内容紹介
薬理学の本質をコンパクトに記すこと、医学部(および看護学部)学生にとって必要な“ベッドサイドの薬理学”の教育を意図し、基礎医学的側面からの薬理学と臨床医学的側面の臨床薬理学を1冊にまとめた新時代の薬理学教育をリードする教科書。最重要事項を最初に “キーポイント” として示した上で、本文を通読できるように編集。内容を完全に理解するまで繰り返し読めるタイプの書籍である。さらに、薬を扱う人の立場にたって記されているため、学生の教科書としてだけでなく、医療従事者の参考書としても末長く利用できる内容になっている。
各論を第IV編で、薬物を構造・作用機序・対象疾患をも考慮し体系的に配置・解説。臨床上重要な薬物を厳選。重要度に応じて解説にはメリハリをつけ、代表的な薬に構造式をつけた。医療従事者は一般名で薬を覚えるべきと考え、本文中には原則として商品名は記載せず、巻末に一般名と商品名の対照表を付した。
目次
I編 薬理学の基本原理
1 薬理学とは
はじめに
薬理学の中心概念
薬物と生体の相互反応/投与量から濃度へ/薬物動態と薬力学
2 薬物の体内動態
薬物の膜通過機構
単純拡散/薬物トランスポーター
薬物の吸収
全身投与/局所投与
薬物の分布
血漿蛋白質との結合/組織における結合と蓄積/分布の制御機構
薬物の代謝
第I相反応/第II相反応
薬物の排泄
尿中排泄/胆汁中および糞中排泄
薬物動態の基本パラメーター
分布容積/クリアランス/生体利用率
薬物投与計画
治療域/投与量と投与間隔/負荷投与と維持投与/病態による薬物動態の変動
3 薬物の作用機序
薬物の標的
人体を標的とする薬物/病原体を標的とする薬物
薬理作用の様式
濃度と反応/効力と最大効果/作動作用/拮抗作用/余剰受容体
薬物感受性を変化させる要因
4 生理活性物質と薬物
アミン
アセチルコリン/カテコールアミン/セロトニン/ヒスタミン
アミノ酸
γ-アミノ酪酸/グリシン/グルタミン酸
ペプチド
内因性オピオイド/視床下部ホルモン/下垂体後葉ホルモン/オレキシン/下垂体前葉ホルモン/アンギオテンシン/エンドセリン/ブラジキニン/ナトリウム利尿ペプチド/インスリン/グルカゴン/インクレチン/副甲状腺ホルモンとカルシトニン/サイトカイン
甲状腺ホルモン
ヌクレオシド・ヌクレオチド
アデノシン/ヌクレオチド
ステロイドホルモン
エイコサノイド
一酸化窒素
II編 薬物治療の基礎知識
1 薬物治療とは
薬物治療の目的
予防薬/診断薬/治療薬
薬物治療の基本戦略
自己を標的とする薬/がん細胞を標的とする薬/病原体を標的とする薬
薬物治療の適正化
正しい診断と情報収集
科学的根拠に基づく治療/モニタリング/チーム医療/インフォームド・コンセント/服薬アドヒアランス
薬の名前
化学名/一般名/商品名
2 薬物有害反応
有害反応とは
有害反応のグレード
発生機序による有害反応の分類
毒性による有害反応/アレルギーによる有害反応/遺伝子変異による毒性反応/原因不明の有害反応
重篤な薬物有害反応
有害反応の予防・診断・治療
予防/診断/治療
重篤な有害反応が起こってしまったら
安全性情報の収集と提供
薬害
3 薬物乱用と依存
薬物乱用
薬物依存
薬物依存の発現機序/依存性薬物]
4 薬物相互作用
薬物相互反応とは
相互作用の分類
薬物動態上の相互作用
吸収過程での相互作用/分布過程での相互作用/代謝過程での相互作用/排出過程での相互作用
薬力学上の相互作用
相互作用による有害反応を避けるには
5 薬効と有害反応の遺伝的差異
薬理遺伝学(薬理ゲノム学)
薬物動態に影響を与える遺伝的差異
薬物代謝酵素/薬物トランスポーター
薬力学(薬理作用)に直接影響を与える遺伝的差異
がん細胞の変異
6 小児の薬物治療
生後発達に伴う薬物動態の変化
吸収/分布/代謝/排泄
生後発達に伴う薬力学の変化
小児の薬物量の決定
小児薬物療法の課題
7 高齢者の薬物治療
超高齢社会と薬物治療
薬物動態の変化
吸収/分布/代謝/排泄
薬物作用の変化
高齢者の薬物治療で心がけること
8 妊婦・授乳婦の薬物治療
妊娠と薬物
妊娠による薬物動態の変化
発生毒性と胎児毒性
妊婦の薬物治療
妊娠中によくある疾患について
男性の避妊を要する薬
授乳と薬物
9 臓器障害者の薬物治療
肝機能障害者の薬物治療
肝クリアランス/肝機能障害者の薬物動態/肝機能の評価
腎機能障害者の薬物治療
腎障害による薬物動態の変化/腎機能の臨床評価/腎機能障害者への薬物投与計画/透析患者の薬物治療
10 薬物治療のモニタリング
治療薬物モニタリング
薬物動態モニタリング
必要性と有用性/特定薬剤治療管理料/血中濃度測定法
薬力学モニタリング
11 時間治療
生体リズム
時間薬理学と時間治療
薬物動態と薬理作用の日内変動
時間治療が有用な疾患
12 薬物送達システム
EPR効果
13 医薬品の管理
毒薬、劇薬の管理
表示/保管/在庫または交付
麻薬の管理
管理・保管/施用・交付/廃棄/事故届
向精神薬の管理
記録/保管/廃棄/事故
覚せい剤・覚せい剤原料の管理
譲受・譲渡、交付/保管/記録/廃棄/事故届
生物由来製品、特定生物由来製品の管理
表示/記録
14 処方と調剤
処方
処方箋の記載事項/処方箋の有効期限
調剤と薬剤交付
処方箋の点検/調剤/薬剤交付/処方箋の保存]
III編 医薬品開発の基礎知識
1 医薬品の開発
医薬品とは
創薬と育薬
医薬品開発のプロセス
候補化合物の探索/非臨床試験/臨床試験/承認審査/製造販売後調査・臨床試験/いわゆる“自主臨床試験”
医薬品開発を支援する人びと
医薬品開発の国際化
ハーモナイゼーション国際会議/国際共同試験
2 臨床試験の科学
臨床試験とは
研究デザインとエビデンス・レベル
臨床試験の方法
誤差とバイアス/対照薬/評価項目/系統的レビュー
3 臨床試験の倫理
臨床試験は必要か
歴史的背景
ヘルシンキ宣言
研究倫理の3原則
研究倫理の3要件
インフォームド・コンセント/倫理審査/責任ある研究遂行
日本の法と倫理指針
医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令/人を対象とする医学系研究に関する倫理指針
IV編 主な疾患の治療薬
1 鎮痛・麻酔に用いる薬
鎮痛薬
局所麻酔薬
全身麻酔薬
筋弛緩薬
末梢性筋弛緩薬/中枢性筋弛緩薬]
2 神経疾患の薬
頭痛の治療薬
片頭痛の治療薬/緊張型頭痛の治療薬/群発頭痛の治療薬
抗めまい薬
抗てんかん薬
作用機序/てんかん動物モデルを用いた抗痙攣薬の評価/主な抗てんかん薬
パーキンソン病治療薬
パーキンソン病/ドパミンによる大脳基底核神経回路の調節とパーキンソン病における変化/主なパーキンソン病治療薬/臨床使用
重症筋無力症治療薬
コリンエステラーゼ阻害薬
3 精神疾患の薬
抗精神病薬
薬理作用から導かれた統合失調症の病因論/主な抗精神病薬
気分障害治療薬・精神刺激薬
抗うつ薬/主な抗うつ薬/気分安定薬/精神刺激薬
抗不安薬・催眠薬
抗不安薬/催眠薬
認知症治療薬
アルツハイマー病/アルツハイマー病の薬物療法
4 循環器疾患の薬
血圧異常症の薬
降圧薬/肺高血圧症治療薬/低高血圧症治療薬(昇圧薬)
虚血性心疾患の薬
狭心症と急性冠症候群/抗狭心症薬 /性冠症候群治療薬
心不全の薬
心不全の病態生理/薬物治療の基本/主な心不全の薬
抗不整脈薬
不整脈の成因/不整脈の種類/抗不整脈薬の分類とその変遷/主な抗不整脈薬/不整脈治療の変遷
脳卒中の薬
脳卒中の分類/抗脳浮腫薬/虚血性脳血管障害の薬/高血圧性脳出血の薬/くも膜下出血の薬
5 腎疾患および水・ナトリウム代謝異常の薬
腎臓病・腎不全の薬
主な腎臓病の治療薬/主な腎不全の治療薬
利尿薬
主な利尿薬
水利尿を調節する薬
抗水利尿薬(尿崩症治療薬)/水利尿薬
6 血液疾患の薬
抗血栓薬
血栓と止血/血栓症/主な抗血栓薬
止血薬
主な止血薬
造血薬
主な造血薬]
7 呼吸器疾患の薬
呼吸刺激薬
鎮咳薬・去痰薬
鎮咳薬/去痰薬
かぜ症候群治療薬
気管支喘息治療薬
慢性閉塞性肺疾患治療薬
8 消化器疾患の薬
制吐薬・消化管機能調整薬
鎮痙薬
消化性潰瘍治療薬
止瀉薬・整腸薬・瀉下薬
炎症性腸疾患治療薬
肝・胆・膵疾患治療薬
9 代謝性疾患の薬
糖尿病治療薬
糖尿病/主な糖尿病治療薬
脂質異常症治療薬
リポ蛋白質と脂質異常症/主な脂質異常症の治療
痛風・高尿酸血症治療薬
高尿酸血症‣痛風・高尿酸血症の治療
骨粗鬆症治療薬
骨粗鬆症‣主な骨粗鬆症治療薬
ビタミン製剤
10 内分泌系疾患の薬
視床下部ホルモン関連薬
ソマトスタチン製剤‣黄体形成ホルモン放出ホルモン製剤
下垂体ホルモン関連薬
成長ホルモン関連薬‣性腺刺激ホルモン関連薬/後葉ホルモン関連薬
甲状腺ホルモン関連薬
抗甲状腺薬/甲状腺ホルモン製剤
副腎皮質ホルモン関連薬
分泌低下症の治療薬/分泌過剰症の治療薬
性ホルモン関連薬
男性ホルモン関連薬/女性ホルモン関連薬]
11 泌尿器・生殖器疾患の薬
排尿障害治療薬
畜尿障害(尿失禁)治療薬/排出障害治療薬
勃起不全治療薬
子宮収縮抑制薬(切迫流・早産治療薬)
子宮収縮薬(陣痛誘発・分娩促進薬)
12 炎症・免疫異常の薬
発熱・炎症に用いる薬
発熱と炎症/解熱鎮痛薬/抗炎症薬/抗リウマチ薬
免疫異常に用いる薬
免疫反応と疾患/免疫抑制薬/免疫増強薬/抗アレルギー薬
13 感染症の薬
抗ウイルス薬
抗ヘルペスウイルス薬/ 抗サイトメガロウイルス薬/抗インフルエンザウイルス薬/抗RSウイルス薬/抗B型肝炎ウイルス薬/抗C型肝炎ウイルス薬/インターフェロン製剤/抗ヒト免疫不全ウイルス薬
抗細菌薬
ペニシリン系抗生物質/セフェム系抗生物質/β-ラクタマーゼ阻害薬/モノバクタム系抗生物質/ぺネム系抗生物質/カルバぺネム系抗生物質/ホスホマイシン系抗生物質/グリコペプチド系抗生物質/リポペプチド系抗生物質/アミノグリコシド系抗生物質/テトラサイクリン系抗生物質/マクロライド系抗生物質/クロラムフェニコール系抗生物質/リンコマイシン系抗生物質/ストレプトグラミン系抗生物質/オキサゾリジノン系合成抗菌薬/ピリドンカルボン酸(キノロン)系合成抗菌薬/サルファ系合成抗菌薬(サルファ薬)/リファマイシン系抗生物質/抗結核薬/その他
抗真菌薬
ポリエン系薬/アゾール系薬/ピリミジン系薬/キャンディン系(エキノキャンディン系)薬
抗原虫薬
マラリア治療薬/アメーバ赤痢治療薬/キソプラズマ症治療薬
駆虫薬
ワクチン・トキソイド
消毒薬
低水準消毒薬/中水準消毒薬/高水準消毒薬/その他(創傷・潰瘍部消毒薬)
14 抗悪性腫瘍薬(抗がん薬)
悪性腫瘍(がん)の薬物治療
細胞毒性薬
アルキル化薬/代謝拮抗薬/抗がん性抗生物質/微小管阻害薬/トポイソメラーゼ阻害薬/白金製剤
分子標的薬
増殖シグナル阻害薬/血管新生阻害薬/プロテアソーム阻害薬/mTOR阻害薬/抗CD20阻害薬/免疫チェックポイント阻害薬
ホルモン療法薬
その他の抗がん薬
15 眼疾患治療薬
緑内障治療薬
加齢黄斑変性症治療薬
白内障治療薬
抗炎症薬
抗アレルギー薬
感染症治療薬
その他の薬物
16 皮膚疾患の薬
基剤と皮膚吸収性
感染症治療薬
抗アレルギー薬・抗炎症薬・免疫抑制薬
褥瘡・皮膚潰瘍治療薬
乾癬治療薬
尋常性挫瘡治療薬
17 中毒の治療薬
中毒治療薬の作用機序
急性中毒の治療薬/慢性中毒(依存症)の治療薬
18 救命救急に必要な薬
重度の血圧低下に用いる薬
アドレナリン受容体作動薬/アセチルコリン受容体拮抗薬
心機能を抑制する薬
β受容体拮抗薬
血管を拡張させる薬
硝酸薬/カルシウムチャネル遮断薬
抗不整脈薬
鎮静薬(およびその拮抗薬)
鎮痛薬(およびその拮抗薬)
筋弛緩薬(およびその中和薬)
その他
19 輸液と輸血
輸液製剤
電解質輸液/糖質輸液/高カロリー輸液/脂肪製剤/アミノ酸製剤/代用血漿剤
血液製剤
全血液/血球製剤/血漿製剤/輸血による有害反応
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