内容紹介
「臨床・看護現場で患者との接点で生じる様々な問題を解決するための学問」と位置づけられるのが『看護倫理(=医療倫理学の中から看護に関する部分を抽出したもの)』である。看護師-患者間で起きる大小様々な医療過誤(事故)の問題をうけ、現在、看護師国家試験では看護倫理分野からの出題が義務化されている。 本書では看護学部生相手に必修科目「看護倫理(医療倫理)」を教えてきた執筆者らが、長年の教授経験に基づいて書き下ろすこの分野の定番を目指したテキスト。各章末にはコラムと看護倫理演習を掲載。
目次
序章 なぜ、医療倫理を学ぶのか
1.医療における看護の位置づけ:歴史的経緯
2.チーム医療の時代における看護
3.Professionと責任
4.在宅ケア
■コラム:看護専門外来/看護倫理演習
1章 生命倫理の方法と医療倫理
1.医の倫理:パターナリズム
2.ナーシングエシックスの誕生
3.バイオエシックスの誕生
4.医療倫理の4原則
5.「バルセロナ宣言」の4原則とユネスコの「生命倫理と人権に関する宣言」
6.医師の倫理規範:ジュネーヴ宣言――医の倫理の国際綱領
7.世界の看護師倫理規定:ICN倫理綱領・ANA倫理綱領
8.日本の看護師倫理綱領
■コラム:倫理綱領の比較/看護倫理演習
2章 患者の権利と生命倫理
I.患者の権利に関する宣言――インフォームドコンセント,自己決定権
1.リスボン宣言
2.患者の権利章典(概要)
3.WHO(世界保健機関)憲章
4.アルマ・アタ宣言:プライマリー・ヘルス・ケアの考え方
5.オタワ憲章
II.患者中心の医療とチーム医療
1.疾病(disease)と病(illness)
2.科学的医療とケアの倫理:cure-care-healing
3.苦しみ(suffering)の意味と医療
4.チーム医療の倫理:特に医師-看護師関係に触れて
III.医療者‐患者関係におけるコミュニケーション
1.言語的コミュニケーションと非言語的コミュニケーション
2.コミュニケーションの構成要素
3.異文化コミュニケーション
4.対人関係における心理的要因
5.患者の心理状態への配慮と対応:リスニングスキルとアサーション
6.病気と患者の心理・家族の心理
7.倫理コンサルテーション
8.医療情報と情報倫理
■コラム:患者‐医療従事者関係/看護倫理演習
3章 インフォームド・コンセントと意思決定の支援
1.自律原則
2.インフォームド・コンセント
3.アドボカシー
4.告知:患者と家族の間で
5.守秘義務
6.判断能力のない子供
7.判断能力を欠いた成人
8.精神疾患病患者の場合
9.輸血拒否
10.コンプライアンスとアドヒアランス
■コラム:倫理委員会/看護倫理演習
4章 看護研究と臨床研究の倫理
1.ニュルンベルク綱領
2.ヘルシンキ宣言:変遷と内容の概略と課題点
3.ベルモント・レポート
4.臨床研究に関する倫理指針――概要と特徴
5.ICN看護研究のための倫理指針(2003年)
■コラム:20世紀最悪の言葉/看護倫理演習
5章 看護教育
1.看護教育の歴史
2.日本の看護教育
3.アメリカの看護教育
4.看護職の国際比較
5.専門看護師:新しい看護職のあり方
■コラム:人相手の仕事って面白くない?!/看護倫理対策
6章 看護の倫理
1.ナイチンゲール
2.ナイチンゲール誓詞
3.ケアリングの倫理としての看護倫理
4.ケアの概念:前史
5.「ケアの倫理」論争:ギリガン,ノディングス,クーゼ
6.看護学におけるケア理論:ワトソン,ベナー
7.看護倫理のキーワード:アドボカシー,責務,協力,ケアリング
8.倫理的意思決定モデル
■コラム:倫理って何?/看護倫理演習
7章 生殖医療と生命倫理
1.生殖技術
2.不妊治療
3.着床前・出生前診断
4.人工妊娠中絶とパーソン論
5.生命の神聖さと女性の権利
6.先端医療技術と人間の尊厳
7.妊娠中絶と生殖技術保護の各国の法的対等
■コラム:救世主兄弟/過去演習問題集
8章 脳死・臓器移植と生命倫理
1.死の定義:脳死は人間の死か
2.脳死と現代医療の中の死の意味
3.臓器移植は許されるか(臓器移植の問題点、臓器売買、人間の尊厳)
4.ドナーとリビング・ウィル
5.移植法改正
6.生体間移植:日本の実情
7.日本における臓器移植に関する法律
8.世界の脳死と臓器移植に関する法律
■コラム:エアランゲン事件/看護倫理演習
9章 終末期医療と生命倫理
1.終末期医療とは
2.延命とQOL
3.尊厳死・安楽死
4.世界における安楽死・尊厳死に関する法律
5.緩和(医療)ケア
6.セデーション
7.患者の意思表示(事前指示)
8.死ぬ権利
9.スピリチュアルケア
10.在宅ホスピス
11.世界と日本のホスピス医療の歴史と現在・今後の展望
■コラム:尊厳死/看護倫理演習
10章 先進医療と生命倫理
1.遺伝子診断・治療
2.再生医療
3.万能細胞ES/iPS
4.クローン技術
5.難病治療
6.脳科学
7.エンハンスメント
■コラム:ES細胞の研究利用と特許/看護倫理演習
【巻末資料】[1]看護者の倫理綱領/[2]ICN看護師の倫理綱領/[3]ニュルンベルク綱領/[4]
ヘルシンキ宣言
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