低温科学便覧

低温科学便覧

著者名 北海道大学低温科学研究所
発行元 丸善出版
発行年月日 2015年10月
判型 B5 257×182
ページ数 400ページ
ISBN 978-4-621-08964-4
Cコード 3040
NDCコード 450
ジャンル 環境科学・生活科学 >  環境科学 >  環境一般

内容紹介

低温科学とは、水の固相である氷が存在できる温度領域での自然科学現象を物理学・化学・生物学をもとにして総合的に取り扱う研究分野。 氷や雪のミクロな物理・化学的な性質の解明から、大陸や海洋、大気といったマクロな地球環境の考察、さらには微生物、昆虫、動物、植物など生命圏の営みまでが研究対象。近年は宇宙に存在する氷や太陽系・系外惑星系の起源の探求までも射程に収めている。 本書はこれらの低温および寒冷環境における自然科学のダイナミズムを俯瞰できる便覧。

目次

第I部 序
 第1章 低温科学とは
  1.1 はじめに
  1.2 世界の雪氷圏
  1.3 「低温科学」と低温科学研究所
  1.4 本書の役割
第II部 雪と氷の基礎科学
 第2章 氷および雪の結晶成長
  2.1 はじめに
  2.2 氷結晶の多形と氷Ihの特徴
  2.3 気相中での雪の成長
  2.4 融液中での氷の成長
  2.5 表面融解
  2.6 不凍タンパク質による生物の耐凍結戦略
  2.7 今後の展開
 第3章 宇宙の氷
  3.1 宇宙に存在する氷
  3.2 低温下の氷
  3.3 宇宙の氷(H2O)の起源
  3.4 宇宙における水素分子生成
  3.5 宇宙における有機分子生成
  3.6 星間分子の重水素濃集:氷星間塵の役割
  3.7 太陽系の誕生と氷の行方
  3.8 彗星
 第4章 惑星形成過程と宇宙氷
  4.1 はじめに
  4.2 太陽系および系外惑星系の起源
  4.3 惑星形成の第一歩:ダストから微惑星へ
 第5章 氷河
  5.1 氷河とは何か
  5.2 氷河の分布
  5.3 氷河が地球環境に果たす役割
  5.4 氷河変動メカニズム
  5.5 近年の氷河変動
 第6章 氷床コア
  6.1 はじめに
  6.2 氷床コアとは
  6.3 これまでの主な氷床コア掘削
  6.4 古環境媒体としての氷床コアの長所
  6.5 氷床コアの年代決定
  6.6 氷床コアによる温室効果ガスの復元
  6.7 氷床コアによる気温復元
  6.8 氷期‐間氷期気温変動の要因
  6.9 数千年スケールの気温変動の要因
  6.10 氷床コアによるエアロゾル復元
  6.11 南極氷床に飛来するエアロゾル
  6.12 北極グリーンランドに飛来するエアロゾル
  6.13 エアロゾルの化学形態
  6.14 アイスコアに含まれる塩微粒子の直接分析
  6.15 塩微粒子を用いた古気候復元
第III部 地球環境と寒冷圏化学
 第7章 南極海における海氷生成と深層水形成
  7.1 極域海洋と海洋深層循環
  7.2 海氷生成と南極底層水
  7.3 未知の南極低層水成域の発見
  7.4 北大西洋深層水および南極底層水の輸送
  7.5 極域での海洋・海氷観測
  7.6 棚氷下の循環
  7.7 南極底層水の変化
  7.8 極域での海洋・海氷モデリング
 第8章 環オホーツク地域における大陸と海洋をつなぐ物質循環システム
  8.1 環オホーツク地域とは
  8.2 環オホーツク海域における海洋循環
  8.3 環オホーツク海域の生物生産を支える物質循環
  8.4 オホーツク海・親潮の巨大魚附林としてのアムール川流域
  8.5 環オホーツク地域の山岳氷河
  8.6 おわりに
 第9章 大気と海洋・海氷の相互作用,地球温暖化
  9.1 地球温暖化と極域の海洋・大気変動
  9.2 寒冷海洋域の衛星リモートセンシング
  9.3 海氷の関わる素過程について
 第10章 有機エアロゾル
  10.1 有機エアロゾルの起源とその大気環境科学における重要性
  10.2 中国北京近郊での有機エアロゾル:ジルカルボン酸と関連有機物
  10.3 アジア大陸の下流域での観測その1:韓国・済州島における有機エアロゾル観測
  10.4 アジア大陸の下流域での観測その2:小笠原諸島・父島における低分子ジカルボン酸類の長期観測
  10.5 北極圏における有機エアロゾルの研究
  10.6 寒冷圏森林大気における水溶性有機エアロゾル生成
 第11章 大気と陸面の相互作用
  11.1 はじめに
  11.2 相互作用の基礎プロセス
  11.3 大気‐陸面間の乱流輸送過程
  11.4 大気境界層
  11.5 地表面と大気の冷却
  11.6 地表面熱収支と大気境界層の昇温過程
  11.7 積雪寒冷地域における気象観測
第12章 雲科学
  12.1 強風および弱風時の風の形
  12.2 風と雲をつなぐ陸・海・空観測
  12.3 メソスケール渦状降雪雲の力学
  12.4 温帯低気圧に伴う降雨帯形成に果たす雪の融解冷却効果
  12.5 オホーツク海沿岸帯状雲をとらえる
  12.6 オホーツク海沿岸の流氷をとらえる
  12.7 雨滴の形と大きさを測る
  12.8 雨が凍って雪になるか雪が融けて雨になるか
  12.9 雪片は天からの巻物
  12.10 雨が大気境界層の流れを可視化する
第IV部 生命圏の低温科学
 第13章 寒冷圏の物質循環と微生物
  13.1 概要:低温環境と微生物
  13.2 部分循環湖生態系:冬季凍結する春採湖を例として
  13.3 淡水の貧酸素・無酸素水下塊:みずかき湖を例として
  13.4 高山湖沼生態系 
  13.5 南極湖沼生態系:東南極宗谷海岸に点在する湖沼群を例として
  13.6 環境変動による土壌微生物生体系の影響
  13.7 まとめ
 第14章 昆虫の環境ストレス応答
  14.1 概要
  14.2 物理的環境ストレス
  14.3 生物的環境ストレス
 第15章 寒冷圏の生物地理
  15.1 生物地理区について
  15.2 生物地理的区系
  15.3 旧北区と新北区をつなぐベーリング海峡
  15.4 日本周辺の生物地理学的境界線
  15.5 日本列島の哺乳類相の特徴
  15.6 日本を含む全北区に分布する哺乳類の系統地理の例
  15.7 まとめ
 第16章 低温化の光合成
  16.1 光合成の概要と低温耐性
  16.2 光捕集と低温
  16.3 光合成電子伝達と低温
  16.4 低温環境下での光障害
  16.5 寒冷域の海洋における光合成
 第17章 寒冷圏の植物生態
  17.1 寒冷域の光ストレスに対する植物の応答
  17.2 樹木の生理生態的特徴と寒冷域の環境要因
  17.3 北方林の天然更新
  17.4 北方林樹木の繁殖様式
  17.5 北方林における熱・水収支
  17.6 北方林における物質生産

定価:11,000円
(本体10,000円+税10%)
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