タバコ広告でたどるアメリカ喫煙論争

タバコ広告でたどるアメリカ喫煙論争

著者名 広島大学大学院総合科学研究科
岡本 勝
発行元 丸善出版
発行年月日 2017年12月
判型 四六 188×128
ページ数 192ページ
ISBN 978-4-621-30232-3
Cコード 1322
ジャンル 人文科学 >  シリーズ人文科学 >  叢書インテグラーレ

内容紹介

アメリカの経済を植民地時代から支えてきた葉タバコの生産とその加工品の嗜好の是非が、時代の流れと共に否定的に傾いていく様子と、産業として根強いタバコ業界との論争――「アメリカタバコ戦争」――について、当時の広告から読み解き、タバコをめぐるアメリカ社会の軌跡をたどる一冊。紙巻きタバコが流行するきっかけとなった第一次世界大戦を含む、19世紀終盤から21世紀の現代に至るまでを取り上げる。大衆消費社会の象徴となったタバコは様々な「広告」によって市場が活気づけられてきたが、健康問題が指摘され批判が高まってからはスポーツ選手や医者を使った広告で健康をアピールし、広告は「商品宣伝」から「意見広告」へと姿を変えてきた。健康志向・未成年喫煙の反対など社会的な要請とタバコ産業の共存は、電子タバコの普及と喫煙の制限を声高にうたう現代社会の様相を改めて考える契機にもなるだろう。

目次

プロローグ
第一章 初期タバコ広告
 タバコ広告のはじまり/J・カーによるユニークな広告/紙巻きタバコ製造のはじまり/ジェームズ・デュークの出現/デューク社繁栄の理由/デューク社による多彩な広告/シガレット・カード/ユニークな広告/タバコニストへの働きかけ/「アメリカン・タバコ会社」の誕生/トラスト解体と紙巻きタバコ業界/「キャメル」の全国ブランド化/「キャメル」の広告/「チェスターフィールド」の広告/「ラッキーストライク」の広告
第二章 紙巻きタバコの流行と時代背景
 紙巻きタバコを選択した人びと/反紙巻きタバコ運動/タバコ広告の目的/一九世紀的から二〇世紀的社会へ/第一次世界大戦とタバコ製品/千載一遇のチャンス/「紙巻きタバコ爆弾」の投下/第一次世界大戦がもらたしたもの/ヴィクトリア時代の道徳観/女性によるタバコ広告/喫煙する女性が登場する広告/女性の解放や男女平等を訴える広告/イースター・パレードへの参加/体重抑制効果を仄めかす広告/シガレット=キャンディー戦争/シガレット=キャンディー戦争の余韻
第三章 健康をアピールする「証言広告」
 薬剤としての葉タバコ/タバコ使用に対する警鐘のはじまり/喫煙が問題視されなかった理由/肺ガンの症例増加/喫煙と肺ガン/医学会とタバコ業界/「医者」が登場するタバコ広告/健康をイメージさせる広告/ベーブ・ルースによるタバコ広告/ルー・ゲーリックによるタバコ広告/J・ディマジオとT・ウィリアムズによるタバコ広告/ジャッキー・ロビンソンの登場/W・メイズとH・アーロン/さらなるメジャーリーガーたち
第四章 タバコ不健康説と「マルボロ広告」
 遡及調査研究/追跡調査研究/タールを使った動物実験/研究結果が与えた影響/医務長官諮問委員会/一九六四年医務長官報告書/医務長官報告書がもたらしたもの/電波機器によるタバコ広告の禁止/フィリップ・モリス・タバコ会社/「マルボロ」の性転換/カウボーイによる伝説的な広告/米ソ冷戦を意識したマルボロ広告/もう一つのマルボロ広告
第五章 受動喫煙に関する意見広告
 プラザホテルでの会合/「紙巻きタバコ喫煙者への率直な訴え」/喫煙に対するさまざまな規制/迷惑行為つぃての受動喫煙/受動喫煙に関する研究/日本人疫学者による研究/受動喫煙危険説への反論/ヒマラヤ論文への反駁/さらなる意見広告/一九八六年医務長官報告書/一九八六年以降の意見広告/喫煙・非喫煙の一般市民が登場する意見広告/市民生活への干渉をテーマにした意見広告
第六章 未成年者の喫煙に関する意見広告
 メレル・ウィリアムズ文書/テレビの特集番組と議会公聴会/タバコ業界へのさらなる逆風/タバコ訴訟のはじまり/訴訟とタバコ広告/一九九〇年代に起こされたタバコ訴訟/医療費求償訴訟をめぐる論争/リゲット社の動き/州政府とタバコ業界の和解交渉/包括的和解合意/包括的和解合意の挫折/新たな和解合意/一括和解合意の成立/未成年者の喫煙に関するフィリップ・モリス社の意見広告/レイノルズ社による意見広告/未成年者への働きかけ/二一世紀初頭のタバコ広告
エピローグ
あとがき
主要参考文献

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