植物生理学

植物生理学

原書名 Pflanzenphysiologie
著者名 網野 真一 監訳
駒嶺 穆 監訳
発行元 丸善出版
発行年月日 2013年02月
判型 B5 257×182
ページ数 614ページ
ISBN 978-4-621-06439-9
Cコード 3045
ジャンル 生物・生命科学 >  動物学・植物学

内容紹介

植物生理学を包括的に取り扱ったテキストの邦訳。細胞生物学や分子生物学の発展に合わせ植物生理学の応用的側面も、遺伝子工学分野を多く取り入れている。植物科学にかかわるすべての人に勧められる名著。

目次

第1章 生理学における目的の設定
 生理学の概念
 生理学の不均一性
 還元主義の限界
 生物学における法則
 生理学における普遍的法則
 システム理論
 重要な概念
 生化学と生理学
第2章 生理学の基礎となる理論
 科学的な研究の法則
 基準となる単位
 生理学における因果関係の原理
 一因子解析
 多因子解析
  乗法的効果/加法的効果/相互作用
 複雑さの問題
 法則の公式化
 形質と変異
 データのプレゼンテーション
 外挿法の問題
第3章 形態システムとしての細胞
 分裂組織の植物細胞
  構造上の階層/小胞体/核/ゴルジ装置/ミクロボディー(ペルオキシソーム)/ミトコンドリアと色素体/細胞骨格/細胞壁
 成熟した植物細胞
 木質の植物細胞
第4章 エネルギー系としての細胞
 熱力学の第一法則
 熱力学の第二法則
 開放系としての細胞,動的平衡
 化学ポテンシャル
 水の化学ポテンシャル
 細胞の水代謝における水ポテンシャルの概念
  浸透圧計モデル/浸透圧計類似系としての細胞/マトリックスポテンシャル/難しい命名法/細胞の浸透状態図(Hoflerの図)/πとΨの実験的測定/水分平衡の調節
 イオンの化学ポテンシャル
 膜電位
 生化学的反応のエネルギー論
 リン酸基転移とリン酸化ポテンシャル
 酸化還元系と酸化還元電位
第5章 代謝系としての細胞
 生体における触媒反応
  活性化エネルギー/酵素による触媒作用/酵素の反応速度論/酵素活性の測定/酵素活性の調節
 細胞内の代謝区画(コンパートメント)
 生体膜の輸送機構
  拡散と透過性/膜輸送の特異性,担体仮説/担体,イオンポンプ,イオンチャネル/受動輸送と能動輸送/シャトル輸送
 生体膜におけるエネルギー転移によるATP合成
 細胞による物質の取り込み
  イオンの取り込み/非電解質の取り込み/代謝産物や無機イオンの液胞内への蓄積
 代謝調節の原理
  酵素量の調節/一定の酵素濃度のもとでの活性調節/(全体的)制御機構における複数の調節過程の統合 
第6章 分裂系としての細胞
 有糸分裂速度の調節
 分裂面の決定
 細胞周期と細胞分化
第7章 極性をもつ細胞
 細胞極性の意義
 光による極性誘導
 極性と生体電場
 極性とシグナル物質
第8章 成長する細胞
 細胞成長の生物物理的基礎
  細胞の吸水成長/物理的な成長パラメータの測定
 成長と細胞壁の構造
  一次壁構造の動態/細胞壁の全層での伸展/細胞壁の局所的な伸展
 多細胞器官の伸張成長
 伸張成長の調節
第9章 リズムをもつ細胞
 最初の観察:マメ科植物の葉の日周運動
  概日リズムと進化
 概日リズムを示す数々の現象
  花弁の日周運動/ミズタマカビの胞子嚢放出の日変化/組織培養の概日リズム/生物発光の内生リズム
 内生リズムを解析する実験
  リズムの誘因/変化する環境の周期に対するリズムの適応/内生リズムと細胞の呼吸/内生リズムと細胞核
 システムの特性としての内生リズム
第10章 遺伝子発現系としての細胞
 クロマチンと染色体
 細胞のRNA
 タンパク質合成
 特異的な阻害剤
 タンパク質の折りたたみと会合
 タンパク質の選別
 遺伝子発現の調節
  研究事例:オーキシンで誘導される細胞分裂の過程で作用するシス作用エレメントの同定
第11章 細胞内構造の形態形成
 細胞内のコミュニケーション
  オルガネラ内のタンパク質輸送/細胞内の膜の流れ
 ミトコンドリアの形態形成
 色素体の形態形成
 ペルオキシソーム(ミクロボディー)の形態形成
第12章 緑葉体の機能:光合成
 エネルギー変換系としての光合成
 葉緑体内のエネルギー変換
  葉緑体の構造/チラコイド膜の構造/光合成色素/光吸収の量子論的基礎/色素の機能/色素間のエネルギー移動/化学ポテンシャルの形成/二つの光化学系のつながり
 紅藻やラン藻の色素系
 光合成の電子伝達
  開放型の電子伝達系/循環型電子伝達
 光合成装置の光酸化的破壊に対する防護機構
 光リン酸化の機構
 生化学的過程
  CO2の固定と還元/NとSの還元と固定/光合成によるH2生産/光合成によるN2固定
 光合成細菌の酸素を発生しない光合成
第13章 呼吸代謝
 異化エネルギー生産
 炭水化物の呼吸代謝
  解糖系/発酵(アルコール発酵と乳酸発酵)/トリカルボン酸回路と呼吸鎖/シアン耐性呼吸/酸化的リン酸化/原形質膜における電子伝達/酸化的(異化型)ペントースリン酸回路
 光呼吸
  グリコール酸の光合成/C2回路による光合成的グリコール酸の代謝/付録:緑藻とラン藻におけるグリコール酸経路
 貯蔵組織での貯蔵物質の移動
  脂肪の炭水化物への変換/貯蔵多糖類の代謝/貯蔵タンパク質の代謝
 呼吸におけるガス交換の制御
  呼吸:CO2の放出とO2の法則/呼吸商/酵素による炭水化物分解の制御/酵素合成による発酵の誘導と酵素活性の調節/呼吸による熱発生(サーモジェネシス)/クリマクテリック呼吸/付録:植物細胞のオキシダーゼ
 炭水化物の合成と分解の調節
第14章 光合成システムとしての葉
 光合成速度の測定
 真の光合成と純光合成
  二酸化炭素補償点Γ/光補償点/真と見かけの光合成/光呼吸と暗呼吸
 見かけの光合成を制限する要因
  光のフラックスとCO2濃度の影響の計算/光/効果曲線の量的な解析
 O2が見かけの光合成に及ぼす影響
 気孔によるCO2交換の調節
  光に依存した気孔の開口の調節/水に依存した調整のメカニズム/気孔の動きの水力学
第15章 C4植物とCAM植物
 C4光合成
 C4ジカルボン酸回路
 C4光合成の生態学的側面
  C4光合成の遺伝生理学的側面/補遺:水生植物におけるCO2濃縮機構
 CAM:C4光合成の代替
 CO2固定による同位体効果
第16章 水と無機イオンの代謝
 水
 植物の無機栄養
 必須微量元素
 栄養元素の代謝における役割
  多量元素/微量元素
 塩植物性における塩分泌
 フィトケラチンによる重金属の除去
第17章 生態系における物質循環とエネルギーの流れ
 炭素と酸素の循環
 窒素循環
 エネルギーの流れ
第18章 生合成
 一次代謝と二次代謝
 シキミ酸経路
 クロロフィルの生合成
第19章 発生の生理学
 基礎論
  適切な用語/発生の恒常性/発声と核型/ゲノムと環境/世代の交代/発生の二者択一の戦略
 成長
  成長の測定/成長の記載法/相対成長/分裂組織の成長
 分化
  決定と分化/分化と転形/分化の問題に関する最近の観点
 パターン形成と形態形成
  葉序/葉の発生/葉の発生におけるパターンの決定と発現/シュート軸の構成/花の形成における発生の恒常性/形態形成の突然変異/細胞の応答能の意味/相関/再分化/病的な形態形成
 植物における腫瘍の形成
  クラウンゴール/遺伝的腫瘍
 Acetabularia(カサノリ)の形態形成
  Acetabulariaという生き物
  Acetabulariaの実験系としての利点
  原形質の一次核に対する影響
 「形態形成物質」の生化学的性質
  Acetabulariaの光形態形成 
第20章 性の生理学
 下等植物の配偶子形成とフェロモンの影響に関する五つの研究事例
  研究事例1:クラミドモナスの配偶子形成
  研究事例2:褐藻類における配偶子誘引物質
  研究事例3:サヤミドロの有性生殖のフェロモンによる統合
  研究事例4:パン酵母におけるフェロモン(性フェロモン)
  研究事例5:アンセリジオール,ワタカビのフェロモン
 顕花植物類における受精
 母性遺伝および父性遺伝
 雄性不稔性
第21章 光形態形成
 作用スペクトル
  誘導条件(conditions of induction)での作用スペクトルの解釈
  定常状態(steady state)における作用スペクトルの測定
 色素
 フィトクロム
  フィトクロムの光生物学的性質/フィトクロムの分子としての性質
 光形態形成におけるフィトクロムの作用様式
 フィトクロム作用の四つの研究事例
  研究事例1:光形態形成の分子レベルモデルとしてのカラシ芽ばえPfr誘導アントシアニン合成
  研究事例2:カラシ芽ばえ光形態形成においてPfrが閾になる調節
  研究事例3:すでに緑化した植物の発達に対するフィトクロムの作用
  研究事例4:フィトクロムと内在の調節要因
 光センサー間の協同作用
 ポジティブなUV―B作用:懸濁培養細胞でのフラボン配糖体合成
 菌類の光形態形成
  研究事例1:不完全菌類Trichoderma virideでの分生子形成の光誘導
  研究事例2:マイコクロム(mycochrome)と不完全菌類Heminthosporium oryzae HA2の分生子の発達/子嚢菌類Gelasinospora reticulisporaでの子嚢殻形成の光誘導
 菌類光形態形成の生化学的モデル:カロテロイド生合成 
第22章 緑葉体の発達
 クロロフィル合成の制御
 ホロ複合体の形成
 ストロマ中の酵素の調節
 色素体因子
 葉緑体発達中の硝酸同化装置の形成
  例1:亜硝酸レダクターゼ(NIR)の制御
  例2:硝酸レダクターゼ(NR)の制御
第23章 ホルモン作用の生理学
 植物ホルモンの構造と機能の概観
  オーキシン/ジベレリン/サイトカイニン/アブシジン酸/エチレン/さらに他のホルモンに似た特徴をもつ物質
 ホルモン作用の生理学の六つの研究事例
  研究事例1:イネ科葉鞘の伸長成長におけるオーキシンの作用機構
  研究事例2:組織培養における分裂活性と器官形成のホルモンによる調節
  研究事例3:イネ科の穎果における貯蔵物質可動化の胚依存的ホルモン調節
  研究事例4:短日処理による芽の休眠誘導時のホルモン感受性調節
  研究事例5:浮きイネ(deep-water rice)の伸長成長のホルモンによる2段階の調節
  研究事例6:半水生植物の葉の二型性のホルモン調節
第24章 生殖器官と散布器官の成熟と発芽
 成熟種子の発生
  組織分化/種子の成熟/種子成熟の制御
 成熟種子の発芽
  発芽の生理学的解析/発芽の生化学的解析/発芽の物理学的解析
 胚の発生時における遺伝子発現の制御
 種子による果実発達の制御
 芽の休眠と発芽 
第25章 花芽形成と光周性・温度周期性
 花成誘導と形態形成
 花芽形成とフロリゲン
  1.栄養茎頂の自律的な転換/2.花成ホルモンによる栄養茎頂の転換
 光周性
  限界日長/光周期の受容体としての葉
 接木実験とフロリゲン
  阻害物質の役割は何か?/二次誘導
 花芽形成とジベレリン
 フィトクロムと光周性
 光周性と概日リズム
 花芽形成以外の光周的な現象
 光周性の意義
 春化(バーナリゼーション) 
第26章 老化の生理学
 一稔性植物(一回結実性植物)
 多年生植物の葉の老化
  色素体の分解/クロロフィルの分解/RNAの分解/緑葉の老化の生理学/外的要因の効果/秋の紅葉/花弁の老化
第27章 再生と移植の生理学
 器官培養からの知見
 組織培養技術の特色
 分化した細胞が全能性を有していることの証明
  シダの前葉体を使った再生実験/ベゴニア(Begonia)の葉を使った再生実験/単離した細胞からの試験管内での再生/分化と再生/花粉から単相性の胞子体の形成(再生)/まとめ
 体細胞雑種(類似有性交雑)
 傷害の治癒
 再生中に起きる要因間の協調
 花形成を伴う再生実験
 細胞内の再生
 移植
  植物生理学における接木技術
 キメラ
第28章 電離放射線の影響
 励起と電離放射線
 電離放射線のタイプ
 電離の過程
  線量測定/電離の密度/放射線影響の時間的経過
 ターゲット説に関するいくつかの意見
 細胞内成分に対する電離放射線の影響
 DNA中の放射線による損傷の修復
 細胞の高次構造に対する電離放射線の影響
  長期間の残存する影響/多少とも修復可能な影響/同一の植物の異なる組織で感受性が異なる例/電離放射線のプラスの影響はあるのだろうか?/未成熟分化
第29章 導管による物質移動の生理学
 根圏から根の導管に至る輸送経路
 根系と根毛
 2種類の植物の輸送系
 導管液中の窒素化合物
 蒸散とイオン供給
 水バランス
 水輸送経路
 古典的な実験
 蒸散
  木の高さの限界/永久しおれ点
 植物内水輸送のモデル
 樹木での水ポテンシャル
 出液(guttation)と根圧
第30章 師管転流の生理学
 基本的な側面
 転流経路
 転流物質
  師管液中の窒素/師管転流機構/師管への物質の積み込み過程/師管からの物質積み下ろし過程
 圧流説
 容積流説
 代謝産物の分配様式
 転流の双方向性
第31章 運動の生理学
 自由移動運動
  鞭毛の微細構造/鞭毛運動の力学/鞭毛をもつ細胞の自由運動への光の効果/ミドリムシ(Euglena gracilis)の光走性/シオミドロ類(Ectocarpus siliculosus)の配偶子の光走性/光走性の作用スペクトル
 光屈性
  原糸体/双子葉植物の芽ばえ/多細胞器官での光屈性の刺激―反応鎖/単子葉植物の子葉鞘/ヒゲカビ胞子嚢柄
 重力屈性
  基本現象/シャクジモ仮根/多細胞器官の平衡石概念/重力屈性の刺激―反応鎖/重力屈性反応の誘導/根での重力屈性実験/重力屈性とフィトクロム
 その他の運動の過程
  花粉管の成長/巻きひげの運動/膨圧運動/活発な細胞内運動
第32章 ストレス抵抗性の生理学
 水ストレス
  水ストレスに対する構成的抵抗性/中生植物における水ストレスに適応して誘導される抵抗性/水ストレスに対する耐性強化/塩ストレス
 温度ストレス
  高温ストレス抵抗性/熱ショックタンパク質/低温ストレス抵抗性/凍結ストレス抵抗性/
 光と紫外線によるストレス
  光合成の光阻害/紫外線障害抵抗性
 生物に起因するストレス(植物の病害)
  宿主と病原菌の相互作用/構成的な防壁(バリアー)による感染防御と菌類による突破/誘導性の防御機構,過敏感反応/植物毒素による宿主植物細胞の機能低下/植物がつくる抗生物質,フィトアレキシンと抗菌タンパク質/免疫かによる抵抗性の誘導/付録:菌根における植物と菌類の共生/ランの内生菌根・樹木の菌根
第33章 作物生産の生理学
 基本的な考え方
  問題点/用語の定義/収量とエネルギー/作物生理学の目指すところ/作物体および生産物の形成
 貯蔵物質の形成
 生産要因
 農産物生産の原理
 生産要因の最適条件:窒素
  肥料の補充/植物生産における窒素の効果/空気中の窒素の固定/新たな展開
 収量低下要因の抑制:除草剤
  広スペクトル除草剤と遺伝子工学/選択的な除草剤:2,4―Dを例として
 合成成長抑制剤
 遺伝的な要因の改良
  歴史的な流れ/古典的な育種
 遺伝子工学
  準天然の遺伝子運び屋としてのTiプラスミド/研究事例:植物による抗体の生産 

出版社からのメッセージ

本書は、1998年12月にシュプリンガー・ジャパン株式会社より出版された同名書籍を再出版したものです。
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本書は、書籍からスキャナによる読み取りを行い、印刷・製本を行っています。
一部、装丁が異なったり、印刷が不明瞭な場合がございますが、ご了承くださいますようお願い申し上げます。
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定価:9,460円
(本体8,600円+税10%)
在庫:絶版