内容紹介
英国の手による植民地化と、ケニア独立を二つの突出した変化のピークとして展開されてきた、キプシギス社会の現代史。政治環境が激変する一連の過程で、キプシギスの人々は、国家的な中央集権政府による統治に対して頑強に抗いつつ、一方ではその統治制度を徐々に咀嚼・受容して、ついに現在の姿に至る実に大きく劇的な社会と文化の変容を導いた。では、彼らはそれをいったいどのようにして遂げたのだろうか。三十九年間、三十八次にわたって現地参与観察調査を続けてきた筆者が、錯綜する現実の諸事象から一貫性のある展望を切り開くための基盤作りを目指して、“人類学的思考”の翼を縦横無人に羽撃かせる。
目次
序章「統治者なき社会」研究の展望/第1部 言語と民族・国家、第一章 スワヒリ語による国民形成と植民地近代性論――その可能性と不可能性をめぐって、第二章 キプシギスの殺人事件から見た国家と民族/第2部 行き交い、ぶつかり合う時間と時代、第三章 マサイのビーズの腕時計――或いは、ユートピア思想のワクチン、第四章 走りそびれたランナーたち/第3部 老人の権力――「統治者なき社会」はあるか、第五章 挨拶・握手行動の身体論と政治学、第六章 通過儀礼としてのイニシエーションの論理