内容紹介
里地里山を中心とした農山村地域は過疎化高齢化に伴い、十分な森林や農地の管理ができなくなりつつある。そこでそれを防ぐ方策として、エコツーリズムといった農山村を舞台とした観光が各地で実施されている。本書で紹介する飯能市は環境省の「全国13カ所:エコツーリズム推進モデル事業」のモデル地区の1つに選定されて以来、地域住民が中心となり様々なアイデアを出し合って「着地型のエコツーリズム」を実践し、今では山や川での自然体験など年間60を超えるエコツアーを実施、「第4回エコツーリズム大賞」も受賞している。本書では飯能市エコツーリズム推進協議会長を務める筆者が、ご専門の「里地里山の持続可能な社会システムの研究」の視点から、飯能のエコツーリズムの実践(多数の事例を紹介)を明らかにし、今後エコツーリズムが農山村振興にどのようなプラス効果をもたらしうるかを明らかにする。
目次
第1章 世界と日本のエコツーリズム
1 エコツーリズムとは?
2 エコツーリズムと環境容量、地域区分の考え方
3 グリーンツーリズムとエコツーリズム
4 持続可能な地域づくりに貢献する旅行・観光産業
5 持続可能な地域づくりとバイオリージョナリズム
6 ソフトな農村観光(ルーラルツーリズム)のすすめ
7 日本のエコツーリズムの歩み
■エコツーリズムモデル事業とエコツーリズム大賞
■飯能市エコツーリズム推進全体構想
■出かけよう飯能エコツアー
第2章 飯能の大地のなりたち
1 埼玉県の陸地化の過程
2 飯能市の自然のおいたち
3 チャートでできた天覧山
4 谷戸/谷津
5 大地を刻む入間川
6 山地を造る海底の岩石
7 古多摩川と飯能礫層
8 飯能とアケボノゾウ
9 扇状地と河岸段丘
10 瀬・淵・瀞
11 飯能市の気候の特色
コラム1 熱中症と熱射病の予防
コラム2 落雷への対応
第3章 里地里山の多様な草木
1 照葉樹林とブナ林のターミナル
2 山林と平地林、里山と雑木林
3 畑作地帯と平地林
4 里地里山とは
5 山林とその自然植生
6 紅葉のしくみ
7 固有種のハンノウザサ
8 キノコ
9 氷河期のレリック(遺存種)の春植物
10 つる性のマタタビとサルナシ
11 満鮮要素の草原
12 水路の管理
コラム3 里地里山の危ない植物
第4章 飯能の生きものに注目
1 飯能の川魚たち
■上流域の魚たち
■中流域の魚たち
■外来魚、ブラックバスとブルーギル
2 早春の谷戸の生き物たち
3 メダカとタガメ
4 幻想的な発光のゲンジボタルとヘイケボタル
5 モリアオガエル
6 天覧山周辺の鳥類
■天覧山・多峯主山での探鳥
■ガビチョウ
■カワセミ・ヤマセミ
7 猛禽類
■サシバ
゙ ■ハチクマ
■オオタカ
■タカ渡り
8 小型哺乳類:カヤネズミとムササビ
9 大型哺乳類
■イノシシ
■ニホンジカとカモシカ
■ツキノワグマ
コラム4 里地里山の危ない生きもの
第5章 森林文化が薫るまち飯能
1 谷口集落飯能のあゆみ
2 西川材の生産地
3 西川林業の盛衰
4 ウッドマイレージと木質バイオマスエネルギー
5 木材の地産地消運動
6 森の香りでリラックス
7 スギモノカルチャーとスギ花粉症
8 谷口集落の機業地とその特徴
9 飯能の生糸と絹織物
10 飯能の発展と繊維産業の盛衰
11 土地に刻まれた飯能市の地名
■飯能
■名栗
■南高麗
■指(サス)地名
コラム5 飯能を揺るがした幕末の二つの大事件―武州一揆と飯能戦争
第6章 結びにかえて――こころ躍る飯能エコツアーを目指して――
1 エコツアー数と参加者数の推移
2 環境容量を意識した住民の行動
3 大ブナの枯死と地域資源のモニタリング
【参考資料】 飯能市エコツーリズム推進全体構想(抄録)
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