内容紹介
建築理論は17世紀に整備されると、19世紀には国家的アイデンティティーの勃興と建築雑誌の普及によりその領域を拡大し、20世紀のさまざまな宣言書は、建築界に論争を巻き起こしてきた。本書は「理論」と「近代」という言葉が重要性を帯びるようになった17世紀後半から、建築理論というものの文脈が大きく変動した1960年代後半までの、300年にも及ぶ建築理論の歴史を詳細に解説している。建築理論を語るうえで欠かすことのできないヨーロッパ諸国はもちろん、のちに近代建築のリーダーシップをとるアメリカやその他の地域についても広く論じている。
目次
Chapter1 序奏
1 フランソワ・ブロンデルとフランスにおけるアカデミーの伝統
2 クロード・ペローとルーヴル
3 新旧論争
4 サント=ジュヌヴィエーヴ聖堂の最初の計画
Chapter2 啓蒙思想と新古典主義理論
1 フランスにおける啓蒙思想
2 スフロとサント=ジュヌヴィエーヴ聖堂
3 マルク=アントワーヌ・ロージエ
4 ギリシアの「再発見」
5 ヴィンケルマンの歴史叙述
6 ギリシア=ローマ論争
7 新古典主義と性格(カラクテール)
Chapter3 18世紀イギリスの理論
1 ジョーンズとレンの遺産
2 パラーディオ主義
3 ピクチャレスクと崇高の起源
4 スコットランドとアイルランドの啓蒙運動
5 ピクチャレスクの理論
6 ジョン・ソーン
Chapter4 新古典主義と歴史主義
1 デュランとカトルメール・ド・カンシー
2 多彩色(ポリクロミー)論争
3 社会主義,ロマン主義,「小さな革命(プチ・レボリューション)」
4 イギリスにおける古典主義とゴシック・リヴァイヴァル
Chapter5 ドイツ理論の興隆
1 ドイツの啓蒙運動
2 フリードリヒ・ジリーとカール・フリードリヒ・シンケル
3 ヴァインブレンナー,モラー,クレンツェ,ゲルトナー
4 どの様式で建てるべきか
5 カール・ベティヒャーと様式論争
Chapter6 19世紀半ばの様式論争
1 イギリスの様式論争 1840〜1860
2 ヴィオレ=ル=デュクとフランスの議論
3 ゴットフリート・ゼンパーと様式観念
Chapter7 アメリカの歴史主義
1 アメリカ古典主義の伝統
2 19世紀半ばの様式混交
3 エマーソンとグリーノウ
4 デイヴィスとダウニング
5 リチャードソンとサリヴァン
Chapter8 アーツ・アンド・クラフツ運動
1 イギリスにおけるアーツ・アンド・クラフツ運動
2 ヨーロッパ大陸における改革
3 アメリカの改革運動
4 カミッロ・ジッテとエベネザー・ハワード
Chapter9 補説:20世紀ドイツモダニズムの概念的基礎
Chapter10 モダニズム 1889-1914
1 オットー・ヴァーグナー
2 リアリズムと即物性(ザッハリヒカイト)
3 エンデルとヴァン・ド・ヴェルド
4 オルブリヒ,ホフマン,ロース
5 ベルラーヘとライト
6 ガルニエ,ペレ,ジャンヌレ,サンテリア
7 ムテジウスとベーレンス
Chapter11 ヨーロッパにおけるモダニズム 1917-1933
1 シュペングラー主義 vs.テイラー主義
2 ソヴィエトの合理主義と構成主義
3 デ・ステイルとオランダにおけるモダニズム
4 表現主義とバウハウス
5 ル・コルビュジエとギーディオン
6 初期モダン・ムーブメントの広がり
7 ヴァイセンホーフとCIAM
Chapter12 アメリカにおけるモダニズム 1917-1934
1 アメリカン・スカイスクレイパー
2 ライト:失われた時代
3 シンドラーとノイトラ
4 マンフォードとフラー
5 「インターナショナル・スタイル」展
Chapter13 恐慌,戦争,その後 1934-1958
1 ドイツ,イタリアの全体主義
2 その他のヨーロッパにおける第1次世界大戦後の理論
3 アメリカの実務,学問改革 1934-1941
4 アメリカの1940,50年代
5 中南米・アジア・欧州における戦後モダニズム
Chapter14 モダニズムへの挑戦状 ヨーロッパ 1959-1967
1 CIAMとチームX
2 モダン・ムーブメントからのイタリアの「退却」
3 バンハム,アーキグラム,メタボリズム,その他のユートピアニズム
4 現象学,構造主義,記号論
5 ウンガース,スターリング,スカルパ,ロッシ
Chapter15 モダニズムへの挑戦状 アメリカ
1 マンフォード,ジェイコブス,アメリカ諸都市の失敗
2 パタン・ランゲージから易経まで
3 ルイス・I・カーン
4 コーリン・ロウ、ピーター・アイゼンマンとCASE
5 建築の多様性と対立性
Chapter16 エピローグ
1 1968年