病院倫理入門

病院倫理入門

医療専門職のための臨床倫理テキスト
著者名 藤野 昭宏 監訳
発行元 丸善出版
発行年月日 2011年04月
判型 A5 210×148
ページ数 238ページ
ISBN 978-4-621-08351-2
Cコード 3047
NDCコード 490
ジャンル 医学・薬学 >  医学一般 >  医療倫理

内容紹介

医療過誤が起きた時などに現場スタッフが心得ておくべき臨床生命倫理について具体的に取り上げ、ケーススタディ方式で体系的にまとめており、原書はヨーロッパの事例で解説されている。自己決定権が前提の米国の医療制度と違い、日本の医療制度(保健制度)はヨーロッパの制度と類似しており、日本の医療現場にそのまま適用できる。また、各章とも「学ぶ目的」「キーコンセプト」「ケーススタディ」「本文」「討議すべき疑問点」「参照・詳細」で構成されており、どこに注意すべきか、どこが重要か意識しながら読むことができる学習効果の高い内容。

目次

序章 生命倫理を学ぶための小史と導入
 生命倫理の誕生
 生命倫理の欧州における発展
 生命倫理の意味と分野
第1章 生命倫理、医療専門職の行為準則と法
 ケーススタディー
 はじめに:医療に対するさまざまな規範的アプローチ
 医療専門職の行為準則、医療義務論そして生命倫理
 伝統的義務論
 宗教分離と医療専門集団の高潔さを守ろうとする傾向
 国際化、価値観の転換、そして専門化
 医療義務論の機能と限界
 医療義務論の変容
 生命倫理と医事法
 人権運動の影響
 生命医学の分野における欧州の国際的な法律的文書
 倫理と法:重要な違い
 違法であるが道徳的/適法だが不道徳
 どの時点で立法化しないと判断すべきか? 
 法と倫理との釣り合いをとること
 結論
 討議すべき課題
第2章 病院現場での生命倫理概念と倫理原則
 ケーススタディー
 はじめに
 新しい倫理的アプローチ
  原則主義/帰結主義/義務論/徳理論/決議論/フェミニズム理論
 倫理的原則と成文化された規制との関係
 プリームム・ノーン・ノケーレ(まずもって害しないこと)
 秘密を守ること
 自律尊重、善行、無加害、正義
 自律、尊厳、統合性、脆弱性
  自律/尊厳/統合性/脆弱性/正義と連帯性
 適用の一例:オビエド協定(欧州評議会)
 臨床現場への原則の応用
 結論
 討議すべき話題 
第3章 医療資源の配分
 ケーススタディー
 はじめに
 暗黙の配分から明確な配分へ
 配分の段階:マクロ、メソ、ミクロ
 結論に至るまでの意思決定者と問題点:誰が決めるのか
 配分方法
 配分への技術的そして配分的アプローチ
 技術的基準
  有効性/効率性/妥当性
 配分的基準
  必要性/メリットとデメリット/危険性/利益/救助のルール
 医療における公平性の理論
  個人の自由の理論/功利主義理論/平等主義の理論
 哲学的アプローチの矛盾と限界
 倫理的手続きを伴ったアプローチの重要性
 国際的な動向
  米国オレゴン州/オランダ/スウェーデン/ニュージーランド/英国/発展途上国
 結論
 討議すべき課題
第4章 医療専門職と患者の関係
 ケーススタディー
 はじめに
 「関係性」という言葉は何を意味するか
 関係性の伝統的なモデル
 現在の概念
  a)セミパターナリズム的概念
  b)自己決定をする患者
  c)対立と同意を同化すること
  d)解釈概念
  e)パートナーシップの概念
  f)霊的感性
 関係性の構築に関する倫理的正当化
  a)自律性の収束と医療専門職の治療義務
  b)人格としての関係性
  c)単独行動としての自己決定と自己形成の過程
  d)内的または外的な首尾一貫性
 私たちはパートナーシップの関係を学ぶことができるか?
 ケーススタディー
  a)関係性の弱さに気づくこと
  b)コミュニケーション技術を学ぶこと
  c)衝突を解決する技術を知ること
 結論
 討議すべき課題
第5章 生命の始期に関する臨床倫理
 ケーススタディー
 はじめに
 幼児に対する代理決定
 意思決定者
 意思決定の基礎にあるもの
  時間的圧力/認知的バイアス/妊娠と出産/出生前ケアにおけるスクリーニングと検査/妊娠時の生活スタイルの変化/出産までの意思決定
 新生児治療の差し控えと中止
  無益性/通常の治療と通常でない治療/差し控えと中止の間に違いはあるか?
 中絶と出生前診断
 討議すべき課題
第6章 生命の終期に関する臨床倫理
 ケーススタディー
 はじめに
 現代の科学技術時代における死にゆく者へのケア
 「生命の終期」と「終末期」の意味
 治療処置とケア――生命の終期の患者に何をなすべきか?
  人工呼吸・循環装置、栄養と水分補給、薬物療法/緩和ケア
 生命の終期の決定に影響される患者のタイプ
 意思決定の問題――誰に決定権があるのか?
  代理による意思決定と同意/決定能力のある患者/決定能力のない患者/決定の形式と内容/処置の差し控えと中止/通常と通常でない手段/執拗な治療、無益な治療
 安楽死
  自殺――死をもたらすこと――安楽死、消極的対積極的、自発的対非(反)自発的/医師による自殺幇助/終末期鎮静
 倫理的価値/原理
  生命の価値(質対生命の神聖さ)/尊厳/自律/善行
 倫理的論証
  すべり坂論法/二重結果の原理/自己決定権
 結論
 討議すべき課題
第7章 精神医学における臨床倫理
 ケーススタディー
 はじめに
 精神疾患は真の病気か
 対応能力、無能力、矯正治療
 無能力は非合理的であるのか 
 他社への危険
 事前指示と治療契約
 非公式の強制
 精神医療倫理における家族の役割
 精神医学の治療に関するいくつかの議論
 討議すべき課題
第8章 病院倫理委員会と生命倫理コンサルテーション
 ケーススタディー  
 はじめに
 病院倫理委員会:目的、目標、仕事
 勧告書および倫理ガイドライン
 教育
 患者のケアにおける道徳的問題:倫理的事例検討と倫理コンサルテーション
 HECと病棟における倫理的事例検討審議:臨床倫理の相互作用モデル
 適用
 結論
 討議すべき課題
第9章 生命医学研究
 はじめに:生命倫理化学研究の必要性と重要性
 医学と生物学の研究――基本的な方法論上の諸問題
 RCT(Randmised Controlled Trial)
 ヘルスケア環境での生命医学研究
 被験者に関する研究の倫理原則
 リスク/利益の評価
 被験者の選択
 インフォームドコンセント
 インフォームドコンセントができない患者
 医薬品の臨床実験の実施に関する基準
 研究倫理委員会
 結論
 討議すべき課題

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