教育の倫理学

教育の倫理学

著者名 加藤 尚武
発行元 丸善出版
発行年月日 2006年11月
判型 四六 188×128
ページ数 230ページ
ISBN 978-4-621-07118-2
Cコード 1312
NDCコード 371
ジャンル 人文科学 >  倫理学
人文科学 >  シリーズ人文科学 >  現代社会の倫理を考える

内容紹介

とにかく、現代の青少年の多くは、人類が築き伝承して来た倫理原則を、どうして、と疑い、ややもするとひょいと踏み越える……。明治以降の倫理書は性悪説に立って、人は他人に迷惑をかけないように躾られなければならないと説いた。しかし、敗戦後、アメリカ流民主主義が入ると、戦前の道徳は反民主主義的だとして全否定された。こうした価値観の極端な転換が、現代日本の倫理と教育に混乱をもたらした――。問題は、この民主主義道徳にふさわしいディシプリン(=人間ならば当然実行すべき疑問の余地のない戒律)をきめ細かく示せなかったことにある。本書では、そうしたディシプリンを解明することによって「教育の倫理学」の確立をめざす。

目次

プロローグ――現代の教育観の枠を超えて
 教育の目的/教育をめぐる歴史的変化
第1話 政治学としての教育学
     教育による人間改造/教育の強制は許されるか/デューイのプラトン批判
第2話 儒教における政治と教育
     修身、斉国、治国、平天下/天子から庶民まで/徳治主義と性善説
第3話 どういう教育の可能性があるのか
     どんな非常識でも教育しだいで常識になるか/生まれつきの限界/刷り込みの効果/「生まれつきと習慣とロゴス」/「白紙」という概念/「同化」の概念/期限付きの感受性/人間性は刷り込みの結果/経験の始まり/言語以前の経験 
第4話 人間弱者論の系譜
     教育はなぜ必要か/人間は半製品で生まれる
第5話 獣性抑制論の系譜
     人間のなかの悪/スペンサーとマズロー
第6話 自閉症、アスペルガー症候群、母性剥奪
     自閉症の特徴/アスペルガー症候群/母性剥奪/診断と予防、対策
第7話 天才をつくる方法
     幼児教育の成功例/孫に対する私の幼児教育のルール
第8話 義務教育の必要性
     安全の情報依存性/耐震強度偽装問題――製造物の特殊性/耐震強度偽装問題――相互チェックか「馴れ合い」か/教育は義務か、権利か
第9話 どうしたら亀がアキレスに追い付くことができるか
     「複雑」から「単純」へ/リニアーなプログラム/資格と試験/網と点/林竹二の方法論 
第10話 印刷による教材革命
     教育のなかの規格化/印刷物の情報構造と教育/カリキュラムの作成原理/カリキュラム教育と学校幻想
第11話 大村はまとEBM―教材論
     大浦はまの教授法/デューイの「子どもとカリキュラム」/EBMとは何か/EBMのもつ意味/情報の目的別統合/基礎となる知識の流動化/対象学生の非均質性
第12話 放任主義教育の失敗
     記憶することの意味/創造性のパラドックス/子どもはみな平等か
第13話 民主主義社会はどのような教育を必要とするか
     国民的合意形成能力としての学力
第14話 知識に所有権がなりたつか
     知識の所有について――アスグスティヌスの場合/知識の所有――ロックの場合/才能の不均衡――ロールズ・ノージック論争/インセンティブ理論の核心
第15話 教育における情報技術と倫理
     情報と因果/予防とサンクション/情報倫理の特色/情報倫理の内容/倫理と文学
第16話 独創性を育てる教育
     独創的な発見は異分野の接触から/独創性と連続性/腕時計をゆで卵にしかけたニュートン/微分方程式を暗算で解く
第17話 大学論
     「優秀者の支配」の失敗/「学の理念」と大学/大学の大衆化、実用化/共通教育を厚くする/文系入学理系卒業
第18話 人文科学の存在理由
     東西文化比較論の偏見/比較から対話へ、対話から共存へ/京都大学の書庫で思う/哲学の課題
第19話 反自然的文化の強制
     「教育は強制ではない」というテーゼの資格/「強制によって自由を育てる」というアポリア
第20話 職業のための教育
     企業内教育の現在/社内教育をめぐる変化/大胆な内部改革/社会全体の知性の配分や質をどのようにすべきか
第21話 ゼロ歳からの倫理教育
     三原学園・中学校の道徳項目/一方的な検診(SUPEREROGATION)の倫理の実例/自由主義の定義

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