人類と感染症の歴史

人類と感染症の歴史

未知なる恐怖を超えて
著者名 加藤 茂孝
発行元 丸善出版
発行年月日 2013年03月
判型 A5 210×148
ページ数 196ページ
ISBN 978-4-621-08635-3
Cコード 0047
NDCコード 493
ジャンル 医学・薬学 >  医学一般 >  医学読み物

内容紹介

「得体の知れないものへの怯え」を超えて 著者はウイルスの専門家。ウイルスは人に感染し、社会制度、政治、社会心理など極めて関係が深い。2003年SARS、2009年「新型インフルエンザ」の緊張と混乱は人々の不安を増した。感染症が社会に対していかに大きな影響を与え、いかに歴史を動かして来たかを本書で明らかにする。なぜ、感染症は絶えないのか?なぜ新たな感染症が出現してくるのか?人類はどのように感染症と戦って生き延びてきたのか?科学はこの見えないものへの怯えをいかに減らしてきたか?そして、我々は、どこへ行くのか? 本書の内容は、感染症を40%、歴史を40%、残り20%をその間を繋ぐ社会心理的なものに充てた。感染症の歴史は、人々の不安の歴史でもある。明治期より近代微生物学の進展がその不安を減らしてきた。それでも、肉眼で見えないことの恐怖は消えない。次々と新しく出現する新興感染症。

目次

第1章 「人は得体の知れないものに怯える」
 I.闇の中には魑魅魍魎(ちみもうりょう)
 II.感染症の怖さ
 III.科学はどこまで不安を減らせるのか?
第2章 「天然痘の根絶-人類初の勝利」——ラムセス5世からアリ・マオ・マーランまで
 I.ブッシュ大統領のTV声明
 II.ラムセス5世——最古の患者?
 III.日本への伝播
  1.奈良の大仏
  2.義孝の夭折と道長の栄華
  3.百万遍
  4.あばたと失明
  5.疱瘡神や赤い色
  6.孝明天皇の死
 IV.新大陸への伝播
  1.インカ帝国,アステカ帝国の崩壊
  2.最初の生物兵器——フレンチ・インディアン戦争
  3.アメリカ独立戦争とカナダ
 V.ジェンナーの贈り物
 VI.種痘法の伝来、緒方洪庵と種痘所
 VII.根絶宣言
 VIII.根絶以後
  1.バイオハザード
  2.ワクチニアウイルス——Vaccinia virusと遺伝子治療
  3.バイオテロ
  4.橋爪株
 IX.天然痘に関連する動物感染症
 X.教訓 
第3章 「ペスト」——中世ヨーロッパを揺るがせた大災禍
 I.化石のような病気? カミュとシェイクスピアの描いた「ペスト」
 II.ペストの歴史
  1.ペストは本来ネズミの感染症
  2.東ローマ帝国での流行(第1回の世界流行)
  3.モンゴル軍の大移動が引き金となった中世ヨーロッパでの大流行(第2回の世界流行)
  4.それ以降の流行
  5.第3回の世界流行
  6.日本への輸入は明治時代
 III.ペストに伴うヒトの心理と行動
  1.デカメロン(そしてじゃじゃ馬馴らし)への逃避行動
  2.ハメルンの笛吹き男と魔女狩り
 IV.ペスト菌の発見と病態解明、治療
  1.ペスト菌の発見
  2.ペストの病態と治療
 V.最近の話題
  1.ペスト菌の遺伝子系統が明らかに
  2.中世のかつらは、のみしらみ除け?
  3.ペスト菌の学名
  4.ペスト流行の現状
  5.ペストの暗部
  6.実験室や野外の事故
 VI.ペストの教訓とペスト消長の理由
第4章 「ポリオ」——ルーズベルトはポリオではなかった?
 I.1961年夏——ポリオ騒動
 II.ポリオの歴史
  1.古代エジプトのレリーフと日本の古代人骨
  2.ルーズベルト大統領とポリオ
  3.ポリオを克服した人々
 III.ポリオウイルスとワクチン
  1.ポリオウイルスの発見とワクチン作り
  2.カッター社事件
 IV.日本のポリオ
  1.日本におけるポリオ「根絶」への道
  2.日本ポリオ研究所の設立と国家検定
 V.ポリオウイルス研究の進展
  1.感染性クローンとレセプター
 VI.世界のポリオ根絶計画へ
 VII.意外な事実
  1.ルーズベルトはギランバレーだった?
  2.上田哲の死
  3.ポリオの優等生と麻疹の劣等生  
第5章 「結核」——化石人骨から国民病、そして未だに
 I.身近だった結核
 II.歴史上の結核
  1.9,000年前にはすでにヒト型結核菌
  2.弥生時代に日本へ
  3.枕草子と源氏物語に書かれた結核
  4.鎌倉末期の人骨から結核菌DNA
  5.戦国から江戸時代の結核
 III.近代の結核大流行の背景
  1.産業革命と結核の大流行
  2.国民病(亡国病)、明治——戦前の文学者と結核、女工哀史
 IV.結核療養所
 V.病原体の発見と病態の解明
  1.コッホの結核菌発見とコッホの原則
  2.分かってきた結核の病状
  3.日本の結核研究所
 VI.結核治療
  1.BCG、tuberculin
  2.ストレプトマイシンと化学療法剤による患者の激減
  3.複十字シール
 VII.結核に関連する話題
  1.結核の迅速診断
  2.結核菌とハンセン病菌との近縁関係
  3.日本における再興感染症としての結核
 VIII.なぜ、また結核なのか?
  1.菌の逆襲――薬剤耐性、超多剤耐性菌
  2.エイズと結核との結びつき
  3.日本における再興感染症としての結核
  4.膀胱がん治療への応用
 IX.「過去」の病気にするために
第6章 「麻疹(はしか)」——天然痘と並ぶ2大感染症だった
 I.麻疹の3エピソード
  1.コナ・コーヒー
  2.麻疹、大学の困惑――成人麻疹
  3.麻疹で片目を失明
 II.麻疹の歴史
  1.麻疹ウイルスは牛から
  2.麻疹、はしかの語源
  3.摂関政治——天然痘で栄え、麻疹で衰退
  4.時頼の出家
  5.「はしか」罹って初めて一人前
  6.徳川綱吉の死、そして幕府の崩壊
 III.麻疹の伝播と流行の周期性
 IV.麻疹の研究
  1.研究の曙
  2.麻疹ウイルスの発見とワクチン製造——エンダース
  3.臨床症状
  4.小船ウイルスの発見とサル症状
  5.3種混合ワクチン
  6.WHO世界麻疹排除計画
  7.麻疹ウイルスの遺伝子型
  8.感染症RNA
  9.麻疹の仲間のウイルス発見
  10.2度なし病の意味と成人麻疹
 V.2012年を目指して
第7章 「風疹」——母子感染による難聴の野球選手
 I.難聴の野球選手
  1.大リーガーCurtis Pride
  2.遥かなる甲子園
 II.風疹が認められるまで
  1.風疹の独立
  2.眼科医Greggの慧眼——先天性風疹の発見 
 III.風疹ワクチン
  1.ウイルスの分離とワクチンの開発
  2.女子中学生が、全幼児か?
  3.妊婦へのワクチン接種
 IV.病原性と診断
  1.病原性、臨床症状
  2.CRSの治療
  3.日本本土へのCRS
  4.胎児遺伝子診断法の確率
  5.TORCH因子
 V.風疹の研究
  1.遺伝子型
  2.戦争で拡散? 世界流行の原因
  3.自閉症とは無関係だったMMR
  4.実験動物の開発
 VI.CRSに抗して
  1.勇気ある人々
  2.先天性風疹の根絶の日を 
8章 「インフルエンザ」——人類に最後まで残る厄介な感染症
 I.2009年という年——民主党政権とインフルエンザ・パンデミック
 II.名前の由来——インフルエンザは星から来たのか?
 III.歴史上のインフルエンザ
  1.最初のインフルエンザ
  2.日本での記録
 IV.病原体の発見
  1.ヘモフィルス・インフルエンザ菌
  2.ウイルスの発見
 V.新型の発見
  1.パンデミックの歴史
  2.A型ウイルスの1亜型の独占的流行(?)
  3.ウイルスはシベリアやアラスカでh損
  4.鳥インフルエンザは鳥からヒトへ直接感染した
  5.5H5N1は、なぜ鳥からいきなりヒトに?
 VI.最大のパンデミック
  1.スペインインフルエンザ(スペインかぜ)
  2.スペインインフルエンザ(スペインかぜ)の死亡者
 VII.対策
  1.有効な公衆衛生的対策は何か?
  2.なぜ、2009年の新型で日本の感染死亡者は少なかったのか?
  3.ワクチン
  4.抗ウイルス剤
 VIII.インフルエンザウイルスの研究
  1.遺伝子からインフルエンザウイルスを作る
  2.インフルエンザの死亡者数——超過死亡からの推計
 IX.不安の克服
  1.狼少年、狼少女たち
  2.官僚組織は素人集団?
  3.対策の根本は社会心理学的な問題の解決
 X.最近の出来事
  1.新型ウイルス分離株の提供
  2.高病原性鳥インフルエンザウイルスH5N1は、シベリアに定着した?   
  3.デュアルユースについて
  4.法の制定
  5.タミフルの廃棄
9章 「ウエストナイルウイルス」——アレキサンダー大王の死因?
 I.バビロンとニューヨーク
  1.アレクサンダー大王の死
  2.ニューヨークのカラスの死
 II.ウイルスの分布と伝播
  1.WNウイルスの発見と世界分布
  2.トリを好む蚊
  3.WNウイルスの感染サークルと伝播
  4.日本への輸入例
  5.WNの症状
  6.地球温暖化との関連
  7.南アフリカ2009年
 III.アレクサンダーの死因——再び、バビロンへ
10章 「ネットワークで感染症に備える」-今日りんごの木を植えよう
 I.1枚のペルシャ絨毯
 II.感染症に国境なに
 III.感染症は人類の歴史と共にあり
 IV.新興感染症は今後も絶えない
 V.情報の共有と協力
 VI.パスツールのネットワーク
 VII.オックスフォードのネットワーク
 VIII.CDCのネットワーク
 IX.WHOのリーダーシップ
 X.新興のJ―GRID(日本)
 XI.科学は不安をどこまで減らせるか?
 XII.科学と宗教
 XIII.野口英世
 XIV.天然痘根絶を思い起こそう
 XV.地震・津波などの危機管理との共通性
 XVI.新しい哲学を——今日りんごの木を植えよう

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