内容紹介
NHK のスイスでの自殺幇助ドキュメンタリー番組放映後、「死ぬ権利」、「安楽死」を認めろという声が大きくなった。しかし、「死ぬ権利」があるからといって、安楽死が可能になるわけではない。本書は、「温室に並べられた鉢植え植物のようには生きたくない」と言っていた認知症のオランダ人の女性を取り上げる。その女性を主治医が安楽死させ、これがオランダで安楽死法成立後、初めて医師が訴追される案件となった。女性はこうなったら自分の命を終わりにしてほしいという医師への「事前意思表示書」を書いていた。医師はこの表示書に従った――にもかかわらず、検察はなぜ医師を訴追したのか。最高裁判所はなぜこの医師を無罪としたのか。現地取材を含め資料を丁寧に追い、オランダ安楽死法の原理を明らかにする。
目次
■重要語句とオランダの安楽死審査手続き
プロローグ
I オランダ認知症患者安楽死裁判
安楽死審査委員会裁定
ハーグ地方裁判所判決
検察庁上訴
最高裁判所判決
II 認知症患者安楽死裁判の批判的考察――問題の所在と展開
事前意思表示書か「いま」の意思か
具体的な要請か、事前意思表示書か
安楽死審査委員会
医療懲戒委員会
最高裁判所
事前意思表示書か「いま」の意思か――オデュッセウスの契約
先行する意思
「いま」の意思
オデュッセウスの契約
福生病院事件
死ぬ権利――ビジネスとしての安楽死・ドイツ
「耐えがたい苦しみを確信すること」と「思いやり」
ビジネスとしての安楽死―—ドイツ
ドイツ連邦憲法裁判所判決
協働の意思決定
人生終焉の法
持続的な深いセデーション(CDS)――ソフトな安楽死・フランス
バンサン・ランベール事件
CDS(持続的な深い鎮静)
CDSの新たな権利
CDSと安楽死
エピローグ
あとがき
III 資料
資料1 2016-85案件 安楽死審査委員会裁定
資料2 ハーグ地方裁判所判決(抜粋)
資料3 最高裁判所判決(抜粋)
資料4 世界の終末期の図表
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▼ 補足資料
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