半導体光電極  
     4.5.4 太陽光水素製造の実用化に向けて
     4.5.5 光エネルギーを用いた元素循環
          コラム-8 太陽熱温水器 
          コラム-9 光触媒粒子の光吸収を調べるには
          コラム-10 有機物分解反応のモデル計算
          コラム-11 太陽の光は地球上のどこでも同じか? 

5章 微生物の利用 ─分解・環境保全・資源産生
  5.1 地球上の微生物と生態系とのかかわり
     5.1.1 地球カレンダーからみた環境汚染問題
     5.1.2 経済活動の生態系へのかかわり  
     5.1.3 ヒトの社会活動を支える微生物の役割
  5.2 元素循環における微生物の役割
     5.2.1 微生物の代謝と炭素循環
     5.2.2 窒素循環
     5.2.3 硫黄循環およびリン循環
  5.3 環境に負荷を与えるさまざまな化学物質
     5.3.1 ダイオキシン類  
     5.3.2 ポリ塩化ビフェニル類  
     5.3.3 その他のハロゲン化合物 
     5.3.4 内分泌かく乱物質  
     5.3.5 多環芳香族炭化水素類 
     5.3.6 化石燃料由来プラスチック  
     5.3.7 重金属化合物  
     5.3.8 医薬品・パーソナルケア製品関連物質
  5.4 ゲテモノ食い微生物:分解菌,分解反応などの機能
     5.4.1 資化と共代謝,集積培養  
     5.4.2 単一系微生物と複合系微生物  
     5.4.3 バイオレメディエーション  
     5.4.4 ベンゼン環開裂反応 
     5.4.5 トルエンとトリニトロトルエンの微生物分解反応の違い
     5.4.6 ハロゲン化合物からのハロゲン脱離反応
     5.4.7 重金属汚染浄化にかかわる結合反応と変換反応 
     5.4.8 ポジティブスクリーニングとネガティブスクリーニング
     5.4.9 機能遺伝子の特定手法  
  5.5 資源生成,環境保全に役立つ微生物:Waste to Value and Clean
     5.5.1 バイオマスの種類 
     5.5.2 バイオマスからのエネルギー生成 
     5.5.3 バイオエタノール生成  
     5.5.4 微細藻類を用いたバイオディーゼル生成  
     5.5.5 発酵細菌による水素生成  
     5.5.6 古細菌(アーキア)によるメタン生成 
     5.5.7 下水汚泥の嫌気消化  
     5.5.8 下水汚泥のその他の資源化手法  
     5.5.9 下水処理場における排水処理  
     5.5.10 微生物燃料電池システム  
     5.5.11 乳酸およびポリヒドロキシ酪酸の生成  
  5.6 微生物機能の向上化を目指した先端研究
     5.6.1 大腸菌の水素生産高度化のための遺伝子工学技術
     5.6.2 代謝経路デザインによる大腸菌の水素ガス生産の高度化
     5.6.3 触媒活性の向上化による大腸菌の水素ガス生産の高度化
     5.6.4 細菌間相互作用に着眼した下水汚泥の嫌気消化の促進
     5.6.5 下水汚泥のメタン菌高集積化による二酸化炭素変換の促進
     5.6.6 微生物機能とSDGs  
          コラム-12 海は地球の母

6章 SDGs を実現する社会行政
  6.1 脱炭素社会と循環型社会・SDGs の黎明:世界の動向
  6.2 循環型社会・SDGs と行政:環境先進都市・北九州市の行政
     6.2.1 エネルギー戦略  
     6.2.2 イノベーション戦略  
  6.3 循環型社会構築の技術育成:SDGs と資源循環
     6.3.1 カーボンリサイクル  
     6.3.2 プラスチックリサイクル  
     6.3.3 セメント  
     6.3.4 カーボンニュートラルガス  
     6.3.5 鉄 鋼  
  6.4 循環型社会の社会基盤形成
     6.4.1 法規制・制度づくり  
     6.4.2 経済性:製造者側  
     6.4.3 経済性:消費者側  
     6.4.4 技術革新  
     6.4.5 啓 発  
  6.5 SDGs 達成に向けた北九州市の貢献
     6.5.1 技術開発支援  
     6.5.2 導入に向けた社会環境整備支援  
  6.6 元素循環のSDGs 目標達成への北九州市の貢献
          コラム-13 気候変動にかかわる要因  
          コラム-14 何がゼロ?  
          コラム-15 マイクロプラスチック  
          コラム-16 マイノリティを忘れないで  

7章 化学が拓くSDGs の展望
  7.1 「晴耕雨読」の考え方
  7.2 「塵も積もれば山となる」の考え方
  7.3 社会の需要とESG
  7.4 本書で述べたこと
  7.5 化学が拓くSDGs
  7.6 POSITIVE とPASSIVE
  7.7 おわりに

参考資料(元素を循環可能な資源とするための工学人育成:循環可能化学の教育)
引用・参考文献

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