環境社会学事典

環境社会学事典

著者名 環境社会学会
発行元 丸善出版
発行年月日 2023年03月
判型 A5 210×148
ページ数 742ページ
ISBN 978-4-621-30754-0
Cコード 3536
NDCコード 361
ジャンル 科学一般 >  事典・便覧・ハンドブック
環境科学・生活科学
人文科学 >  社会学

内容紹介

環境社会学は、人間社会とその周辺の自然環境との相互作用を社会や人々の側から検討する学問である。日本の環境社会学は、公害や大規模開発の問題等の解決を目指す「環境問題の社会学」と、人間と自然環境の多様な関係性や生活世界の理解を目指す「環境共存の社会学」として展開されてきた研究がベースとなっている。ともに被害者、被災者、生活者、居住者の視点とフィールドワークを重視しながら、時には隣接する学問分野と協働し研究することが特長といえる。

新型コロナウイルス感染症、豪雨による洪水被害、猛暑・台風・豪雪の激甚化など、私たちの日常生活は多くのリスクに直面している。このようなリスクの根源には人間社会と自然環境との関係性の歪みが潜んでいる。

本事典は、こうした時代だからこそ社会にとって重要な意味を持つ、環境社会学の視座やアプローチ、これまでの研究蓄積、そして今後の展開を収載している。

 

目次

第I部 〈人-自然〉の変容と社会
第1章  人と自然の付き合い方
1-1 自然信仰
1-2 災害と向き合った暮らし
1-3 風景と景観
1-4 自然のリズム
1-5 ローカルな知
1-6 人の移動と環境
1-7 環境と規範
1-8 廃棄と循環
1-9 水の利用と制御
1-10 ヒトと動物
1-11 水田と資源循環
1-12 山の暮らしと資源利用
1-13 海・川・水辺の利用と保全
1-C コラム 放棄される自然

第2章 近代化の矛盾としての公害・環境問題
2-1 近代国家の成立と鉱害の激化
2-2 四大鉱害
2-3 関東大震災と帝都復興
2-4 病いと公衆衛生
2-5 戦後復興と高度経済成長
2-6 燃料革命・エネルギー革命
2-7 四大公害
2-8 消費者災害
2-9 都市型公害
2-10 国土開発と大規模開発問題
2-11 自然保護と権利
2-12 廃棄物
2-13 環境リスクの増大
2-C コラム ドブ川訴訟

第3章 日本における環境社会学のルーツ
3-1 環境と社会の関係認識
3-2 社会運動研究と環境問題
3-3 公害・環境問題と市民・住民運動研究
3-4 都市問題研究における環境と社会
3-5 村落研究における環境と社会
3-6 地域開発の研究系譜と環境問題
3-7 数理・計量社会学における環境問題
3-8 公害・労災・職業病研究と保健医療社会学
3-9 人類学・地域研究からの問いかけ
3-10 公害教育・環境教育の経験
3-C1 コラム 水俣病を研究するということ
3-C2 コラム 労働問題と環境
3-C3 コラム 公害輸出

第4章 環境社会学のポジショナリティ
4-1 立場性
4-2 実践性
4-3 被害者の視点
4-4 生活者の視点
4-5 パラダイム論
4-6 科学知と生活知
4-7 地元とよそ者
4-8 調査者-被調査者
4-9 公害と環境
4-10 環境というプラットフォーム
4-11 生きられた社会と個人の生
4-12 社会の時間・空間スケール
4-C コラム T字型の研究戦略

第II部 環境問題の現場から考える
第5章 加害-被害構造論
5-1 被害構造論の基本問題
5-2 被害が深化・拡大するメカニズム
5-3 被害構造論の背景と展開
5-4 隠される被害と経験の捉え直し
5-5 問題の長期化と加害構造の再編
5-6 加害構造への視点
5-7 不作為と被害放置
5-8 グローバル化と加害-被害構造
5-9 繰り返される終わりなき核被害
5-10 被害と人種差別の重なり
5-11 災害・避難における加害-被害
5-12 構築される「加害-被害」と環境運動
5-13 構造的差別と「加害-被害」関係の両義性
5-14 加害-被害構造論の理論的課題と可能性
5-C コラム 手法としての年表

第6章 受益圏・受苦圏論と社会的ジレンマ論
6-1 生活公害と環境問題の日常化
6-2 受益圏・受苦圏論の基本図式
6-3 受益圏・受苦圏論の展開
6-4 受益圏・受苦圏論の応用
6-5 合理的選択理論
6-6 社会的ジレンマ論からみた環境問題
6-7 社会的ジレンマ論の展開
6-8 アリーナ分析
6-9 環境配慮行動
6-10 環境意識研究
6-11 環境負荷の外部転嫁
6-12 政府の失敗
6-13 社会的公正と環境問題
6-14 対抗的分業
6-15 公論形成の場
6-C コラム 中国の廃棄物問題

第7章  生活環境主義とコモンズ論
7-1 生活環境主義
7-2 小さな共同体論
7-3 総有論と共同占有権
7-4 言い分と経験論
7-5 近い水と遠い水
7-6 水害と流域治水
7-7 コモンズの地域共同管理
7-8 在地リスク回避とモラル・エコノミー
7-9 重層的コモンズとレジティマシー
7-10 コモンズと統治権力
7-11 コモンズとしての森林
7-12 コモンズとしての里海
7-13 実践コミュニティとコモンズ
7-14 オープンアクセスのコモンズ
7-15 協治論
7-C1 コラム 縮減社会の共有資源管理
7-C2 コラム 資源利用を支える生業技術の共同性
7-C3 コラム 都市のコモンズ

第8章 環境正義・環境思想
8-1 エコロジー思想の展開
8-2 自然の権利
8-3 土地と人間の思想
8-4 ソーシャル・エコロジー
8-5 環境プラグマティズム
8-6 社会的リンク論
8-7 生物多様性の思想
8-8 環境正義運動
8-9 世代間倫理
8-10 開発とジェンダー
8-11 マイノリティの権利と環境正義
8-C コラム 環境思想と事例研究のリンク

第9章  環境に関わる社会運動・NPO・ボランティア
9-1 環境運動と環境NPO・環境ボランティア
9-2 環境運動のレパートリー
9-3 環境運動と院内政治
9-4 住民投票運動と住民自治
9-5 環境運動の市場化
9-6 環境NGOと環境ガバナンス
9-7 環境運動の担い手
9-8 環境運動の帰結と継承
9-9 環境運動の分析視角
9-10 環境運動のネットワーク分析
9-11 環境社会学としての運動研究
9-C1 コラム 環境運動としての森林ボランティア・NPO
9-C2 コラム 森林ボランティアと森林政策
9-C3 コラム 経験運動としての環境運動

第10章 海外の環境社会学研究
10-1 北米の研究動向
10-2 欧州の研究動向
10-3 韓国の研究動向
10-4 中国の研究動向
10-5 台湾の研究動向
10-6 東南アジアの研究動向
10-7 アフリカの研究動向
10-8 中南米の研究動向
10-9 世界の中の日本の環境社会学
10-C1 コラム 韓国の「河川再生」が招いたパラドクス
10-C2 コラム 中国の「がんの村」という社会現象
10-C3 コラム 台湾の高レベル放射性廃棄物問題

第III部 環境のリアリティに向き合う
第11章 歴史的環境の社会学
11-1 歴史的環境
11-2 文化遺産
11-3 文化財
11-4 町並み保存運動
11-5 伝統的建造物群保存地区
11-6 京都の景観
11-7 遺跡保存
11-8 集合的記憶
11-9 まちづくり
11-10 負の遺産
11-11 保存と伝統の創造
11-12 アートと地域づくり
11-C コラム 歴史的環境研究の世界の研究動向

第12章  観光と環境の社会学
12-1 天然記念物
12-2 祭り・民俗芸能
12-3 グリーン・ツーリズム
12-4 国重要無形民俗文化財
12-5 海外の国立公園
12-6 リゾート開発
12-7 道の駅
12-8 エコツーリズム
12-9 文化の客体化
12-10 遺産制度とグローバル・ポリティクス
12-11 アクア・ツーリズム
12-12 ダーク・ツーリズム
12-C コラム 生業の観光化

第13章 災害と環境の社会学
13-1 災害と環境問題
13-2 災害と地域社会
13-3 津波と被害
13-4 津波と生活再建
13-5 原発事故と被害
13-6 原発事故と生活再建
13-7 広域避難と支援
13-8 災害レジリエンス
13-9 災害弱者
13-10 災害廃棄物
13-11 災害の記録と記憶
13-12 災害文化の継承・創造
13-13 防災とコミュニティ
13-C1 コラム 原発事故の責任と賠償
13-C2 コラム ハザードマップ
13-C3 コラム 巨大化する自然災害

第14章 軍事と環境社会学
14-1 軍事問題の環境社会学
14-2 在日米軍基地問題と沖縄
14-3 軍事基地と環境汚染
14-4 国境を越える核被害
14-5 軍事化する社会
14-6 軍事基地と騒音問題
14-7 最大の環境破壊としての戦争
14-8 NIMBY施設としての軍事基地
14-9 被爆者運動
14-C コラム 国境離島と軍事基地

第15章 発展途上国の開発・保全と環境
15-1 グローバル・コモディティをめぐる問題
15-2 ポリティカル・エコロジー
15-3 大規模農園・石炭開発
15-4 商業的木材伐採と植林
15-5 非木材林産物
15-6 住民参加型森林管理
15-7 森林保護地域管理
15-8 野生動物保全
15-9 漁民による自然保護
15-10 ガンディー主義と環境運動
15-11 先住民の生業と社会
15-12 REDDプラス
15-13 ローカルとグローバルをつなぐ戦略
15-C コラム インドネシアの植林問題

第16章 環境社会学と地域づくり
16-1 地域における環境問題
16-2 コミュニティと地域集団
16-3 地域と流域
16-4 地域資源管理とアクターの多様化
16-5 公害後のまちづくり
16-6 「循環型社会」の意味
16-7 内発的発展論の展開
16-8 自然再生による地域再生
16-9 環境アイコン
16-10 獣害問題と地域づくり
16-11 湿地と地域づくり
16-12 レジデント型研究者
16-13 ローカルファイナンスと地域再生
16-C コラム 韓国におけるマウルづくり

第IV部 環境社会学のフロンティア
第17章 政策研究と実践
17-1 公共社会学
17-2 環境政策史
17-3 市民参加型調査
17-4 グリーンインフラ
17-5 協働的ガバナンス
17-6 デモクラティック・イノベーション
17-7 トランジション・マネジメントと環境制御システム
17-8 インクルーシブネス
17-9 持続可能な開発目標(SDGs)
17-10 国際認証とローカル認証
17-11 スキルとしての環境社会学
17-12 地域の自然を生かす仕事づくり
17-C コラム 社会的学習

第18章 科学技術とリスクのガバナンス
18-1 科学の不定性と規制科学
18-2 構築主義とアクターネットワーク理論
18-3 リスク社会論と合意形成
18-4 科学知識の捉え方と環境問題
18-5 科学技術のガバナンス
18-6 環境リスク評価の問題点
18-7 科学技術とメディア
18-8 環境問題に対する懐疑論とメディア
18-9 遺伝子操作と環境
18-10 事故と組織的無責任
18-11 巨大プロジェクトとロックイン
18-12 企業環境主義
18-13 サステナビリティ・トランジション
18-C コラム 人工知能・機械学習と環境

第19章 食と農
19-1 農の原理
19-2 農業の工業化・産業化
19-3 食と農のグローバル化
19-4 農と食の分離
19-5 農がつなぐ都市と農村
19-6 食の認証制度
19-7 社会につながる食
19-8 食の倫理
19-9 有機農業
19-10 食を自給する権利
19-11 農をめぐる資源管理
19-12 市民にとっての農
19-13 学校給食と食育
19-14 田園回帰・農的暮らし
19-15 食と農の政策
19-16 食と農の景色
19-17 食をめぐる貧困・格差
19-C コラム 山の暮らし再考

第20章 エネルギーと環境
20-1 エネルギーと日本社会
20-2 核廃棄物の最終処分場と合意形成
20-3 東日本大震災後のエネルギー政策
20-4 原発再稼働と住民合意
20-5 再生可能エネルギー開発の社会的受容性
20-6 日本におけるコミュニティパワーの展開
20-7 世界のコミュニティパワー
20-8 地方自治体と地域新電力
20-9 里山再生とバイオマス
20-10 気候変動と日本の地域政策
20-11 エネルギートランジションと分散型社会
20-12 エネルギーと市民科学
20-C1 コラム 洋上風力発電と産業・地域
20-C2 コラム 小水力発電と地域社会
20-C3 コラム 地熱発電と地域社会

第21章 人新世の環境社会学
21-1 人新世
21-2 感染症・パンデミック
21-3 気候変動
21-4 気候正義
21-5 ポストヒューマニズム
21-6 新しい物質代謝論
21-7 人とモノの関係論
21-8 脱開発・脱成長論
21-9 緑の資本主義
21-10 環境と福祉
21-C1 コラム 再自然化する都市
21-C2 コラム グレート・アクセラレーション

付録
環境社会学会30年の歩み

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