内容紹介
複雑系はいたるところに存在しており、科学の全分野において複雑系を取り扱わなければならない。本書はこうした複雑系を統一的観点から取り扱う概念と方法を提供する。統一的なアプローチの基本的なアイデアはシナジェティックスから発していて、複雑系の振舞いが定性的に変化をする現象に注目する。さらに、情報の様々な側面について考察を進め、シャノン情報のように意味を払拭してしまった取り扱いから、受け手における情報の効果、意味の自己創生といった範疇にまで議論を広げていく。
目次
第1章 複雑系への挑戦
1.1 複雑系とは何か?
1.2 複雑系をどのように取り扱うか
1.3 モデル系
1.4 自己組織化
1.5 普遍性を目指して
1.6 情報
1.7 シナジェティックスの第二番目の基礎
第2章 微視的世界から巨視的世界へ・・・
2.1 記述のレベル
2.2 ランジェバン(Langevin)方程式
2.3 フォッカー・プランク(Fokker-Planck)方程式
2.4 詳細釣り合いの系に対するフォッカー・プランク方程式の厳密な定常解
2.5 経路積分
2.6 複雑さの縮約,秩序パラメータ及び隷属原理
2.7 非平衡相転移
2.8 パターン形成
第3章 ・・・再び:情報最大原理
3.1 基本的なアイディア
3.2 情報利得
3.3 情報エントロピーと拘束条件
3.4 連続変数
第4章 物理学からの例:熱力学
第5章 情報最大原理の自己組織化への応用
5.1 はじめに
5.2 自己組織系への応用:単一モードレーザー
5.3 位相的関係をもたない多モードレーザー
5.4 秩序パラメータに関して周期的となるような過程
第6章 非平衡相転移と情報最大原理:秩序パラメータの決定、隷属モード、パターン発現
6.1 はじめに
6.2 一般的なアプローチ
6.3 近似
6.4 空間パターン
6.5 空間パターン
6.6 ランダウの相転移理論との関連,フォッカープランク方程式に関する推測的考察
第7章 情報,情報利得,不安定点近傍における自己組織系の効率
7.1 はじめに
7.2 隷属原理とその情報量への応用
7.3 情報利得
7.4 例:非平衡相転移
7.5 単一のソフトモード不安定性
7.6 情報量と情報利得を測定できるか?
7.7 複数個の秩序パラメータ
7.8 単一秩序パラメータに関する情報量の計算
7.9 単一秩序パラメータに対する情報量,情報利得及び効率の厳密な解析的結果
7.10 クリモントヴィッチのS定理
7.11 非平衡相転移近傍における隷属モードの情報量への寄与
第8章 ラクランジュ乗数の直接的決定
8.1 臨界点上下での系の情報エントロピー
8.2 臨界状態及びその上下でのラグランジュ乗数の直接的決定
第9章 確率過程の自然なモデル化:経路積分をどう考えるか,フォッカー・プランク方程式,ランジェバン・伊藤方程式
9.1 一次元の状態ベクトル
9.2 多次元状態ベクトルへの一般化
9.3 拘束条件としての相関関数
9.4 短時間伝播子(Propagator)に属するフォッカー・プランク方程式
9.5 実験データからニュートンの法則が導出可能か?
第10章 物理系へのいくつかの応用
10.1 位相相関を有する多モードレーザー
10.2 分極及び反転を含む単一モードレーザー
10.3 流体力学:対流の不安定性
第11章 生物行動パターンにおける転移.例:手の運動
11.1 いくつかの実験事実
11.2 転位をどのようにモデル化するか?
11.3 臨界揺らぎ
11.4 いくつかの理論
第12章 パターン認識過程とその自然な推定:ラグランジュ乗数のあらわな決定
12.1 属性選択
12.2 パターン認識のためのアルゴリズム
12.3 シナジェティックコンピュータの基本構成原理
12.4 情報利得による学習
12.5 過程と連想作用
12.6 条件付き確率におけるラグランジュ乗数のあらわな決定.離散的及び連続的過程に対する一般的アプローチ
12.7 近似と平滑化の枠組み.付加的なノイズ
12.8 明快な例:ブラウン運動
12.9 近似と平滑化の枠組み,多重(かつ付加的な)ノイズ
12.10 ドリフト係数および拡散係数の計算例
12.11 過程のモデル化,予言と制御,ロボティックス
12.12 非マルコフ過程,カオス理論との繋がり
第13章 量子系
13.1 なぜ情報の量子論なのか?
13.2 情報最大原理
13.3 秩序パラメータ,隷属モードとパターン
13.4 秩序パラメータと隷属モードの情報量
第14章 終章:まとめと展望
出版社からのメッセージ
本書は、2002年12月にシュプリンガー・ジャパン株式会社より出版された同名書籍を再出版したものです。