生命を知るための基礎化学

生命を知るための基礎化学

分子の目線でヒトをみる
著者名 川井 正雄
発行元 丸善出版
発行年月日 2012年03月
判型 B5 257×182
ページ数 176ページ
ISBN 978-4-621-08504-2
Cコード 3043
ジャンル 化学・化学工学 >  化学一般・基礎化学 >  基礎化学
生物・生命科学 >  生化学・分子生物学

内容紹介

生命を知り、私たち自身を理解することを目的とした基礎化学の教科書。 まず、原子、分子、イオンについての基礎を学びながら、化学のみならず基本的な科学の知識を身につけ、次に生体を特徴づける重要な分子について知り、それらの知識をもとに生命の営みを学ぶ。 化学を楽しんで学べるように、各テーマにごとに、本文の理解を助けるユニークなコラムを100以上も配置しているのも本書の大きな特色。

目次

第1編 分子の基礎
 1章 水――身近にして奥深い存在
  1.1 はじめに――宇宙から水分子まで
   コラム1A 長さの単位――大きい数と小さい数
  1.2 生命と水――地球と海
   コラム1B 分子は小さい――太平洋に散った盃の水の行方?
   コラム1C 体積の単位――暮らしに残る尺貫法
  1.3 液体の水――すし詰めでうごめく水分子
  1.4 気体の水――水蒸気は高速飛行の水分子
   コラム1D ぺしゃんこのペットボトル――劇的な体積変化
  1.5 湿度――空気中の水分子
   コラム1E インフルエンザの流行と乾燥――微生物と湿度
  1.6 固体の水
   コラム1F 極寒を生き抜く水中の生物――水の体積変化の妙
   コラム1G 恐怖のDHMO――あなたならどうする?
 2章 原子―分子を構成する基本的パーツ
  2.1 原子の構造――原子核+核外電子
   コラム2A 自然は単純――元素と原子
  2.2 原子番号と元素記号――元素の性質は核外電子で決まる
  2.3 元素の周期表――原子番号と元素の性質の関係
   コラム2B 漢字の国の周期表――部首でわかる元素の分類
  2.4 原子核は陽子プラス中性子――同位体は中性子数が違う
   コラム2C 質量と重さ――どこが違うの?
   コラム2D SFの世界が医療の現場に――PET検査はプラスの電子
  2.5 不安定な同位体――放射線を出して壊変
   コラム2E 放射性物質と放射線量――ベクレル,シーベルト
   コラム2F 内部被ばくはなぜ怖い?――ヨウ素剤で抑える131Iの侵入
  2.6 物質量モル――多数をまとめてダース・グロスの原子版
  2.7 原子量――元素1モルの質量
   コラム2G 錬金術師は化学の恩人――“元素は不変”への挑戦
   コラム2H “化学”って悪者なの?――いえいえ,それは可哀想♪  
 3章 分子――原子がつくるオブジェ
  3.1 水素分子の成り立ち――電子対が原子をつなぐ
  3.2 メタン分子の形――海岸のテトラポッド
  3.3 水分子の成り立ち――シルエットはミッキーマウス
  3.4 氷の中の分子――水素結合が配列を支配
   コラム3A 雪も水の結晶――美しい形もづ徳とは無縁
  3.5 アンモニア分子――カメラの三脚の形
   コラム3B 分子の進化――生命の起源へのお膳立て 
  3.6 エタン分子――炭素―炭素結合が回転
  3.7 エタノール――アルコールの代表格
   コラム3C エタノールに変わりがあるじゃなし?――燃える前から同じもの
  3.8 エチレン――平たい二重結合分子
   コラム3D エチレンの意外な一面――植物ホルモン
  3.9 アセチレン――棒状の三重結合分子
   コラム3E アセチレンは“歩きなさい!”――アルキン分子  
 4章 イオン――電気を帯びた原子や分子
  4.1 陽イオンと陰イオン―プラス/マイナスをもつ粒子
  4.2 イオンの成り立ち――電子が足りない!電子が多い!
   コラム4A “マイナスイオン”――非科学的な存在?
  4.3 食塩の結晶――陽イオンと陰イオンの整列
   コラム4B 砂糖と塩――三塚で純粋な“さしすせそ”の“さ”と“し”
  4.4 塩の構成――周期表からわかること
  4.5 金属と金属イオン――性質はまったく異なる
   コラム4C “卑貴”こもごもの金属――イオン化しにくいものが効果
  4.6 水分子もイオン化している――ごくわずかだけど
   コラム4D 体脂肪計――はかるのは電気のとおりやすさ
  4.7 塩酸と酢酸――身近な酸
  4.8 アンモニアと水酸化ナトリウム――代表的なアルカリ
  4.9 中和反応――H3O+とOH-は出合って消える!
  4.10 水素イオン指数pH――酸性の強さの尺度
   コラム4E 何の何乗(指数計算)の逆は?――はい,対数(log)です! 
 5章 有機化合物――炭素を含む多様な分子
  5.1 有機化合物と生命力――常識を覆した尿素合成
   コラム5A アンモニアから尿素,尿酸へ――有害窒素の廃棄法の進化
  5.2 飽和炭化水素――メタンやエタンの仲間
  5.3 ジメチルエーテル――エタノールの異性体はスプレーの噴射剤
  5.4 アルケン類――エチレンの仲間と立体異性体
   コラム5B カイコの求愛――シス/トランスの違いは決定的
  5.5 環状炭化水素――リング状の仲間たち
   コラム5C テルペン類――頭も尾もあるC5ユニット
   コラム5D 一極集中より分散――電子は局在を嫌う
  5.6 エタノールの酸化――アセドアルデヒドと酢酸
   コラム5E 飲んだアルコールの運命――二日酔いはアセトアルデヒド
   コラム5F 還元――“もとに戻す”は酸化の逆
 6章 立体構造―—分子の形を考える
  6.1 光学活性――生体分子が偏光を回転
   コラム6A 偏光――3D映画の眼鏡は偏光板
  6.2 (+)-乳酸分子の構造――十字形の表記
  6.3 旋光性と鏡像異性体――鏡に映った瓜ふたつ
   コラム6B 鏡の国に行く分子
   コラム6C 鏡は左右を逆転するか?――十字形構造式では
  6.4 鏡像異性体の有無――グローブ分子か?軍手分子か?
   コラム6D 化学者は立体構造の賭に勝った!――有機分子の絶対配置
  6.5 環状化合物の立体構造――シクロヘキサンはビーチチェア
  6.6 コンホメーションと立体配置――移ろう姿と変わらぬもの
    コラム6E 京都か宇治か?――形を変えるエタン分子
  6.7 環構造の表記――ミントの香りのメントール
  6.8 立体異性体――立体配置の違いもさまざま
   コラム6F 正多角形,正多面体と有機分子――サッカーボール形のC60
第2編 生体分子
 7章 脂質――脂肪やステロイド分子
  7.1 脂肪分子――代表的な脂質
   コラム7A 高級な分子と低級な分子――社長さんもびっくり!
  7.2 脂肪酸の構造――飽和と不飽和
   コラム7B 不飽和脂肪酸は曲がったキュウリ――低融点とシス二重結合
   コラム7C 脂肪vs.筋肉,それとも芳香?――化合物の分類の話
  7.3 リン脂質――細胞の境界は脂質二重層
   コラム7D 界面活性剤は呉越同舟の功――親水性と疎水性
  7.4 ステロイド――コレステロールや性ホルモン
   コラム7E コレステロールは重要分子――でもなぜ善玉と悪玉がいるの?
 8章 糖質――グルコースからデンプンまで
  8.1 糖質――すなわち炭水化物
  8.2 グルコース――太陽の恵みが地球に満ちる糖
   コラム8A 変旋光――グルコースが2種類ある不思議
  8.3 グルコースの構造―一筋縄ではいかない奥深さ
  8.4 フルクトース――果物や蜂蜜の甘さ
  8.5 二糖――スクロースの仲間
   コラム8B 雨でよみがえる砂漠の植物――乾燥や極寒に耐えるトレハロース
   コラム8C 牛乳を飲むとおなかがごろごろ――日本人はラクトースが苦手
  8.6 多糖――デンプンとセルロース
   コラム8D お気に入りの分子の取り込み――シクロデキストリン
  8.7 ヘテロ多糖や複合糖質――糖鎖がベースの種々の生体分子
 9章 タンパク質――体内でいちばんの働き手
  9.1 タンパク質――語源はいちばんで卵白
  9.2 グリシン――もっとも単純なアミノ酸
  9.3 α―アミノ酸――タンパク質を組み立てる20種類の基本ブロック
   コラム9A α―アミノ酸の“α”って何?――ギリシャ語のはじめ
  9.4 種々のアミノ酸――20種類以外の変わり種
  9.5 ペプチド――数珠つなぎのアミノ酸
   コラム9B グルタチオン――細胞防衛隊のトリペプチド
  9.6 ペプチド鎖の形――αヘリックス
  9.7 タンパク質の形――一次,二次,三次,そして四次のケースも
   コラム9C どうやって2本の鎖を組み合わせたの?――インスリンの立体構造
   コラム9D 酵素は触媒――触媒は反応のトンネル
 10章 核酸――生命をつかさどる分子
  10.1 核酸――生命の中心
  10.2 DNAとRNAの構造――ポリヌクレオチド
   コラム10A 核酸の情報量――わずか4種類の文字で大丈夫なの?
  10.3 DNAの二重らせん――塩基の対が複製を可能に
   コラム10B 増える増えるDNA――PCR法
  10.4 mRNA――DNA情報が転写されるポリヌクレオチド
  10.5 tRNA――翻訳と運搬に携わる分子
   コラム10C 温泉好きの細菌――熱に丈夫なタンパク質と核酸
  10.6 タンパク質の生合成――アミノ酸を順序どおりにつなぐ
   コラム10D コラーゲンペプチドはお肌に届く?――タンパク質はアミノ酸から
   コラム10E 情報は核酸から――“中心教義”は研究でも
第3編 生命の営み
 11章 視覚――光と色を感じる
  11.1 光は波――波長と色
   コラム11A 虹は七色か?――連続的な縞模様
  11.2 光はエネルギーの粒――短波長ほど高エネルギー
  11.3 網膜の光受容体――視物質ロドプシン
  11.4 色素の色――分子による光の吸収
   コラム11B 染色で知る最近の外側の違い――グラム陽性菌,陰性菌
   コラム11C ホタルの光は蛍光に非ず――オワンクラゲは?
  11.5 紫外線と皮膚――日焼け防止とUVカット
   コラム11D 白内障――水晶体のタンパク質は返品交換なし
   コラム11E 白さが違う!――蛍光増白剤と白内障の術後
  11.6 赤外線――見えないけど暖かい光 
 12章 味覚と嗅覚――分子を感じる
  12.1 走化性と味覚――化学感覚
   コラム12A コンブのUMAMIは日本の誇り――甘苦酸塩に続く第5の基本味
  12.2 甘い分子――多彩な顔ぶれ,糖やペプチドなど 
   コラム12B 胃薬の研究から甘味ペプチド――人工甘味料は偶然の産物
  12.3 うま味分子――コンブに続いてカツオ節からも
  12.4 苦い分子――毒の味,良薬の味
   コラム12C 苦いか?苦くないか・それが問題!――フェニルチオ尿素
  12.5 酸味と塩味――酢と食塩の味
   コラム12D レモンがオレンジの味に!――これぞミラクル
  12.6 嗅覚――空気中の分子を感じる
   コラム12E においの感じ方にも個人差――臭気判定士へのテスト分子
   コラム12F フェロモンは仲間どうしの情報分子――ヒトでは? 
 13章 食事――燃料と原材料の取り込み
  13.1 食物――生きるための栄養補給
   コラム13A “おなか”はまだ“おそと”――消化から吸収へ
  13.2 デンプンの消化――グルコースは植物から動物へ
   コラム13B 脳細胞とグルコース――疲れた頭には甘いものを
  13.3 タンパク質の消化――胃酸で変性,酸素で切断
   コラム13C 胃袋の中にマイホーム――強酸性を生きるピロリ菌の工夫
  13.4 脂肪の消化と吸収――リパーゼが分解
  13.5 ビタミン――微量必須の有機分子
   コラム13D 遠洋航海は人体実験――ビタミン欠乏症の恐怖
  13.6 ミネラル――無機系の栄養素
   コラム13E 毒物のヒ素も栄養素?――すべてに適量が肝要
   コラム13F その栄養素は必須なの?――ミネラルは融通がきかない
 14章 呼吸――酸素の供給とエネルギーの生産
  14.1 酸素と食物――生体へのエネルギー補給
  14.2 外呼吸と内呼吸――肺と細胞での酸素の授受
   コラム14A 酸素の運び屋ヘモグロビン――アミノ酸一つの違いで大変
  14.3 生体内のエネルギー分子――ATP
   コラム14B 多水素・小酸素が高エネルギー――有機分子の酸化
  14.4 グルコースの生体内酸化――まず解糖で真っ二つに
  14.5 クエン酸回路――回転ベルトコンベアー式の酸化
  14.6 電子伝達系――ATP量産システム
   コラム14C ATPの生産工場ミトコンドリア――起源は別の生命体 
 15章 代謝――生体分子の合成と分解
  15.1 代謝経路,代謝回路,代謝網――化学反応のネットワーク
   コラム15A 生体分子のスクラップ&ビルド――絶え間ない部品交換
  15.2 同化と異化――生合成と分解反応
  15.3 フィードバック制御――過剰在庫の防止
  15.4 ホルモン――調和をつかさどるシグナル分子
   コラム15B 甲状腺ホルモン――不足の責任者は誰だ!
   コラム15C アンジオテンシン――血圧に関わるホルモンの登場から退場まで
 16章 神経と脳――情報通信ネットワーク
  16.1 神経系――すみずみまでの情報制御システム
  16.2 神経細胞――電気信号が神経繊維を進む 
   コラム16A 神経もエネルギーを消費する――流れに逆らうイオンポンプ
  16.3 神経伝達物質――神経細胞どうしをつなぐ化学信号
   コラム16B 神経毒サリンやメタミドホス――解除されない筋肉収縮命令!
  16.4 脳――記憶や感情が宿る140億の神経細胞
   コラム16C 血液脳関門――BBBは脳を守る場所
  16.5 心を左右する分子――安らぎのセロトニンや快感のドーパミン
   コラム16C 悪魔の分子――麻薬と覚醒剤
   コラム16E エンケファリン――内なるモルヒネ
 17章 健康と病気――生体防御と医薬品
  17.1 病気――健康を損なうさまざまな要因
  17.2 種々の生体防御――私たちの周囲は敵だらけ!
   コラム17A 酸素分子は過激!――仲間はずれの電子が二つ
   コラム17B ダイオキシンとPCB――毒性の評価は冷静に
  17.3 免疫――侵入者を見分けて捕らえる抗体分子
  17.4 化学療法――病原菌を抑える分子
   コラム17C 似て非なる分子のもたらす混乱――敵の毒が味方の薬
  17.5 抗生物質――微生物がつくる分子が微生物を制する
   コラム17D 抗生物質と病原菌の闘い――いたちごっこは続く
  17.6 抗ウイルス薬――インフルエンザ対策
   コラム17E タミフルの合成原料――香辛料“八角”とインフルエンザの縁
   コラム17F 酒は百薬の長?――アルコールは薬の敵です!
 18章 遺伝――世代をつなぐDNAのたすき
  18.1 染色体とゲノム――両親から受け継いだ一式のDNA
  18.2 父からのDNAと母からのDNA――消える情報と残る情報
   コラム18A ミトコンドリア・イブ――女系遺伝の始祖?
  18.3 対立遺伝子――現れる情報と隠れる情報
   コラム18B 血液型A,B,AB,O——違いは赤血球表面の糖1個
  18.4 遺伝子の多型――ヌクレオチド1個の変位SNP
   コラム18C DNAが示す近縁と遠縁――進化の系統樹
   コラム18D ホモ・サピエンス――孤高のヒト
 19章 寿命――死は新しい生へ
  19.1 生体分子の寿命――化学的安定性と酵素による分解や排泄
   コラム19A 原子の寿命――炭素同位体による年代推定
  19.2 老化――生体分子の損傷の蓄積
  19.3 2種類の細胞死――自死と壊死
   コラム19B 細胞の寿命――複製のたびに短くなる命のろうそく
   コラム19C 永遠の命を得た細胞――発がんに関わる平たい分子
  19.4 長寿と生活習慣病――肉より魚で血栓防止
   コラム19D 生活習慣病――自業自得?
  19.5 生物vs.無生物――その境界は?
   コラム19E 寿命ではかる危険の度合い
  19.6 おわりに――寿命あれこれ

関連商品

定価:2,420円
(本体2,200円+税10%)
在庫:品切れ・重版未定

▼ 補足資料