構造物性物理とX線回折

構造物性物理とX線回折(電子書籍)

著者名 若林 裕助
発行元 丸善出版
発行年月日 2017年10月
NDCコード 428

内容紹介

本書は“普通の物質の普通の性質”をはっきりさせることを第1の目標とする。そのうえで、電子間の相互作用がどのような効果を生むかを概観する。それらを構造の観点から観測した際にどう見えるか、まで記述を進める点が本書の特徴である。 本書の前半は、格子系に注目した固体物理の教科書である。直接は構造と関係しなくても、知っておく必要があることについては網羅的にふれられている。個々のステップをしっかり説明することより、構造という観点で見た時に、どのような理解が得られるかを概観することを狙った記述とした。後半はX線回折理論による構造観測法の解説を行う。固体物理の研究に必要な理解を得ることを目標とし、この目的のためであればほかの書籍を参照する必要がない完全性を目指した。実際に回折実験を用いて物性研究をする者が知るべき内容を示すため、試料によるX線の吸収や多重散乱など、“汚らしい”現象についても述べる。

目次

第I部 構造に着目した物性物理
 第1章 原子間に働く力
  1.1 原子とイオン
  1.2 イオン結合
  1.3 ファンデルワールス力
  1.4 共有結合
  1.5 金属結合
  1.6 水素結合
 第2章 熱的性質
  2.1 熱振動とフォノン
  2.2 動力学行列を用いた表記
  2.3 格子比熱
  2.4 熱膨張
  2.5  固体の融解
 第3章 電気的性質
  3.1 結晶に対するバンド理論
  3.2 バンド構造と結晶構造
  3.3 イオンの価数が構造に及ぼす影響
  3.4 飛び移り積分
  3.5 金属と非金属
  3.6 誘電性
 第4章 磁気的性質
  4.1 軌道角運動量と原子の変形
  4.2 結晶場
  4.3 遍歴電子の磁性
  4.4 交換相互作用
  4.5 さまざまな磁気構造
  4.6 磁気秩序由来の格子歪み
 第5章 相転移
  5.1 ランダウの自由エネルギー
  5.2 二次相転移
  5.3 秩序変数の空間依存性と相関長
  5.4 一次相転移
  5.5 二相共存状態
  5.6 相境界の動き
  5.7 実験との対応
 第6章 構造に対する摂動
  6.1 加圧 
  6.2 化学置換
  6.3 薄膜化
第II部 構造観測法―X線回折理論
 第7章 結晶からのX線の回折
  7.1 電子によるX線の散乱
  7.2 結晶からのX線の散乱
  7.3 逆格子
  7.4 エヴァルト球
  7.5 原子散乱因子と構造因子
  7.6 畳み込みとフーリエ変換の積
  7.7 結晶の外形によるブラッグ反射形状の変化
  7.8 運動学的回折理論と動力学的回折理論
 第8章 現実の結晶に対する回折実験
  8.1 現実の結晶に対する単純なモデル
  8.2 多重散乱
  8.3 消衰効果
  8.4 吸収
  8.5 装置分解能
  8.6 ローレンツ因子
  8.7 偏光因子
  8.8 コヒーレンス
 第9章 構造解析
  9.1 三次元周期構造
  9.2 構造解析で用いる回折データ
  9.3 構造解析からわかること・わからないこと
  9.4 熱振動・ 原子位置の乱れ
  9.5 双安定構造と構造の乱れ
  9.6 構造解析の結果に基づく物性物理の議論
 第10章 超格子反射
  10.1 周期的な原子変位(位相変調)
  10.2 化学的な変調(強度変調)
  10.3 逆格子点に対して強度が非対称に出る超格子反射
  10.4 ピーク幅と相関長
  10.5 超格子反射の測定に基づく物性物理の議論
 第11章 表面構造解析
  11.1 表面からの散乱――CTR散乱
  11.2 表面構造とCTR散乱の定性的な関係
  11.3 表面構造の解析法
  11.4 表面構造解析に基づく物性物理の議論
 第12章 散漫散乱
  12.1 結晶の乱れからの散乱
  12.2 フォノンからの散乱(熱散漫散乱)
  12.3 点欠陥に由来する散乱(ホアン散乱)
  12.4 化学的な濃度揺らぎに起因する散乱
  12.5 解析の手法
  12.6 散漫散乱測定に基づく物性物理の議論
付録A CDWと格子変調の相互作用
付録B実空間と逆空間との接続
  B.1 ミラー指数
  B.2 ブラッグの法則

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