言語科学の百科事典

言語科学の百科事典

著者名 鈴木 良次 編集委員長 
畠山 雄二 編集幹事
岡ノ谷 一夫 編集委員
荻野 綱男 編集委員
金子 敬一 編集委員
発行元 丸善出版
発行年月日 2006年07月
判型 A5 210×148
ページ数 894ページ
ISBN 978-4-621-07733-7
Cコード 3501
NDCコード 803
ジャンル 社会科学

内容紹介

「言語」にはさまざまな側面がある。言語学では大きくいえば統語的、意味的、そして音声的だが、言語科学と広範囲に捉えれば、生物の音声によるコミュニケーションからコンピュータのプログラムといった人工言語、歴史からも確認できる日本語の変遷や社会とのつながり、さらには失語症などの医療的側面も「言語」としての「顔」をもつ。言語を扱っている学問領域も多岐にわたり、人文社会学系の学問はもちろんのこと、医学や工学、そして生物学もさまざまな形で言語と関わりつつある。このようなさまざまな「顔」をもつ「言語」を包括的にそして網羅的に紹介。

目次

1.人文科学編
 1-1.統語論
  構成素/構成素制御/句構造/埋込み文/スクランブリング/wh移動/格/代名詞の省略/主要部パラメータ/言語獲得
 1-2.意味論
  論理とモデル/前提/単調推論/焦点/曖昧性/アスペクト/複数性/事態/時制/照応
 1-3.形態論
  語の主要部/派生と屈折/生産性/語彙化/名詞化/阻止/類推/語形成規則/複合/語彙的緊密性
 1-4.音韻論
  音素/弁別素性/音韻過程/プロソディ/生成音韻論/機能主義/最適性理論/音韻辞書/知覚と産出/実験音韻論
 1-5.ミニマリスト・プログラム
  方法論的/形式論的極小主義と実質論的極小主義/生物言語学/言語の起源と進化/表示の経済性/派生(統語計算)/派生の経済性/素性一致と素性照合/派生と解釈/文法モジュールの統合
 1-6.主辞駆動句構造文法
  制約/素性構造/構造共有/語彙主義/主辞素性/句構造/項構造/非局所素性/MRS/線形化
 1-7.語彙意味論
  語彙意味論/語彙概念構造/語彙的アスペクト/非対格仮説/リンキング規則/事象構造/生成語彙/クオリア構造/合成/語彙知識と一般知識
 1-8.認知言語学
  とらえ方/カテゴリー化/メタファー/メトニミー/多義性/経験基板主義/百科事典的意味/ベース/プロファイル/イメージスキーマ/部分的合成性 
2.教育学編
 2-1.認知科学と第二言語獲得
  第一言語と第二言語,外国語/臨界期/自動化/作業記憶/エルマン・ネット/学習可能性の理論と制約/認知言語学的な言語取得観/第二言語習得と普遍文法/第二言語取得におけるエラー/第二言語取得における有標性
 2-2.関連科学(言語処理情報と脳科学)と第二言語処理・第二言語理解
  単語認知・単語処理/文処理・文理解/談話処理・談話理解/文処理・文理解のモデル/談話処理・談話理解のモデル/構文解析方略・統語解析方略/統語的曖昧性・複雑性/音読と脳科学/脳内文法処理/脳内音声・意味処理
 2-3.教室第二言語取得と外国語教育学
  外国語指導法概説/音声の指導/語彙の指導/文法の指導(教室第二言語取得の視点から)/リスニングの指導/リーディングの指導/スピーキングの指導/ライティングの指導/学習ストラテジー/言語テスト
 2-4.外国語教育学の新しい分野:ESPと早期英語教育
  ESPのタイプ/ESPの歴史/ESPとプロフェッショナル・ディスコース・コミュニティ/ESPとジャンル分析/ESPと語彙研究/ESPの授業実践と評価/ESPの教員/早期泳以後教育の指導法/早期英語教育の指導法を支える言語理論/発達心理学から早期英語教育への示唆 
3.日本語学編
 3-1.日本語の音声
  五十音図と音素体系/清濁の対立と連濁/語彙の層別化/直音・拗音/形態音韻論的交替と内的再構/モーラと音節/アクセント体系/リズム,イントネーションとプロソディー構造/音声的再構と音素的解釈/アクセントの変化と地域的変異
 3-2.日本語の文法
  副助詞/格(日本語の場合)/ボイス/アスペクト(日本語の場合)/テンス/モダリティ/複文構造/文章と談話/敬語/文法教育
 3-3.日本語の語彙
  語・語彙・語彙論/語彙の量的構造/語彙と語形/語彙と意味/語彙と語種/日本語の語構成/語彙と位相/語彙と文法/語彙と文章・文体/語彙の教育
 3-4.日本語のバリエーション
  バリエーション/バリエーションと言語変化/時代的変種/地域的変種/バリエーションと言語取得・接触/取得変種:幼児語/接触変種:中間言語/バリエーションと国語教育/スタイルと国語教育/学校と日本語
4.社会科学編
 4-1.社会と言語
  ポライトネスと敬語行動/ことばの男女差/ことばの年齢差/集団語/言語政策・言語計画/多言語化/外国人とのコミュニケーション/メディアとことば/言語のステレオタイプ/都市の言語
 4-2.地域と言語
  地域限定研究の意義/地域言語の自然性/地域の主産業と言語/地域言語の調査/言語の違いと地域の歴史/地域言語と言語の歴史/地域言語的用法の共通語視/新しい地域言語的用法/地域間の言語の違いの将来/外国語における地域間の言語の違い
 4-3.歴史と言語
  音韻の変化/アクセントの変化/文字・表記の変化・語彙の変化/文法の変化/文章・文体の変化/意味の変化/政治・文化の中心地の移動と言語/社会階層の変動と言語/対外交渉の歴史と言語
 4-4.文化と言語
  構造主義/色彩名称/親族名称/空間認知/言語相対性/サピア・ウォーフ仮説/コミュニケーションモデル/高・低コンテキストのコミュニケーション/人間関係重視・情報重視のコミュニケーション/文化一般の知識/異文化理解
5.生物学編
 5-1.言語を可能にする生物学的前適応
  動物の「ことば」/類人猿の「言語」訓練/前適応/発声学習/文法と性的ディスプレイ/意味と文脈/分節化/音列状況相互分節化仮説/階層的操作/音声学習の生得的制約
 5-2.言語を可能にする進化・発達要因
  心の理論/言語進化のゴシップ仮説/社会的学習/自然淘汰と性淘汰/信号の進化/母子関係/音韻知覚と音声発達/共同注意/子どもに向けられた発話/語意の獲得
 5-3.言語に関連する遺伝子群と神経機構
  言語にかかわる神経発生概論/神経発生にかかわる分子遺伝学概論/FOXP2は言語の遺伝子か?/髄鞘形成と言語機能/脳の進化と分子レベルの進化/身体像(ボディイメージ)/ミラーニューロン/刺激等価性/視点転換/頭頂葉触媒仮説
 5-4.言語の構成論的研究
  生物進化と言語進化/文化進化と言語進化/構成的アプローチ/ニューラルネットワーク/生物のコミュニケーション進化のモデル/語彙進化のモデル/統語進化のモデル/言語動力学方程式/ボールドウィン効果/ニッチ構築理論 
6.医学編
 6-1.言語脳機能と障害
  言語機能の脳内局在性/話しことばの神経基盤/失語症/読み書きの神経基盤/失読と失書/意味理解の神経基盤/意味記憶の障害/統語処理の神経基盤と生涯/言語性短期記憶の神経基盤/言語性短期記憶の障害
 6-2.視覚言語
  視覚の機能解剖/形態の知覚/文字および単語の知覚/眼球運動/視機能検査/視覚障害/視知覚障害/視覚障害者における言語獲得/形態処理の脳機能計測/視覚言語の脳機能計測
 6-3.音声言語
  聴覚機能解剖/聴覚処理/聴覚検査/聴覚障害/発声器官の構造と機能/音声の生成/発話の障害/発声言語の脳機能計測/手話/読話
 6-4.脳機能計測と解析
  行動実験/神経心理学検査法/脳波計測/脳磁界計測と経頭蓋的磁気刺激/磁気共鳴画像/脳血流等の計測/脳活動信号処理/脳活動源推定/統合計測・解析/脳活動モデル 
7.工学編
 7-1.コンピュータと言語
  コンピュータとプログラム/アルゴリズム/データ構造/機械語とアセンブリ言語/インタプリタとコンパイラ/手続き型言語/関数型言語/論理型言語/オブジェクト指向言語
 7-2.自然言語処理
  コンピュータと自然言語処理/形態素解析/形式文法/構文解析(1):構文構造に基づく解析/構文解析(2):文脈自由文法/意味解析/コーパス/対話システム/情報検索とその応用/文法推論
 7-3.ロボットと言語
  ロボットのシステム構成/ロボットのメカニズム/ロボットとリアルタイム処理/会話のためのセンシング/音声合成と発話ロボット/ホームロボットと癒し/ロボットとジェスチャー/リズムの引き込みとうなずきロボット/ロボットと環境/ロボット言語と標準化
 7-4.手書き文字認識
  オンラインとオフライン/特徴抽出/伸縮マッチング/パターン空間/学習アルゴリズム/隠れマルコフモデル/識別器の統合/文脈処理/手書き文字列認識/誤認識への対応
8.人間学編 
 8-1.文学と言語
  計算機による文学作品理解/形態素解析/構文解析と意味解析/文脈解析/言語と比喩/計算機による比喩理解/文学作品における比喩/相互テキスト性/コーパスとしての文学作品/文学と計算機
 8-2.音楽と言語
  言語と音楽の普遍性/言語の「音楽性」/音楽の「言語性」/言語が先か,音楽が先か/伝統音楽のリズム/伝統音楽のメロディー/わらべうたの理論/呼びかけチャントI:ヨーロッパの言語/呼びかけチャントII:日本語と韓国語/呼びかけチャントIII:言語と音楽の「バトル」
 8-3.哲学と言語
  哲学史と言語/科学と言語/倫理と言語/言語ゲーム/言語行為とコミュニケーション行為/翻訳の不確定性/構造とエクリチュール/身体と言語/セックス/ジェンダーと言語/言語の自己言及
 8-4.論理と言語
  形式意味論/モンタギュー文法/内包論理/属性理論/動物術語論理/談話表示理論/状況意味論/状況理論/一般化量化子理論/動的統語論
付録
 1.世界の言語地図
 2.方言の分布地図
 3.鳥の歌の伝承,方言の形成,学習んぼ制約
 4.ボディ・ランゲージ
 5.指文字
 6.文字を書くこと・読むこと:点字
 7.脳構造と脳活動
 8.脳の部位と機能の対応および視覚・聴覚・構音にかかわる器官
コラム
 ことばの謎解き/意味論の中の蟻/音韻論なんてナニが面白いの?/ひと,いのち,言語学/おしゃべりペット/言語学とサッカー/ことばとことばの研究を愛するK先生/アウトプット仮説は講義中に学生を熟睡させない/リーディングにおける情報転移の指導/「権利」が文化に根づくまで/空耳,言い間違い,言語遊戯/「私的(わたしてき)には…」/サッカーとことば/ことばのになう社会情報/人名も社会の中で決められる/「タク」の共通語視から/言語変化の要因/身をもって経験したコミュニケーションスタイルの違い/モーツァルトのムクドリ/社会脳仮説/マルチリンガル的顔貌形成と認知/構成的研究の夜明け/アルツハイマー病における認知機能障害/タイプライターの誕生/難聴の治療/脳活動計測とアイシャドー/コンパイラ/計算学習理論/植物とのコミュニケーション/コンピュータの認識システムが個性をもつとき/「テクスト」と「テキスト」/音楽で語学力アップ!?無意識の外国語学習/ことばによる哲学のスタイル/論理と言語

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