内容紹介
科学技術立国・日本において、「サイエンティスト(科学者・研究者)として活躍(成功)するために心得ておくべきこととは何か?」を主題に据え、目次にあるような様々な視点から、「成功する科学者像」を浮き彫りにして行く。執筆にあたっては、実際に起きた事例を交えながら具体的に解説していくとともに、今、理工学の分野で話題となっている、「科学者の社会的責任」「科学技術者倫理」についても紙面を割いて言及。東工大での外部講師もまねいた大人気のリレー講義の活字化。元村 有希子(毎日新聞科学環境部、第1回科学ジャーナリスト大賞受賞[05年])、村松 秀(NHK科学・環境番組部、第2回科学ジャーナリスト大賞受賞[06年])という科学ジャーナリスト大賞を受賞した二人も執筆者に加わる。
目次
第1章 誰が科学者か――はじめにかえて
第2章 科学者という仕事の誕生と今
1 職業的科学者の成立
1.1 ヨーロッパでの近代科学の成立
1.2 サイエンティストという言葉がつくられた時代
1.3 「科学技術」という言葉の来歴
2 アカデミックな研究――ワトソンの『二重らせん』に見る研究競争
2.1 ワトソンの『二重らせん』
2.2 DNAの発見
2.3 遺伝としてのDNA
2.4 DNA構造発見への道の4人の登場人物
3 ノーベル賞と科学者
3.1 ノーベル賞とは
3.2 ノーベル賞の選考過程
3.3 ノーベル賞の成功と今後
4 産業界での研究
4.1 科学と技術の関係の変容
4.2 企業内研究所の誕生
4.3 デュポン社の「基礎研究プログラム」
4.4 アメリカの新世代の科学者カローザス
4.5 カローザスのデュポン社での研究――ナイロン発明
4.6 「産業科学」という新しい研究の場――科学研究の変容
第3章 科学とは何か
1 メタ科学つぃての科学哲学
2 帰納と演繹
3 仮説演繹法
4 帰納主義の欠陥
5 ポパーの反証主義
6 科学と疑似科学の線引き問題
7 ラカトシュの研究プログラム
8 クーンのパラダイム論
第4章 学術論文をめぐって
1 学術論文とは
1.1 学術論文が発表されるまで
1.2 査読制度
1.3 学術論文の言語
1.4 Impact Factor
2 研究費の申請と審査
2.1 米国研究費申請・審査システム――研究者にとっての競争的研究資金の必要性
2.2 米国NIHの競争的研究資金の申請と獲得
2.3 米国では研究計画書の作成は真剣勝負――“詳細かつ簡潔”が命
2.4 米NIHの審査システム
2.5 NIHの審査サイクルおよび再申請と継続申請
2.6 日本の研究費申請・審査システム
2.7 日本の研究者にとっての競争的研究資金の必要性
2.8 日本の競争的研究資金
2.9 日本の研究計画書の作成と申請
2.10 日本の審査システム――不採択でも理由は不明,切磋琢磨できない審査方式
2.11 日本の競争的研究資金の真性と審査に何が必要か――研究費体系のシンプル化と面接廃止が不可欠
2.12 NIHのシステムも万能ではない――申請・審査に関わる研究者一人ひとりの切磋琢磨の精神が大前提
3 研究者になるための文章技法
3.1 「伝達の文章」の書き方――木下是雄の『レポートの組み立て方』から
第5章 研究者への道? 大学院とその後
1 学部のすごし方と大学院入試
1.1 学部のすごし方
1.2 研究室の選び方
1.3 大学院の選び方
1.4 大学院修士入試・博士入試は楽勝
2 大学院時代のサバイバル法
2.1 研究室の過ごし方
2.2 研究技能・パソコン・英語
2.3 研究成果と奨学会
2.4 院生の悩み相談
2.5 大学院留学
3 何としても博士号を取得する
3.1 博士号とは
3.2 博士号の基準と審査
4 ポスドクのサバイバル法
4.1 ポスドクとは
4.2 国内ポスドク
4.3 海外ポスドク
5 必死に研究職を見つける
5.1 実験室の専門職
5.2 実験室以外の専門職
6 特殊コース・再チャレンジ
6.1 飛び級
6.2 社会人大学院生
第6章 研究者の現場
1 アカデミックな場での研究者――研究が論文になるまで
1.1 研究の現場――理化学研究所
1.2 研究の背景と目的
1.3 グループの初期の研究
1.4 研究の次の目標
1.5 論文投稿
1.6 ライバル
1.7 研究者にとって大切なこと
2 企業内研究所の研究者
2.1 大学の研究と企業の研究の違い
2.2 研究開発がビジネスになるまで
2.3 企業内研究者のライフサイクル
2.5 企業にける研究開発マネジメント
第7章 特許と研究―知的財産権の問題
1 特許は研究とどのように関わっているか
1.1 起業における研究と特許
2 取得権の取得までの手続き
2.1 特許侵害訴訟
2.2 国際出願
3 特許権の行使
4.研究者にとっての注意点
5 職務発明
6 ノウハウと営業秘密
7 知的財産にかかわる職業
第8章 女性と科学
1 科学史における女性
1.1 欧米における女性科学者のはじまり
1.2 日本における女性科学者のはじまり
2 現代におけるジェンダーと科学
2.1 サマーズ発言
2.2 科学と性差
2.3 ジェンダーバイアス
3 女性研究者をめぐる現状
3.1 日本の現状と各国比較
3.2 女性研究者のキャリアを阻むもの
3.3 女性研究者への多様な支援
第9章 科学ジャーナリズムの世界
1 新聞における科学ジャーナリズム
1.1 科学ニュースとは何か
1.2 新聞の科学ジャーナリズムの歴史
1.3 新聞社の科学セクションと記者
1.4 取材から記事化まで
1.5 科学記者のスタンス
1.6 科学事件報道
1.7 科学報道のジレンマ
2 テレビにおける科学ジャーナリズム
2.1 多様に展開する科学番組
2.2 映像の力
2.3 テレビ界と科学界との差異
2.4 市民に科学が「伝わる」ために
2.5 テレビ科学ジャーナリズムの課題と今後
第10章 研究者倫理
1 論文捏造
1.1 頻発する「論文捏造」
1.2 史上空前の論文捏造――ベル研事件
1.3 チェック不能の連鎖
1.4 韓国・ヒトクローン胚由来ES細胞の捏造事件
1.5 対応を迫られる科学コミュニティ
1.6 科学の「変容」と21世紀科学のありよう
2 企業内の研究者の倫理
2.1 チッソの工場技術者たちと水俣病
2.2 『水俣病の科学』――水俣病の原因の科学的解明