内容紹介
本書は、ユダヤ人を家族に持つアーリア人作家ヨッヘン・クレッパーがナチ時代に残した日記を史料に、境界に立たされた市民が迫害される側の視点で眺めたベルリンの日常と彼らの生活を辿っていく。クレッパーは、妻子と共に1942年12月10日夜、自死の途を選んだ。その苦悩と苦闘は、我われに大きな教訓を与えてくれる。
目次
はじめにーーヨッヘン・クレッパーと彼に関する状況
クレッパー略年表
プロローグーードイツ人とユダヤ人
〔1〕ナチ体制下の市民
〔2〕非アーリア人人口
〔3〕ナチ政権成立以前のドイツ人とユダヤ人
第I章 一九三八年までのクレッパーの状況
一 クレッパーの「日記」について
二 本書の目的
三 一九三八年までの作家クレッパーの状況
〔1〕一九三三年の失業と再就職
〔2〕一九三五年の再失業と『父』出版までの苦悩
〔3〕作家生活最大の危機
〔4〕危機の克服
四 一九三八年までのクレッパーの家庭生活
〔1〕ハンニとの結婚
〔2〕ハンニの受洗への経緯
〔3〕娘たちの出国について
五 クレッパーのナチ政権観―その保守主義に関する考察
〔1〕ナチ政権に対する否定的評価へ
〔2〕ナチ政権への抵抗の拒絶
第II章 一九三八年の「水晶の夜」ポグロム
一 それまでの反ユダヤ人政策
〔1〕一九三三年
〔2〕一九三四年と三五年
〔3〕 一九三六年と三七年
ニ 一九三八年の反ユダヤ的措置と『日記』に見る「水晶の夜」ポグロム
〔1〕一九三八年の反ユダヤ的措置
〔2〕「日記」に見る「水晶の夜」ポグロムまで
〔3〕「水晶の夜」ポグロムとその後の「日記」から
第III章 一九三九年から四二年までのクレッパー
一 一九四二年までの反ユダヤ的措置
〔1〕一九三九年
〔2〕一九四〇年
〔3〕一九四一年
〔4〕一九四二年とその後
ニ 次女レナーテの出国をめぐる奔走
〔1〕一九三九年から四一年一〇月まで
〔2〕一九四一年一〇月から四二年一二月まで
エピローグーー市民としての誇りと限界
参考文献
あとがき