内容紹介
物質とその変換を扱う学問である「化学」は、化学構造、物性、反応などの知識を含む大量で多様な情報を発生する。こうした氾濫する情報に対し、データベース、ネットワーク、インターネットなどのコンピュータ科学や情報工学を積極的に活用する手法をケモインフォマティックスと呼び、「化学の問題を解決するための情報科学の応用」と定義される。本書は、このケモインフォマティックスを包括的にまとめ、薬物開発、新規反応開発、構造解析など化学・薬学・生物学の幅広い分野における重要な項目に対する取り組みを基礎から応用にわたり詳しく取り扱う。単に過去のデータの解析にとどまらず、新しい分子や反応の予測と設計という挑戦的な目的に対して、データから知識へ、知識から創造へという基本姿勢に基づいた考え方をわかりやすく丁寧に解説。
目次
１ はじめに
１．１ 化学の分野
１．２ 化学者の基本的な疑問
１．３ ケモインフォマティックスの範囲
１．４ ケモインフォマティックスにおける学習
１．５ 主な手順
１．６ ケモインフォマティックスの歴史
１．７ 本書の範囲
１．８ ケモインフォマティックスの教育
２ 化合物の表現
２．１ はじめに
２．２ 化学命名法
２．３ 線型表記
２．４ 組成のコード化
２．５ 構造情報の処理
２．６ 結合表の限界を越える
２．７ 化学構造の特別な表記
２．８ 立体化学の表現
２．９ ３次元分子構造の表現
２．10 分子表面
２．11 分子モデルの可視化
２．12 ツール：化学構造描画ソフトウェア――分子編集・表示ソフトウェア
２．13 ツール：ウェブ上の３次元構造ジェネレータ
３ 化学反応の表現
３．１ はじめに
３．２ 反応タイプ
３．３ 反応中心
３．４ 化学反応性
３．５ 反応分類
３．６ 反応における立体化学
３．７ チュートリアル：反応における立体化学
４ データ
４．１ はじめに
４．２ データ収集
４．３ データ前処理
４．４ モデル品質の検証用データセットの準備
５ 化学分野でのデータベースとデータ源
５．１ はじめに
５．２ 基本データベース理論
５．３ データベースの分類
５．４ 文献データベース
５．５ チュートリアル：Chemical Abstracts Systemの利用
５．６ 物性(数値)データベース
５．７ チュートリアル：Beilsteinデータベースでの検索
５．８ スペクトルデータベース
５．９ 結晶データベース
５．10 分子生物学データベース
５．11 構造データベース
５．12 化学反応データベース
５．13 チュートリアル：ChemInform Reactionデータベースでの検索
５．14 特許データベース
５．15 インターネット上の化学情報
５．16 チュートリアル：化学情報のインターネット検索
５．17 チュートリアル：インターネットにおける環境情報の検索
５．18 ツール：インターネット（化学分野でのオンライン・データベース）
６ 化学構造検索
６．１ はじめに
６．２ 完全構造検索
６．３ 部分構造検索
６．４ 類似検索
６．５ ３次元構造検索方法
７ 物理的，化学的なデータの計算
７．１ 物性推算への経験的アプローチ
７．２ 分子力学
７．３ 分子動力学
７．４ 量子力学
８ 構造記述子の計算
８．１ はじめに
８．２ 構造キーと１Ｄフィンガープリント
８．３ トポロジカル記述子
８．４ ３次元記述子
８．５ キラリティ記述子
８．６ チュートリアル：配座に依存しないキラリティコードと依存するキラリティコード
８．７ 他の記述子
８．８ 構造をもとにしない記述子
８．９ 構造記述子の特徴
９ データ解析の手法
９．１ はじめに
９．２ 機械学習の手法
９．３ 決定木
９．４ ケモメトリックス
９．５ ニューラルネットワーク
９．６ ファジー集合とファジー理論
９．７ 遺伝的アルゴリズム
９．８ データマイニング
９．９ ビジュアルデータマイニング
９．10 エキスパートシステム
10 応用
10．１ 化合物の物性予測
10．２ 構造―スペクトル相関
10．３ 化学反応と合成設計
10．４ 薬物設計
11 将来への展望
