内容紹介
公共建築は多くの人が使用するものであり、その都市の景観や建物をリードする役割を担うものである。公共建築の発注にあたっては、優れた建物をつくるよう行政は努力する義務があり、その内容を市民に公開しなければならないが、地方自治体などの多くは依然として物品の購入・請負工事と同じように設計料を基準とした入札制度による発注が少なくない。本書では、公共建築設計者の選定の重要性に鑑み、選定の現状、設計料入札による選定の問題点、さまざまな選定方式とその比較、住民参加による選定、諸外国の事例などを紹介する。日本建築学会「良い建築と環境をつくるための社会システム検討特別調査委員会」の成果に基づいた内容。
目次
1章 都市における建築の役割
1-1 社会的・文化的な資産としての建物
1-2 専門的、かつ創造的な職能
1-3 多様化する建築生産と公共建築発注
1-4 公共建築の役割と公共建築の設計者選定
1-5 完成後の重要性
2章 設計者選定の現状
2-1 公共建設設計発注を規制する地方自治法、会計法、通達等
2-2 官公庁施設の設計業務委託方式に関する実態調査
2-3 地方自治体における設計者選定の現状
2-4 設計者選定の基本方針と現状事例
3章 設計者選定方式に関するアンケート
3-1 設計者選定方式に関する市民アンケート(横浜市)
3-2 設計者選定方式に関する設計事務所アンケート(京都市)
4章 設計料入札による設計者選定の問題
4-1 建築審議会の答申
4-2 設計料入札の問題
4-3 設計入札の問題点
4-4 競争入札を廃止した自治体(福岡市)
5章 設計者選定方式
5-1 「公共建築の設計者選定方法の改善についての提言」
5-2 設計者選定方式の比較
5-3 特命方式
5-4 選定委員会方式
5-5 設計競技方式
5-6 プロポーザル(技術提案)方式
5-7 資質評価方式(QBS方式)
5-8 設計・施工一括方式
5-9 PFI方式
6章 公共建築発注/新しい動きと特別な場合―住民参加による設計者の選定:住民参加型PFM手法
6-1 より良い公共建築を求めて
6-2 問題の多い設計者選定手法
6-3 PFMとは
6-4 設計者選定住民参加型設計提案競技
6-5 挑戦は続く
7章 諸外国における公共発注と設計者選定
7-1 各国の登録建築家
7-2 各国の建築設計の公共発注
7-3 まとめ
付録 日本建築学会の公共発注に関わる設計者選定支援システム
付-1 日本建築学会まちづくり支援建築会議
付-2 公共建築設計者選定支援協議会(仮称)
付-3 公共建築協会の公共建築設計者情報システム/パブディス
付-4 関連文献
付-5 参考文献
付-6 建築関連機関および団体など