内容紹介
本書は鏡映で生成される有限鏡映群を幾何学的側面から初等的に扱った入門書である。鏡映群とルート系の理論は特にリー代数への応用があり様々な数学理論の核となっているが、リー代数やルート系に関する日本語の文献は多くても鏡映群を詳しく論じたものはきわめて少ない。本書は「鏡映群」と「ルート系」をキーワードに鏡が引き起こす(あるいは鏡像、鏡映の)対称性を論じ、その範囲はルート系、超平面配置、多面体論、コクセター群など多くの分野にわたる。本書では特に閉鏡系の役割を強調した。これは、主な対象を直截的に定義できたり、正多面体などの身近な対象を扱えるため視覚的な興味を持てたり、幾何学的直観を援用した理解を進められるためである。本書は学部2〜4年生でも読めるように慎重にデザインされている。必要な予備知識はそれほど多くはなく、鏡映群の理論にすんなりと入ることができるだろう。
目次
まえがき
第I部 幾何学的背景
第1章 アフィン空間ARn
1.1 ユークリッド空間Rn
1.2 アフィン空間ARn
1.3 アフィン部分空間
1.4 半空間
1.5 基底と座標
1.6 凸集合
第2章 ARnの等長変換
2.1 等長変換群の固定点
2.2 Isom ARnの構造
第3章 超平面配置
3.1 超平面配置の面
3.2 部屋
3.3 ギャラリー
3.4 多面集合
第4章 多面錐
4.1 有限多面錘
4.2 単純生成系
4.3 双対性
4.4 単体錘の双対性
4.5 単体錘の面
第II部 鏡,鏡映,ルート
第5章 鏡と鏡映
第6章 鏡系
6.1 鏡系
6.2 有限鏡映群
第7章 二面体群
7.1 2個の対合によって生成される群
7.2 定理7.1 の証明
7.3 二面体群:幾何学的解釈
第8章 ルート系
8.1 鏡と法ベクトル
8.2 ルート系
8.3 平面的ルート系
8.4 正ルート系および単純ルート系
第9章 An-1,BCn,Dn型のルート系
9.1 An-1のルート系
9.2 Cn型およびBn型のルート系
9.3 Dn型のルート系
第III部 コクセター複体
第10章 部屋
第11章 生成性
11.1 単純鏡映
11.2 折りたたみ
11.3 ギャラリーと道
11.4 C上のWの作用
11.5 道と折りたたみ
11.6 C上のWの単純推移性:定理11.6の証明
第12章 コクセター複体
12.1 コセクター複体のラベル付け
12.2 Wの元の長さ
12.3 反対の部屋
12.4 等方群
12.5 放物型部分群
第13章 剰余
13.1 剰余
13.2 例
13.3 剰余の鏡系
13.4 剰余と凸性
13.5 剰余:ゲート性
13.6 反対の部屋
第14章 一般化置換多面体
第IV部 分類
第15章 生成元と関係式
15.1 鏡映群とコクセター群
15.2 定理15.1の証明
第16章 有限鏡映群の分類
16.1 コクセターグラフ
16.2 可約鏡映群
16.3 ラベル付けされたグラフと双線形形式
16.4 正値グラフの分類
第17章 ルート系の構成
17.1 An型のルート系
17.2 Bn型のルート系(n≥2)
17.3 Cn型のルート系(n≥2)
17.4 Dn型のルート系(n≥4)
17.5 E8型のルート系
17.6 E7型のルート系
17.7 E6型のルート系
17.8 F4型のルート系
17.9 G2型のルート系
17.10 結晶条件
第18章 鏡映群の位数
第V部 3次元鏡映群
第19章 3次元空間の鏡映群
19.1 平面鏡系
19.2 鏡系による球面のタイル張り
19.3 球面三角形の面積
19.4 3次元空間における有限鏡映群の分類
第20章 正二十面体
20.1 構成
20.2 一意性と剛性
20.3 正二十面体の対称性の群
第VI部 付録
付録A 忘れられた技芸:黒板の図画
付録B 演習問題のヒントと解法
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