内容紹介
近代建築の巨匠ル・コルビュジエ。彼は多くの建築作品をつくり上げる一方で、平面図・立面図・断面図はもちろん、デザインスケッチや軸測図、旅行スケッチにいたるまで、膨大な数の建築図を遺してきた。こうした建築図は、建築そのものより、ル・コルビュジエの建築思想を雄弁に物語っているともいえる。なぜなら建築図とは、彼がこれまで経験した、あるいはこれから生み出そうとする空間や時間を、ありのままに伝える生の記録だからである。 そこで本書は、彼が描いた建築図を紹介しながら、そこに込められた建築に対する強い意志を解き明かそうとするとともに、ル・コルビュジエを通じて「近代建築」の背後にある「近代」を理解することを試みた一冊。
目次
序章 ル・コルビュジエの建築図における空間と時間
1 なぜ今,ル・コルビュジエか
2 日本への影響
3 ル・コルビュジエと「近代」
4 建築図から見る
5 建築図から見る空間
6 建築図から見た時間
第1章 「あるもの」の表現――立面図における形と実体の相克
1 「あるもの」の表現
(1)平面図・立面図・断面図
(2)建築家の描く図vs画家による絵
2 〈奥行き〉表現
(1)〈奥行き〉の計測へ
(2)標準光線による〈奥行き〉表現
3 エコール・デ・ボザールの建築図
4 20世紀初頭における建築図の合理化
5 1920年代以降におけるル・コルビュジエの「あるもの」の表現
(1)量塊(マッス)の表現から面の構成へ
(2)実体から関係へ
6 1930年代以降におけるル・コルビュジエの「あるもの」の表現
(1)形から実体へ――1930年以降の表現の変化
(2)人物の挿入
(3)量塊(マッス)の復権
第2章 「見るもの」の表現――デザインスケッチの遠近法における主観と客観
1 「見るもの」の表現
2 遠近法の考案
3 〈奥行き〉の圧縮と誇張
(1)圧縮された〈奥行き〉
(2)誇張された〈奥行き〉
4 『建築へ』における「軸線」
5 内外の分離
6 フレーミング
7 視野の拡大
8 「見るもの」の表現における主体と客体
(1)主体と客体の分離
(2)主観から客観へ
第3章 「あるもの」と「見るもの」の融合――軸測図に見る奥行きの主観と客観
1 さまざまな軸測図
2 軸測図の起源とその普及
3 バウハウスにおける遠近法の否定
4 デ・スティルにおける等測図の利用
5 ル・コルビュジエにおける軸測図の利用
(1)軸測図利用の始まり
(2)ピュリスム絵画理論と建築的ポリクロミー
(3)色彩の言語化
6 軸測図の〈奥行き〉
(1)線遠近法の延長としてみた〈奥行き〉の不在
(2)〈奥行き〉の不在化の方向性
7 新たな〈奥行き〉表現に向かって――「あるもの」の表現と「見るもの」の表現の融合
第4章 反復される過去――ル・コルビュジエの旅行スケッチ
1 ル・コルビュジエの教育
2 四つの旅行
3 二つの旅行スケッチ
4 東方旅行のスケッチの『建築へ』への再録
5 スケッチの再来
6 再録という反復がもたらすもの
(1)選別
(2)テキストとの並置
(3)他の図との併置
(4)テキストとのずれ
(5)無意識での違和感
7 反復される過去
第5章 未来への神託――二つのイメージの相克
1 神託的夢としてのイメージ
2 〈箱〉というイメージ――実体としての「箱」
3 〈ドミノ住宅〉のイメージ――独立柱によって支えられる床スラブの積層
4 〈箱〉というイメージの展開
(1)「四つの構成法」
(2)「四つの構成法」の進化論的解釈
5 〈ドミノ住宅〉のイメージの展開
(1)近代建築の5原則
(2)〈ドミノ住宅〉のイメージの実現過程
6 二つの過去への限りなき接近
第6章 更新される現在――平面図・立面図・断面図におけるトラセ・レギュラトゥールの使用
1 「あるもの」への接近
2 「あるもの」の根拠を求めて
3 トラセ・レギュラトゥール
(1)「あるもの」と「見るもの」の違い
(2) トラセ・レギュラトゥールの実際
(3) トラセ・レギュラトゥールの二つの性質
4 モデュロールの誕生
5 理念への限りなき接近
6 可視から不可視へ
第7章 自立するイメージ――印刷メディアにおける空間と時間
1 先行するテキスト
2 印刷メディアでの建築図
(1)『ラルシテクチュール・ヴィヴァント』誌の建築図
(3)『全作品集』の建築図
3 印刷メディアの軸測図――複製の多重性と複数性
4 印刷メディアの空間――「あるもの」の表現から「心的イメージ」へ
5 印刷メディアの時間――編集される時間
6 ル・コルビュジエと近代
(1)理性と感性の乖離
(2)語りえぬ空間
関連年表 133
参考文献 135
あとがき 139
索引 141
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