内容紹介
石油・金属・食糧が連動して値上がりを始めた。投機的要因、環境要因、資源枯渇要因が挙げられるが、同時に、温暖化対策における国際協調の方向が、資源獲得のためのナショナリズムと、資源を売る立場のナショナリズムの攻めぎ合いによって乱されている。本書では資源枯渇について、技術的な対処の方向づけと限界を明らかにし「産業社会の持続可能性の究極の条件は何か」を考え、その究極の可能性から逆算して、現代の戦略を具体的に明らかにする資源環境論。
目次
プロローグ
第1章 見えてきた資源枯渇の構図
1 エネルギー、金属、食糧の価格連動
2 枯渇後までを展望するレアメタル政策
第2章 ピークオイルが見えてきた
1 ハバード曲線
2 コリン・キャンベルの予測
3 石油価格の高騰をどのように説明するか
4 メタンハイドレート
5 メタンガス噴出の危険
第3章 ベネズエラの石油と政権
1 埋蔵量の脅威
2 チャベス政権の政策
3 チャベスへの忠告
4 資源保有国のナショナリズム
第4章 産油国の貧困
1 石油国家の停滞
2 石油依存国家は民主主義の成立を妨げる
3 イスラム教社会の近代化はありうるか
4 ロシアは先進国か
第5章 資源ナショナリズム
1 ブラッド・ダイヤモンド、それは事実か
2 なぜ「子ども兵」が利用されるか
3 中国がスーダンの石油を買う
4 技術提携の可能性
5 ナショナリズムとは何か
6 資源ナショナリズムの寿命
7 資源のある国は資源のない国に移行中
第6章 金の値崩れを防ぐ方法
1 金属の分類
2 希少である、すなわち環境破壊的である
3 金属資源とエネルギー資源の違い
4 枯渇のタイプの違い
5 枯渇を回避する使用形態
6 枯渇と開発の鬼ごっこ
第7章 二一世紀のキーワードは「水不足」
1 資源としての水
2 温暖化と淡水の供給量
3 持続的な発展に対する否定的な影響
4 「ダム難民」問題
5 水の使い道
6 コチャバンバの実験
7 公営と民営の使い分け基準
8 サンドラ・ポステルの提案
9 日本の水
第8章 農業はエネルギー資源産業となりうるか
1 ソーラー革命
2 農業にとっての水という絶対的限界
3 穀物生産の分水嶺
4 農業人口
5 なぜ飢える人がいるのか
6 政府の失敗
7 四七倍の地球が必要だ
8 再生可能エネルギー
第9章 森林を保つ方法
1 ほとんど原罪
2 森林消滅の原因
3 森林と人口
4 日本の林産業
5 合理的な管理の主体――『夜明け前』を未来に見る
第10章 資源としての生物種と特許制度
1 生物多様性とは何か
2 多様性=持続可能性といえるだろうか
3 多様性の実用的な擁護論
4 研究者の視点と生活者の視点
5 生物特許の問題
第11章 需要と供給、必需と奢侈
1 消費の拡大は何のために
2 最低水準の集団の幸福度をその国の幸福指数とする
3 犯罪者数とエコロジカル・フットプリントの相関
4 豊かになる仕方を間違えてしまった
5 経済学者の自己保存本能
第12章 人間という資源――持続可能性に対応する責任主体の形成
1 目的について
2 政治にとって目的とは何か
3 エネルギー消費の増大期
4 日本の研究開発の特徴
5 プログラム・オフィサーの導入
エピローグ