漸近的安全性による重力の量子論へのアプローチ

漸近的安全性による重力の量子論へのアプローチ

著者名 太田 信義
発行元 丸善出版
発行年月日 2021年07月
判型 A5 210×148
ページ数 224ページ
ISBN 978-4-621-30632-1
Cコード 3042
NDCコード 421
ジャンル 物理学 >  量子力学

内容紹介

宇宙における古典的な物理現象は、アインシュタインの一般相対論で概ね計算で説明がつくようになった。しかし、宇宙初期のビッグバン特異性を理解するには量子力学が必要である。もし、この2つの理論が統合できれば、重力の量子論(量子重力理論)は完成するのだが、課題が残り未完成の理論となっている。これまで多くの研究者がその課題に挑み、いくつもの理論が提唱されてきた。なかでも超弦理論やループ重力理論は有力候補と考えられてきたが、近年はあまりめぼしい進展が得られていない。そこで現在、別のアプローチ方法のひとつとして、「漸近的安全性」(Asymptotic Safety)に注目が集まっている。

本書では、漸近的安全性の概念を用いて量子重力理論にアプローチする。基礎から丁寧に幅広く解説する一方で、現時点での問題点も明確に提示し、今後この方向に興味を持ち、その問題に挑戦する学生や研究者に向ける一冊。

目次

第1章 はじめに
 1.1 なぜ重力の量子論は必要なのか
 1.2 場の量子論
 1.3 場の量子論の困難
 1.4 超弦理論の登場
 1.5 場の量子論としての量子重力理論
 1.6 本書の内容,他の量子重力理論へのアプローチ

第2章 経路積分と有効作用
 2.1 量子力学における経路積分
 2.2 場の量子論における経路積分
 2.3 場の量子論における生成汎関数
 2.4 スカラー場の例
 2.5 有効作用と1 粒子既約グラフ
第3章 摂動論による重力理論のくりこみ可能性
 3.1 平坦時空の周りの揺らぎ
 3.2 量子化
 3.3 Slavnov-Taylor恒等式
 3.4 くりこみ可能性

第4章 汎関数くりこみ群方程式と量子論
 4.1 厳密くりこみ群方程式
 4.2 漸近的安全性
 4.3 近似法

第5章 汎関数くりこみ群方程式による重力の量子論
 5.1 背景場の方法
 5.2 一般相対論の1 ループ
 5.3 切断法
 5.4 スケーリング指数
 5.5 III型切断とpure cutoff

第6章 f(R)重力
 6.1 正曲率のアインシュタイン空間上のf(R)重力
 6.2 くりこみ群方程式
 6.3 スペクトル和
 6.4 厳密解
 6.5 大域的数値解
 6.6 異なる切断による多項式解
 6.7 双曲面上のf(R)重力

第7章 計量のパラメトリゼーションとゲージ依存性
 7.1 計量のパラメトリゼーション
 7.2 アインシュタイン重力
 7.3 高階微分重力

第8章 任意次元における一般背景時空上の高階微分理論
 8.1 4階微分重力
 8.2 作用の2次展開
 8.3 汎関数くりこみ群方程式によるベータ関数の導出
 8.4 4次元
 8.5 4次元近傍
 8.6 3次元
 8.7 理論のユニタリー性

第9章 物質場と結合した重力理論
 9.1 重力場
 9.2 重力FPゴースト場
 9.3 実スカラー場
 9.4 ベクトル場
 9.5 ディラック場
 9.6 重力理論のベータ関数
 9.7 摂動近似の固定点解析
 9.8 U(1)電荷のベータ関数
 9.9 ヒッグス場の4点結合

第10章 物理的応用
 10.1 ブラックホール
 10.2 有効作用の計算
 10.3 漸近的安全性における諸問題

付録A 公式
    A.1 任意背景場における曲率の展開 / A.2 York分解とLichnerowiczラプラシアン
付録B 熱核による有効作用の評価
    B.1 熱核展開によるトレースの計算 / B.2 熱核係数 / B.3 球面上の場合 /
    B.4 定曲率空間における熱核展開 / B.5 スカラー / B.6 ベクトル /
    B.7 テンソル / B.8 非局所的熱核展開 / B.9 双曲空間上のラプラス演算子のスペクトル
付録C 一般次元の一般背景場上の量子場に関する2次項の公式
    C.1 UとV / C.2 トレース
付録D f(R)理論とアインシュタイン重力とスカラー場が結合した理論の同等性
    D.1 古典的同等性 / D.2 量子論的同等性
付録E 文献解説

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