気候変動対策
実現可能な

気候変動対策

政策・経済・技術・エネルギーのバランス
原書名 Climate Change Mitigation:A Balanced Approach to Climate Change
著者名 山口 光恒 監訳
秋元 圭吾
十市 勉
三村 信男
岡崎 照夫
発行元 丸善出版
発行年月日 2013年04月
判型 A5 210×148
ページ数 322ページ
ISBN 978-4-621-08657-5
Cコード 3054
NDCコード 519
ジャンル 科学一般 >  科学読み物

内容紹介

気候変動対策は、経済成長や貧困や世界の緊急案件を犠牲にして推し進めることはできない。とはいえ、気候変動問題はおそらく21世紀最大の環境問題であり、いますぐ世界が一つになって取り組まなければいけない問題でもある。世界の舞台でどんなことが問題になり、どんな交渉がされ、どんな問題が効果的な実施を困難にしているのか、日本はどんな立場をとっていくべきなのか。これまで国際交渉の場で繰り広げられてきた気候変動対策を丁寧に解説するとともに、今後世界がとり得べき対策について、第一線で活躍している研究者たちが、「気候変動対策の費用と効果のバランス」「気候変動対策とエネルギー安全保障や経済とのバランス」を軸に、実現可能なバランスのとれた気候変動対策を熱く解説する。また、これまでメディアを賑わせていた2℃目標の適切性についても深い論考を示しており興味深い内容になっている。

目次

1章 序
2章 気候変動対策の究極目標と,望ましく,かつ実現可能な国際枠組み
 2.1 気候変動対策の究極目標(気候変動枠組み条約第2条))と2℃目標
  2.1.1 第2条成立の経緯
  2.1.2 第2条の解釈
  2.1.3 G8および国際交渉での2℃目標
 2.2 縦のバランスからみた2℃目標
  2.2.1 工業化以降2℃の気温上昇は“危険”か  
  2.2.2 適応を考慮しないのは非現実的 
  2.2.3 大災害と2℃目標  
  2.2.4 2℃目標の実現可能性  
  2.2.5 不確実性と2℃目標  
  2.2.6 費用便益からみた2℃目標 
 2.3 横のバランスからみた2℃目標:希少資源の効率的配分
 2.4 望ましくかつ実現的な国際枠組み
  2.4.1 現状
  2.4.2 法的拘束力のある条約は機能するか
  2.4.3 プレッジ・アンド・レビューが第一歩としてベスト
  2.4.4 共通だが差異ある責任(CBDR)
  2.4.5 適応,技術普及と開発,資金といった多くの要素を考慮すべし
  2.4.6 最後の手段としてのジオエンジニアリング
 2.5 おわりに 
3章 緩和目標と国・地域間における公平な緩和努力
 3.1 緩和コスト,温暖化ダメージコスト,持続可能な発展の視点からの気候変動緩和目標
  3.1.1 温暖化緩和とダメージコストの視点からの気候変動緩和目標 
  3.1.2 持続可能な発展の視点からの気候変動緩和
 3.2 主要経済国の中長期排出削減目標の分析
  3.2.1 GHG排出削減努力の共有のための方法論
  3.2.2 国,地域間の排出削減努力の共有となる合理性があり適切な中期緩和目標の分析
  3.2.3 国,地域間の排出削減努力の共有となる合理性があり適切な長期緩和目標の分析 
  3.2.4 排出割当の政策的含意  
 3.3 おわりに
4章 バランスのとれたエネルギー安全保障と気候変動対策
 4.1 3目標(経済発展,エネルギー安全保障,気候保護)をどう実現するか
  4.1.1 世界のエネルギー起源CO2排出量の推移  
  4.1.2 エネルギー政策とエネルギー選択への影響 
  4.1.3 エネルギー貧困 
 4.2 各エネルギー源の長所と短所
  4.2.1 石油  
  4.2.2 天然ガス 
  4.2.3 石炭 
  4.2.4 原子力エネルギー
  4.2.5 水力発電  
  4.2.6 バイオ燃料  
  4.2.7 その他再生可能エネルギー
 4.3 主要国のエネルギーミックス
 4.4 世界のエネルギー展望と気候保護の課題
  4.4.1 世界のエネルギー需要とCO2排出量:二つのシナリオ 
  4.4.2 世界のエネルギー安全保障と気候保護に及ぼすアジアの影響
 4.5 おわりに
5章 緩和コスト
 5.1 緩和技術のコスト
  5.1.1 再生可能エネルギー  
  5.1.2 原子力  
  5.1.3 高効率化石燃料発電  
  5.1.4 二酸化炭素回収貯留(CCS) 
  5.1.5 植林・森林管理  
  5.1.6 CO2緩和コスト  
 5.2 温暖化緩和の経済影響
  5.2.1 マクロ経済としてのコスト  
  5.2.2 エネルギー・経済モデルによる分析  
  5.2.3 緩和コストのまとめと含意  
6章 緩和と適応のバランス
 6.1 気候変動の影響
  6.1.1 気候変動の将来予測 
  6.1.2 世界に対する影響予測  
  6.1.3 日本に対する詳細な影響の予測 
 6.2 緩和策と適応策の目標と役割
  6.2.1 緩和策と適応策の役割  
  6.2.2 適応の方法と適応能力  
  6.2.3 適応のコスト
 6.3 適応策の主流化と持続可能な発展
7章 気候変動政策
 7.1 国際気候変動政策
  7.1.1 状況変化  
  7.1.2 不確実性下での価格アプローチと数量アプローチ  
  7.1.3 マクロ経済の変動(不確実性)と政策の強靱さ  
  7.1.4 セクター別アプローチ  
  7.1.5 モントリオール議定書の教訓 
  7.1.6 貿易,投資,環境 
  7.1.7 グリーン成長(Green Growth)
  7.1.8 資金援助  
 7.2 国内政策
  7.2.1 国内政策と評価基準  
  7.2.2 市場ベースの手法(経済的手法)と直接規制  
  7.2.3 EU ETS(EUのcap&trade) 
  7.2.4 排出権取引:日本の場合  
  7.2.5 自主的手法:日本の場合  
  7.2.6 再生可能エネルギーの促進:固定価格買取(FIT)制度
8章 エネルギー効率向上のポテンシャルと障壁
 8.1 はじめに
 8.2 エネルギー効率向上ポテンシャル
 8.2.1 発電部門
  8.2.2 鉄鋼部門  
  8.2.3 セメント部門  
  8.2.4 運輸部門  
  8.2.5 家庭・業務部門  
 8.3 技術普及障壁と政策的含意
  8.3.1 技術普及障壁  
  8.3.2 技術普及障壁に関連した試算例と政策的な含意  
9章 技術普及・開発
 9.1 鉄鋼セクターにおける技術の開発・普及および経験
  9.1.1 鉄鋼セクターの特徴と気候変動問題への取り組み 
  9.1.2 日本の鉄鋼業界における技術の現状 
  9.1.3 技術普及の促進活動の実態  
  9.1.4 官民連携活動のさらなる発展 
 9.2 自動車および自動車社会における開発と技術革新
  9.2.1 プリウスの開発  
  9.2.2 茅方程式から導かれる交通セクターの気候変動解決策 
  9.2.3 日本の交通・エネルギーモデル都市におけるバランスのとれたアプローチ
  9.2.4 自動車のイノベーション 
  9.2.5 おわりに  
10章 福島第一原子力発電所事故と日本のエネルギー、気候変動政策への影響
 10.1 日本のエネルギー政策への影響
  10.1.1 震災でエネルギーシステムに何が起こったか 
  10.1.2 日本の持続可能な電力需給に向けた戦略 
  10.1.3 日本のエネルギー政策の選択肢  
  10.1.4 2030年までの長期電力需給解析  
  10.1.5 不確実性と電力需給ベストミックス 
 10.2 日本の気候変動政策への影響
  10.2.1 京都議定書への影響  
  10.2.2 中期目標への影響 
 10.3 福島第一原発事故以降のエネルギー・環境戦略の動向,分析
  10.3.1 政府のエネルギー・環境戦略立案の動向 
  10.3.2 エネルギー・環境会議の選択肢の概要  
  10.3.3 エネルギー・環境会議の各選択肢の経済分析 
  10.3.4 戦略の修正案 
  10.3.5 まとめ  
 10.4 原子力事業者の責任原則
  10.4.1 日本の状況:無限責任 
  10.4.2 電力国有化と被害者救済 
  10.4.3 被害者救済と原子力事業の健全な発展
11章 IPCCとコミュニケーション

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