内容紹介
昨今、建築関係の紛争が増加している。(社)日本建築学会は司法支援建築会議を設置し、多数の調停委員や鑑定人を建築紛争支援として派遣。本書では第I編として支援活動を進めていく中で現在、争点として争われることの多い事柄を、建築紛争における法的諸問題、特に技術的事項と契約事項に密接に関係した問題点をピックアップし、過去や現在の技術レベルなどを検討、根拠を明らかにした判断のための技術資料を契約・法規関係、各種構造・工法など全16章で詳細に解説。また、第II編として実際に司法支援建築会議から選出された鑑定人が携わった28件の建築紛争裁判実例を挙げ紛争における争点、実際の鑑定を紹介。法曹会の弁護士や裁判官などの直接の関係者、建設業、設計事務所および官公庁の建築関係者、さらには一般の不動産の所有者や各会社の営繕の方々等、現場で活躍されている幅広い多くの人々にとっての必携の書。
目次
第I編 技術の現状
1章 設計図書
1.1 設計図書と建築士の業務
1.2 各種図面の目的
1.3 仕様書の目的
1.4 設計図書と契約の関係
1.5 設計図書と報酬の関係
1.6 報酬の諸問題
1.7 建築図書と建築士の責任
1.8 問われる建築士の意識
2章 工事監理
2.1 建築生産の中での工事監理の必要性
2.2 (工事)監理の定義
2.3 (工事)監理の法律関係について
2.4 (工事)監理契約について
2.5 (工事)監理業務の内容と現状
2.6 (工事)監理に関わる紛争の回避について
2.7 まとめ
3章 工事管理
3.1 工事管理と工事監理
3.2 請負規約と契約約款の関係
3.3 請負契約と設計図書
3.4 請負契約と請負代金内訳書
3.5 請負契約と工事工程表
3.6 追加工事と設計変更
3.7 請負契約と工事期間
3.8 建築の見積
3.9 工事開始時の周辺調査記録の意義
3.10 検査および試験データの意義
3.11 請負契約と自己における法的責任
3.12 人身事故の法的責任
4章 建築基準法
4.1 構造安全性に関する法体系と主な変遷
4.2 法第20条の解釈と構造安全性
4.3 実質安全性と法的適合性の相違
4.4 建築紛争における構造安全性の判断
4.5 各種構造における構造安全性の主な関連要因
5章 鉄筋コンクリート構造物
5.1 鉄筋コンクリート構造物のコンクリートの圧縮強度
5.2 かぶり厚さ
5.3 建築物のかぶり厚さ不足について
5.4 かぶり厚さの不足の場合の補修方法
5.5 コンクリートのひび割れ
5.6 施工に伴う欠陥
5.7 鉄筋コンクリート建物の現状
6章 木造建築
6.1 木造建築の歴史的事情
6.2 木造建築に使われる材料と性能
6.3 金物使用の問題
6.4 木造建築の耐震性
6.5 床の傾斜・柱の傾斜・床のたわみの許容限度と対応策
6.6 木造建築の構造設計と構造計算
6.7 3階建て木造建築の技術的問題点
7章 鉄骨構造物
7.1 鋼材の種別
7.2 部材断面
7.3 筋かい材
7.4 溶接接合部
7.5 高力ボルト接合部
7.6 柱梁接合部
7.7 柱脚
7.8 基礎
7.9 建て入れの許容限度
7.10 振動障害
7.11 部材の耐久性
8章 ALC構法
8.1 ALCパネルの性質
8.2 ALCパネルの取付け構法について
8.3 ALCパネルの目地構造
8.4 ALCパネル表面の仕上げ
8.5 ALC建物の劣化現象
9章 耐火被覆
9.1 耐火被覆工法と被覆材料
9.2 耐火被覆の厚さと耐火時間の関係
9.3 耐火被覆厚さと耐火時間に関する既往の整理例
9.4 耐火被覆厚さと密度(かさ比重)の関係
9.5 合格基準と安全性について
9.6 吹付けロックウール工事に係る課題
9.7 耐火被覆の点検・補修
10章 地盤・基礎
10.1 地盤の性質とそれに応じた基礎の設計・施工について
10.2 地盤の性質に応じた敷地の造成方法について
10.3 地盤沈下の原因とその調査方法
10.4 地盤沈下の進行予測および調査方法
10.5 不同沈下が発生した場合の建物の補修方法について
10.6 各種基礎の特徴と短所
10.7 土の強度と地盤の支持力
10.8 山留め
10.9 地盤改良
11章 住宅の基礎
11.1 住宅の基礎のかぶり厚さ
11.2 住宅基礎の不同沈下の許容限度と沈下修正工法
11.3 割ぐりの大きさと捨てコンクリート厚さの限度と対応策
11.4 基礎の断面形状
11.5 住宅における基礎のアンカーボルトの量と対応策
11.6 住宅の基礎におけるひび割れの限度と補修方法
12章 建物の揺れ
12.1 鉛直方向の揺れの基本とモデル化
12.2 揺れの感知と構造的要因
12.3 鉛直方向の揺れの評価と許容限度
12.4 揺れの原因の解明方法
12.5 揺れの定量的な測定方法
13章 外壁仕上げ
13.1 建築の外壁仕上げに見られる故障と発生要因
13.2 陶磁器質タイル仕上げ
13.3 左官仕上げ
13.4 張石仕上げ
14章 漏水問題
14.1 防水工事の関係者と防水工法
14.2 漏水原因箇所の追及の方法
14.3 漏水事例と原因・主たる責任者
14.4 屋根の防水設計
15章 音環境
15.1 床衝撃音遮断性能に関する問題
15.2 空気音遮音性能に関する問題
15.3 居室の振動問題
15.4 遮音性能に関する判断基準について
16章 居室環境
16.1 居室の換気、空調について
16.2 外皮の断熱性能について
16.3 結露の防止について
16.4 カビの発生について
16.5 シックハウスについて
第II編 建築関係裁判例の紹介
第1部 鑑定が実施された裁判例
01 設計料残金の請求に対する反訴
02 追加変更工事の報酬請求と建物の瑕疵
03 住宅の増改築工事と瑕疵補修
04 下請による建築工事の残金請求と請負契約
05 注文者の指図による違反建物と損害賠償
06 発注者による工事契約解除と瑕疵補修費
07 宅地開発造成工事の残金請求適正代金
08 出来高払い契約の請負代金請求の相当性
09 請負契約の合意解除と瑕疵補修費
10 施工者による工事契約解除と出来高報酬額
11 火災を受けた建物の安全性
12 隣家の解体・新築に伴う振動とひび割れ損傷
13 RC造住宅の瑕疵と賠償請求
14 下水道工事に伴う営業減収、建物傾斜等の損害請求
15 借地における建物構造の契約違反と土地明渡請求
16 掘削作業による地盤沈下と隣地建物の損傷
17 建築工事による地盤沈下の損害請求
18 建売住宅の盛土の瑕疵と損賠賠償
19 スチール関係の下請会社の請負代金請求と瑕疵
20 請負代金の請求と雨漏り、仕上げほかの瑕疵責任
21 不具合による売買契約解除と原状回復請求
22 落雪による隣接建物への被害
23 長屋式住宅の隣家屋根補修と雨漏り
24 地下室店舗への漏水と損害賠償
25 追加変更工事等の代金請求と温浴施設漏水の瑕疵
26 建物の老朽化と土地の賃借契約の更新拒否
第2部 その他の裁判例
1 依頼主のイメージを設計者はそこまでデザインしなければいけないのか
2 建ぺい率違反のマンション分譲と関係者の責任
3 不同沈下と設計者の責任
4 ゴミ焼却場の設計に瑕疵があったか
5 建築設計契約が成立していなくても、報酬請求が認められる場合
6 建築設計物は著作物か
7 設計図の複製
8 設計者・工事監理者として届け出たが、これらの業務をしなかった二級建築士の責任が認められた事例
9 工事監理者の責任が問われたケース
10 建物の瑕疵と建て替え費用の請求
11 高額な請負代金と不法行為
12 市街化調整区域内の新築
13 報酬請求と損害賠償請求
14 注文者の指図と請負人の責任
15 鬼門
16 鉄骨3階建共同住宅の柱と梁の溶接に瑕疵あること等を理由に施工業者に損害賠償を認めた事例
17 建築材料の瑕疵
18 建替費用を損害と認めた裁判例
19 建物の不同沈下に関する裁判例
20 降雨による擁壁崩壊につき、体育館の解体および敷地の地ならし工事を請け負った業者に、損害賠償請求を認めた事例
21 豪雨のため、マンションのベランダに溜まった雨水が室内に流れ込み、次いで、階下の部屋に浸水した責任は誰にあるのか
22 部屋の気密性
23 大学学舎建築工事差し止めの仮処分
24 掘削作業による隣地建物の損傷
25 マンションの建築工事により隣接土地の地盤が沈下したとして、請負業者および注文主の不法行為責任が認められた事例
事例
26 マンション居室改装工事による騒音はどこまで許されるか
27 電波障害解消費用算定の一例
28 建物の反射光被害を理由に、被害防止工事の実施と被害賠償請求が認められたケース
29 眺望阻害による財産的損害
30 景観保護を目的とする高層ホテルの建築工事差止め請求
31 マンション建築工事における近隣トラブルの事例
32 小学校校舎の設置または管理の瑕疵
33 震災により建物が減失したかどうかが争われた事案
34 耐火構造の建物建築
35 古墳損壊による損害