量子場とミクロ・マクロ双対性

量子場とミクロ・マクロ双対性

著者名 小嶋 泉
荒木 不二洋 監修
大矢 雅則 監修
発行元 丸善出版
発行年月日 2013年07月
判型 A5 210×148
ページ数 276ページ
ISBN 978-4-621-06511-2
Cコード 3042
NDCコード 421
ジャンル 物理学 >  量子力学
物理学 >  シリーズ物理学 >  量子数理シリーズ

内容紹介

現代の量子力学の標準的定式化はミクロな現象の定量的な扱いを可能にし、画期的な成功を収めてきた。一方、ミクロな現象にマクロな解釈を与え、量子力学建設に至る過程で本質的な役割を演じてきた量子古典対応は、直観的イメージに明晰な数学的定式化が賦与されずに忘れ去られている。革新的な自然観の核であった量子古典対応を失った現代の量子力学の通説に従うならば、ミクロからマクロまでを貫く首尾一貫した合理的説明は原理的に不可能になり、この立場への過度な依存が量子観測問題をはじめとする本質的な諸問題の解決を阻んできた。「ミクロ・マクロ双対性」は量子古典対応の物理的な本質を現実的に運用可能にするための数学的方法論である。本書は、ミクロな世界とマクロな世界の相互関係の解明を阻む現代の量子力学に内在する問題点を明らかにし、これらの問題を解決すべくミクロ・マクロ双対性を核心に置いた新たな自然観の理論的定式化を提示する。

目次

第1章 量子論とは?
 1.1 量子論と「量子古典対応」
  1.1.1 量子力学の標準的理論構成=「初めにHilbert空間ありき」?
  1.1.2 有限自由度量子系vs.無限自由度量子系
  1.1.3 無限自由度量子系と「量子古典対応」
 1.2 量子論の代数的定式化‐物理量,状態概念,GNS表現
  1.2.1 物理量とその抽象的代数構造
  1.2.2 量子状態の一般的定義:期待値汎函数とGNS表現
  1.2.3 純粋状態と混合状態の統一的扱い:既約表現と可約表現
  1.2.4 古典系と量子系の統一的記述
 1.3 状態・表現の分類:準同値性vs.無縁性
  1.3.1 「重ね合わせの原理」とその例外=「超選択則」??
  1.3.2 有限自由度vs.無限自由度
  1.3.3 対称性とその破れ(その1)
 1.4 非同値性の概念:ユニタリー非同値vs.無縁性
  1.4.1  準同値性vs.無縁性と非自明な中心→ミクロ・マクロ双対性
  1.4.2 表現の準同値関係
第2章 量子古典対応/ミクロ・マクロ双対性/4項図式
 2.1 量子古典対応とミクロ・マクロ双対性
  2.1.1 セクターの拡張概念と量子古典複合系/量子古典境界
  2.1.2 ミクロとマクロの双対的関係
  2.1.3 ミクロ・マクロ双対性と4項図式
  2.1.4 ミクロ・マクロ双対性と「Duhem–Quineテーゼ」
 2.2 4項図式とFourier–Galois双対性/モナド–随伴–コモナド
  2.2.1 Fourier–Galois 双対性――帰納と演繹,分析と総合の双対性
  2.2.2 圏論とテンソル圏
  2.2.3 モナド―随伴―–コモナド
第3章ミクロ・マクロ双対性・4項図式の適用
 3.1 測定過程=セクター内部の探索
  3.1.1 セクター間vs.セクター内構造
  3.1.2 測定過程= セクター内部における量子古典対応
  3.1.3 群双対性とK-T作用素
  3.1.4  K-T作用素とHopf代数
  3.1.5 対象系と測定系のcoupling:測定相互作用とinstrument
  3.1.6 「測定値」を確定させる増幅過程=「デコヒーレンス」
 3.2 具体例の検討:Stern–Gerlach実験
  3.2.1 Stern–Gerlach実験への適用
  3.2.2 現実的な増幅過程の非理想性
 3.3 増幅過程から創発過程へ
  3.3.1 接合積とその双対性:「逆問題」におけるその機能
  3.3.2 ミクロ代数ℳの再構成とそのタイプ分類
第4章 ミクロ・マクロ双対性とセクター構造
 4.1 セクター構造と対称性
  4.1.1 Doplicher–Haag–Roberts セクター理論:見えるG-不変量A = XG vs. 見えない量子場X←G
  4.1.2 代数的量子場理論の基本仮定
  4.1.3 DHRセクター理論:内部対称性の起源としてのセクター構造
 4.2 セクター概念に基づくミクロ・マクロの統一的理解
  4.2.1 離散セクター:破れのない対称性の場合
 4.3 対称性の破れ(その2):一般的定義と秩序変数
  4.3.1 対称性の破れと“Augmented Algebra”
 4.4 対称性の明示的破れ:「スケール不変性」の破れに伴う秩序変数としての(逆)温度β
  4.4.1 逆温度β はアプリオリ・パラメータか物理量か?
  4.4.2 破れたスケール不変性をどう記述するか?
  4.4.3 状態のスケール変更
 4.5 対称性の自発的破れvs.明示的破れ
 4.6  「4項図式」から統計的推論へ:大偏差戦略
  4.6.1 セクター概念と大偏差原理,量子相対エントロピー
  4.6.2 大偏差戦略:レベル1,レベル2を中心に
  4.6.3 量子推定理論の展望
第5章 量子場理論:量子場の散乱過程と「ミクロ・マクロ双対性」
 5.1  《独立性》と《E = mc2》
  5.1.1 E = mc2 の意味?:独立性の「単位」としての自由粒子
 5.2 自由場= 独立性vs.相互作用=coupling=非独立性
  5.2.1 Heisenberg場の特徴づけ
  5.2.2 漸近条件とYang–Feldman方程式
  5.2.3 Haag-GLZ展開
 5.3 Coupling term :T exp(iJH ⊗ φin): の可換構造
  5.3.1 Lie 環構造
  5.3.2 相互作用による対称性Γの破れ
 5.4 散乱過程とインストゥルメントとの比較
  5.4.1 ミクロ・マクロ双対性としての「中心極限定理」
 5・5 S行列でintertwineされた漸近場の対φin/out からのHeisenberg 場ϕH 再構成
  5.5.1 局所可換性,PCT 不変性,S 行列とBorchers 同値類
第6章新たな展開に向けて
 6.1 スケール不変性の破れ:虚時間vs.実時間
 6.2 核型性条件とくりこみ可能性
  6.2.1 理想化された局所観測量としての1点上の量子場
   6.2.2 OPEとWigner–Eckart の定理との比較
 6.3 凝縮状態創発と相分離=強制法
  6.3.1 相分離過程としての創発
 6.4 「究極理論」vs.「Duhem–Quineテーゼ」
  6.4.1 「幾何学化原理」と「時空の物理的創発」との対比
  6.4.2 マクロレベルに固有の普遍性
  6.4.3 破れた対称性に伴うセクター束(sector bundle)
  6.4.4 対称性の破れとしての時空創発
  6.4.5 重力と一般相対論的時空の創発
  6.4.6 「等価原理」の新しい解釈と時空創発におけるミクロ・マクロ双対性
 6.5 自然認識における四つの大きな概念的飛躍について
付録A 群双対性,Hopf代数とKac‐竹崎作用素
付録B 接合積とGalois 拡大,Galois 双対性

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