内容紹介
南西ケニアの農牧民であるキプシギス民族の伝統的な慣行である「女性婚」(Woman marriage:女性同士の結婚)――「男性/女性」の区分も実体よりもむしろ範疇だとする認識に立脚し、夫・妻・父親の概念さえも相対化して、跡取り息子のいない女性の老後の福祉を実現してきた。前著『「統治者なき社会」と政治』―キプシギス民族の近代と前近代を中心に』に続き、本書では「女性婚」等、「結婚」に類似する諸制度を核に、キプシギスの一見奇異なジェンダーの諸相を内側から記述・分析し、その文化に固有な社会的な意味を掴み出す。
目次
第一章 性と「人間」という論理の彼岸/第二章 キプシギスの性観念の歴史と強姦/第三章 父系の逆説と、「女の知恵」としての私的領域―キプシギスの「家財産制」と近代化/第四章 タプタニがやって来る―女同士の結婚の「夫」を生きる/第五章 女性婚と開発人類学/第六章 シングル・マザーと二〇一〇年ケニア新憲法/第七章 アフリカとLGBTと婚姻制度の行方