内容紹介
各地で起きている高層マンションに対する住民の建設反対運動に象徴されるように、今日の建築を取り巻く状況は建築単体の問題を解決するだけでは成立しない。従来より建築学科で行われている講義は建築そのものの使いやすさ、室内空間の快適性、構造安全性に関わるものが中心だが、これらに加え近年では都市空間の計画、まちづくりといった都市や地域を含めた総合的な視点を養う授業が広く行われている。この傾向は、「環境デザイン学科」「建築都市デザイン学科」等名称は様々であるが,すでに多くの大学で始まっている。本書は、この課題にいち早く取り組み多くの人材を輩出している早稲田大学建築学科で使われている講義資料をベースにまとめる教科書で、まさに表題の通り、対象のスケール毎に都市デザインを進める上で不可欠な基本的なステップを事例を参照しながら実務を強く意識した解説を行う。
目次
第1部 都市デザインの進め方
1.都市デザインの進め方
2.都市デザインの対象
3.行為としての都市デザイン
4.都市デザインのスケール
5.都市デザインプロジェクト
6.都市デザインのワークスタイル
ワークスタイル1:構想《ナラティブウェア》
ワークスタイル2:造景《ハードウェア》
ワークスタイル3:編集《ソフトウェア》
第2部 空間像の構築
《構想》
構想01 素材を掘り起こす
1:風水の構成から素材を掘り起こす―最上エコポリス
2:流れを読み取り位置づける―泉中心市街地プロジェクト
3:人の動き,街の動きから掘り起こす―仙台141再開発プロジェクト
4:既存の情報をコラージュする―吉田町町民縁起環境づくり
[コラム]既存資料の活用
構想02 まちの成り立ちを読む
1:城下町の成り立ちを読む―城下町のまちづくり・鶴岡
2:現場からつぶさに読む―木之本町・北国街道
3:ていねいに地図を読み込む―城崎温泉・三十三間広場
4:成り立ちを分かりやすくまとめる―吉田町町民縁起環境づくり
5:まちづくりと住まいの変遷を読み解く―向島・防災まちづくり
[コラム]発見的な調査方法
構想03 物語に綴る
1:キーワードで綴る―城崎温泉・三十三間広場
2:景色に綴る―泉中心市街地プロジェクト
3:コンセプトを絞り込む―仙台141再開発プロジェクト
4:復興と再建を綴る―野田北部復興まちづくり
[コラム]都市デザインに係る法制度・計画体系
《造景》
造景01 骨格をデザインする
1:地形を縫い上げる―最上エコポリス
2:場面で組み立てる―城崎温泉・三十三間広場
3:コンセプトを建築化する―仙台141再開発プロジェクト
4:都市軸を炙り出す―熊谷・市役所通り景観設計
[コラム]道路や河川のデザイン配慮事項
造景02 界隈を形づくる
1:賑わいの原理から組み立てる―泉中心市街地プロジェクト
2:活力を育む―仙台・一番街ブランドームプロジェクト
3:界隈を組み合わせる―吉田町町民縁起環境づくり
4:場所を連続させる―早大正門前広場
[コラム]界隈のデザイン配慮事項
造景03 風景にまとめる
1:都市に風景を取り込む―城下町のまちづくり・鶴岡
2:景色を押さえて街を造り出す―泉中心市街地プロジェクト
3:スケールを追ってまとめる―吉田町町民縁起環境づくり
4:自然に敬意を払う―早川町・西山温泉 湯島の湯,志摩・賢島
5:向こう三軒両隣でまとめる―城崎温泉・三十三間広場
[コラム]風景のデザイン配慮事項
造景04 まちに開く
1:ワークショップで開く―合志町・すずかけ台公園
2:公共空間を育む―南方熊楠研究所コンペ
3:スペースコミュニケーション―仙台141再開発プロジェクト
4:まわりと合わせる―本太坂下広場景観設計
5:現場とすり合わせる―熊谷・市役所通り景観設計
[コラム]スケールを超えたデザイン配慮事項
造景05 ブレークスルーする
1:アートで挑む―向島・防災まちづくり
2:ハードルを上げる―仙台141再開発プロジェクト
3:技術で挑む―仙台・一番街ブランドームプロジェクト
4:意味を転換する―熊谷・市役所通り景観設計
[コラム]発想の転換
《編集》
編集01 布石を打つ
1:協働のデザインを埋め込む―城下町のまちづくり・鶴岡
2:シナリオを共有する―城崎温泉・三十三間広場
3:拠点から街づくりを育てる―仙台141再開発プロジェクト
[コラム]実現に向けての手法
編集02 いくつもの道筋を検討する
1:比較案を重ねて詰めていく―泉中心市街地プロジェクト
2:シミュレーションから道筋をつける―仙台141再開発プロジェクト
3:デザインゲームで空間像を抽出する―向島・防災まちづくり
[コラム]プレゼンテーション手法
編集03 体制を整え布陣を組む
1:事業プロセスに応じた体制で臨む―仙台141再開発プロジェクト
2:協働を支える布陣を組む―野田北部復興まちづくり
[コラム]協働のためのルールづくり
編集04 波及と連携を生み出す
1:土地活用をプログラム化する―泉中心市街地プロジェクト
2:さまざまな循環を育む―秩父大宮リンクプロジェクト
3:空間ボキャブラリーで連携を育む―市川南・再開発との連携
[コラム]都市デザイン教育プログラム
第3部 空間像の提案
1.城下町のまちづくり・鶴岡
2.城崎温泉・三十三間広場
3.泉中心市街地プロジェクト
4.仙台141再開発プロジェクト
5.吉田町町民縁起環境づくり
6.熊谷・市役所通り景観計画
7.本太坂下広場景観設計