内容紹介
本書は有機合成を逆向き(逆合成あるいはデザイン)からみた入門書で、有機化学入門書を補完する教科書である。逆合成の視点から有機化学を復習したうえで、2、3の天然物の全合成を概観し、続いて最近注目されている有機機能物質について最後に構造的に興味深い有機化合物の合成について解説する。また、各章のはじめに何について解説され、何を理解しなければいけないのかがわかるようになっており、そのためにはどんな文献・情報を収集し、どのような観点で勉強していけばよいのかがわかるように構成されている。 有機合成は医薬から有機機能物質までその必要性はますます拡大しており、大学においても有機合成に重点を置く必要が生じている。合成の入り口に立った学生が本書によって有機合成化学の全体像と広がりを理解し、さらに先への研究にステップアップするための基礎固めとして活用できる。
目次
1 はじめに
2 有機化合物の構造
2.1 立体化学
2.2 分子の対称性
3 有機合成
3.1 反応(戦術・横糸)の要点
3.1.1 反応種:カルボカチオン,カルボアニオン,ラジカル
3.1.2 有機化合物の酸性度定数
3.1.3 巻き矢印による反応機構の表現・有機電子論
3.2 合成計画(戦略・縦糸)の要点
3.2.1 パターンの認識
3.2.2 分子ひずみ
3.2.3 保護と脱保護,活性化基
3.2.4 極性変換
3.2.5 直線的合成と収束的合成
3.3 合成スキームの最適化
4 骨格合成
4.1 アルドール縮合とClaisen縮合のパターン
4.2 Michael反応のパターン
4.3 Grignard反応のパターン
4.4 炭素—炭素二重結合
4.5 遷移金属接触カップリング反応
4.5.1 Suzuki-Miyaura反応
4.5.2 そのほかの反応
4.6 特徴的な構造を作る炭素-炭素結合形成反応
4.6.1 3員環:カルベンとカルベノイドの反応
4.6.2 4員環と6員環:周辺電子環状反応
4.6.3 芳香環の形成
4.7 転位反応
5 官能基変換・形成
5.1 置換反応
5.1.1 求核置換反応:プロトン性溶媒中と非プロトン性極性溶媒中
5.1.2 カルボニル基の変換
5.1.3 カルボン酸およびその誘導体
5.1.4 芳香族求電子置換反応
5.2 酸化反応
5.3 還元反応
5.3.1 遷移金属接触水素添加反応
5.3.2 各種ヒドリド還元剤
5.4 炭素—炭素二重結合の変換
5.4.1 炭素-炭素二重結合の水和
5.4.2 炭素-炭素二重結合へのHXの付加反応
5.4.3 オゾン分解と酸化的開裂反応
6 天然物
6.1 エピアンドロステロン
6.2 (-)-アクツミン
6.3 ミクロコッシンP1
6.4 ビタミンB12
7 有機機能物質
7.1 特徴的な芳香族化合物
7.1.1 ビフェニル基をもつ液晶化合物
7.1.2 コランヌレン
7.2 オリゴチオフェン
7.2.1 オリゴチオフェンの合成
7.2.2 オリゴチオフェンを骨格とする液晶材料
7.2.3 光磁性スイッチィング機能物質
7.3 ポルフィリン
7.3.1 フラーレン用ホスト
7.3.2 ポルフィリン連鎖体
7.4 フタロシアニン
8 興味深い構造の有機化合物
8.1 シクロファン
8.2 フラーレン(C60) 誘導体
8.2.1 カテナンとロタキサン
8.2.2 穴あきフラーレン
9 まとめ